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(文=布施鋼治)
「今回は優勝を目指しています。国内でも59㎏級は選手層が厚い。その代表としてプライドと責任を持って挑むつもりです。僕が活躍しなかったらダメだと思う」-。初出場となる世界選手権についての抱負を聞くと、男子グレコローマン59㎏級代表の文田健一郎(日体大)ははっきりと「優勝」を口にした。
周囲の期待も大きいが、さほどプレッシャーは感じていない。「どの大会でも、マットに上がったら腹はすわっている。同じくらいの緊張感で闘うことができます」
日本代表の座を争った太田忍(ALSOK)との通算戦績は3勝3敗と全くのイーブン(17年7月現在)。7月の海外遠征では「ピトランスキ国際大会」(ポーランド)の3回戦で闘い、2-6で敗れたが,続く「スペインGP」の2回戦ではテクニカルフォールで雪辱した。
「ポーランドで負けた時はめっちゃ悔しかったです。すぐ、自分のどこが悪かったかを分析し、スペインではそれを出さないようにして(太田に)挑んだら、結果的に勝利につながりました」
太田とは、代表の座を争って切磋琢磨しあう仲だが、インターバル中は当たりまえのように言葉を交わす。国内最大のライバルとの関係は、「それが普通だ」と文田は打ち明ける。
「太田先輩とは『お互い競い合って世界のトップに行こう』と約束している。自分の技を見せないとか、そういうことはない。練習でも全部出し合って高め合うようにしています」
■日本グレコローマン史上、最年少の世界王者へ挑戦
今年5月、初めて出場したアジア選手権(インド)では、得意のそり投げを徹底的に警戒されたが、リオデジャネイロで銀メダルを獲得した太田と互角に張り合える自信が優勝への大きな原動力となった。
「太田先輩とここまでできているわけだから、海外に行った時もほかの選手に負けるわけにはいかないと思って臨みました」
7月26日から東京・味の素トレーニングセンターでスタートした全日本合宿には、リオデジャネイロ・オリンピックの同級で銅メダルを獲得したベルゲ(ノルウェー)も参加しており、文田は幾度となく胸を借りた。「うまい選手ですね。オリンピックには3度も出ているので、細かいテクニックがすごい。何かが秀でているというタイプではないけど、一緒にやると勉強になります」
合宿中は、ちょっと休んだだけでも松本慎吾・男子グレコローマン強化委員長から厳しく叱咤された。文田もあそこで休んでいたらダメと反省することを忘れない。
「そうしないと世界選手権では勝ち切れない。どの場面でも、いかに相手の警戒を解き、ばてさせるか。この2つがポイントだと思っています。国内では体力がない方だけど、海外ではスタミナのない選手も多いので、ばててくれば組んでくる。だから、ばてさせて後半に勝負しようと考えています」
過去、グレコローマンの世界選手権で優勝した日本人は3人のみ(市口政光=22歳、藤本英男=26歳、江藤正基=28歳)。文田が優勝すれば、日本グレコローマン史上、最年少の快挙となる。
文田 健一郎(ふみた・けんいちろう=日体大) 初出場 1995年12月18日生まれ、21歳。山梨県出身。山梨・韮崎工高卒。168cm。2010年全国中学生選手権優勝を経て、2011~13年に全国高校生グレコローマン選手権と国体グレコローマンで3連覇。2014年に世界ジュニア選手権60kg級に出場。 2015年に全日本学生選手権と国体を制して台頭。2016年はゴールデンGP決勝大会でも優勝など国際舞台でも頭角を現し、全日本選手権初優勝。2017年はアジア選手権で優勝した。 |
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