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2017.04.21

【特集】“最強の市民ランナー”川内優輝が目標…男子グレコローマン80kg級・前田祐也(鳥取・中央育英高職)

 “レスリングの川内優輝”を目指す-。4月から鳥取県職員に正式に採用された男子グレコローマン80kg級の前田祐也(鳥取・中央育英高職)が、地方公務員マラソン・ランナーとして世界選手権などに出場した川内優輝選手を目標に、東京オリンピックを目指すことになった。

 県庁職員として9時~5時は事務ワークという生活も考えられたが、全日本レベルの大会を4大会連続で制している才能を県が認めてくれたのか、レスリング部のある中央育英高に職員として出向となり、全日本合宿にも参加できることになった。「送り出してくれる職場の人たちの厚意にこたえるためにも、頑張らないとなりません」と気を引き締めている。

■キャリア1年半の選手に敗れ、闘争心が燃え上がった

 前田は高校時代は全国大会ベスト8が最高という実績から、拓大4年の2015年に全日本選抜選手権で勝って世界選手権(米国)に出場。全日本選手権でも優勝した。卒業後の1年間、鳥取県立武道館で勤務したあと、今年4月、鳥取県庁に正式に採用された。

 卒業にあたり、東京に残って数年間だけでもレスリング専念の環境を求める選択肢もあっただろうが、レスリングだけが人生ではない。その後の生活を考えて故郷で職を求め、その目標は達成。一方で、第一線での活動を続けられる環境を得ることができた。

ふだんは高校選手を相手に汗を流すが、全日本合宿には参加できる環境。自衛隊や企業がサポートする “プロ選手”ではないものの、好条件の環境といえよう。気持ちは前を向いていると思われるが、「後ろを向いたことはありません」と笑う。このあたりは、拓大の須藤元気監督の「ポジティブ思考の勧め」の影響か。

 昨年11月の全国社会人オープン選手権では、レスリングのキャリア1年半という鶴田峻大(自衛隊)に敗れ、強烈な悔しさを感じた。「これだけ悔しい気持ちがあるのなら、まだできると思った」。エネルギーは、まだふんだんにある。

 3月は仕事の関係で全日本の欧州遠征のうちクロアチア遠征にだけ参加し、合宿と大会出場をこなした。外国選手との試合は昨年2月のアジア選手権(タイ)以来。練習となると、2015年のポーランド遠征以来だ。

■あがってしまうタイプ、最大の課題はメンタル面の強化

 久しぶりの外国選手との練習は「刺激になることが多かったです。外国選手はすぐにそってきます。やられるうちに、この技が必要と感じ、(タイミングやこつを)聞いたりして学んできました。勝負をかける必要がある時、やってみようと思います」と、収穫のある遠征となった。

「ザグレブ・オープン」は残念ながら初戦で敗れた。国際大会では、2014年ブラジルカップでの優勝があるが、ハイレベルの大会ではまだメダルに手が届いていない。今回は「緊張し、てんぱってしまって、何をやっているのか分からなくなりました」と振り返る。「緊張してしまうタイプなんです」と言う。

 緊張するので開始から相手を見てしまう。気がついた時には攻撃を受けてしまい、立て直せない負のスパイラル(連鎖反応)が“いつもの”負けパターン。国内ではそのスパイラルに入る前に立て直せるが、実力ある相手には、その状態から抜け出せない。「緊張しない人の気持ちを知りたいです。だれかいませんかね」と真顔で訴えてくるほどだ。

 技術や戦術は教えることができるが、精神力を教えられる指導者はそうそういない。いや、直接教えられる指導者は“いない”のが現実。自分自身で強くし、乗り越えなければならない。須藤元気流のポジティブ思考を前面に出し、“あがり症”からの脱却が望まれる。

■“最強市民ランナー”の活躍が刺激材料

 もちろん、技術と体力の問題もある。「差してからの攻撃がしっかりできないし、足も動いていないし、体力も劣っている」と課題は多く、これらの習得と克服が必要。全日本合宿以外では鳥取で高校生を相手にした練習になるので、工夫が必要だ。

 そこで参考になるのが、“最強の市民ランナー”としてマラソン界を席巻した川内選手。強豪大学でもまれたわけではなく、卒業後はフルタイムの公務員生活をしながらの選手生活。長期の合宿はできず、指導者も競争相手もいない。選手生活にかかる経費はすべて自費。

マラソンは実業団に所属する“プロ選手”が当たりまえで、月間1000kmを走ることが必要などと言われているが、普通に仕事をこなす川内選手は、ランニングによる通勤を含めて月間の走行距離は多くて600km。

 「レース参加も練習」と公言し、2013年はフルマラソンだけでも11大会に出場(うち7回優勝)。大会参加は年に1、2回という陸上界の常識に果敢に挑み、 常識を覆して日本のトップに立った。

 「強豪チームじゃなきゃ駄目、というのは才能の芽を摘んでいる」「実業団選手には負けたくない。いつも『死んでもいい』という思いで走りますから」とは、名言として語り継がれている川内選手の言葉。個人競技のマラソンと対人競技の格闘技では、すべてを同じには考えられないが、前田のように地方で頑張るレスリング選手へのアドバイスになることは間違いない。

 前田も「本当に工夫し、めちゃめちゃ努力しているのだと思います。自分は、仕事をして練習をすることが辛いと思ったことがあります。両立は大変なんです。川内選手はすごい選手だと思います」と話し、その生き方はお手本であり、刺激材料でもある。

 5月にはアジア選手権(インド)への出場が決まっている。「何もできないまま終わることは避けたい。内容は必要だけど、勝てばいい、という気持ちでぶつかりたい」。国内では追い上げられる立場になった。このあたりで国際大会の結果を出し、一段階上へ行きたいところだ。


 







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