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2017.12.05

【女子ワールドカップ・特集】平均年齢20.4歳のチームで世界一! 底力見せた日本女子チーム

(文・撮影=樋口郁夫)

強豪の中で3大会連続優勝を遂げた日本チーム

 モスクワから飛行機で約1時間20分。ボルガ川沿岸の雪に覆われたチェボクサリで行なわれた女子ワールドカップ。現・前の世界チャンピオンがいるものの、平均年齢20.4歳という若い日本チームが世界の強豪を相手に4試合を勝ち抜き、団体世界一を守った。

 笹山秀雄監督(自衛隊)は「若手主体のチーム。(優勝は)厳しいかな、という気持ちもあった」と、試合前の正直な気持ちを話してくれた。しかし、ワールドカップは個々の闘いの結果の結集ではなく、チームとしての闘い。「過去の大会で、流れをつかんで劣勢をはね返した試合があった。何が起こるか分からない」と自身の気持ちを奮い立たせ、もちろん選手の闘志を鼓舞することに努めた。

 “ヤング日本”は勝ち抜いた。それぞれの選手が役割を果たしての優勝に、同監督は「よくやってくれました。負けた選手もいたけど、全員の力が結集されての勝利です」と選手の健闘をねぎらった。

中国がほぼベストメンバーで参加、モンゴルも世界女王が出場

 日本にとって、オリンピック翌年のワールドカップは、何が何でも優勝を狙うのではなく、若手に経験を積ませて成長を期待する大会との位置づけだった。2009年、2013年ともにオリンピック代表選手を外した布陣。その結果、両大会とも銅メダルは確保したものの、優勝には手が届かなかった。どの国も選手の入れ替わりはあったが、若手チームで優勝するのは厳しいのが現実だった。

チームメートを応援する日本チーム

 今大会は、地元のロシアのほか、米国と中国は現段階でのベストメンバーと言える布陣。中国は多くの階級で2選手を連れてきており、スタミナと集中力を温存しながらの闘いだった。世界V5のスタンカ・ズラテバを育てたシメオン・ステレフ氏(ブルガリア)をコーチとして招へいしており、東京オリンピックへ向けて並々ならぬ姿勢が感じられた。

 吉村祥子コーチは「闘うことはなかったけれど、モンゴルも新旧世界チャンピオンがいて、かなりのメンバーでした。若い日本チームがどこまでやれるのか。希望もあったけど、不安もあった」と振り返る。

 それでも勝てたのは、リオデジャネイロ・オリンピックから今年にかけて、世界に対してあらゆる世代で嫌と言うほど見せつけた“日本の強さ”というベースがあるのはもちろんだが、個々の選手がチームとして勝つには何をすればいいのかを、きちんと把握していたことも大きい。

 米国と中国との試合は、4勝4敗と星は五分だったが、内容で上回っての勝利。同じ負けるにしても、何もせずに負けたら勝ち点は「0点」で、それがテクニカルフォール負けなら相手の勝ち点は「4点」、フォール負けなら「5点」。

 1ポイントでも取っての判定負けなら、自分の勝ち点は「1点」で、相手の勝ち点は「3点」。笹山監督は「勝ち点1点の差が勝敗を分けることを、どの選手も意識して闘ってくれました」と振り返る。

強豪相手に判定負け、価値ある森川美和(東京・安部学院高)の健闘

元世界2位の中国選手に挑み、役目をしっかり果たした森川美和(東京・安部学院高)

 例えば、中国との決勝の69kg級。シニアの国際大会に出場するようになって1年も経っていない森川美和(東京・安部学院高)が、2015年世界選手権で土性沙羅を破って2位となった周風と対戦した。周風は、今年5月のアジア選手権(インド)では土性に敗れながらも7-7の内容差での惜敗。実力的には森川がテクニカルフォールで負けてもおかしくない相手だ。

 森川は無謀な攻めをせず、防御に徹して第1ピリオドを“30秒ルール”による0-1で終えた。第2ピリオドは、逆に“30秒ルール”で貴重な1点を取る健闘。後半はタックルなどで失点してしまったが、それでもテクニカルフォール負けは許さず、1-8の判定負けまで持ち込んだ。

 もし、ここでポイントを取れないテクニカルフォールで負けていたら? チームスコア4勝4敗となった時、勝ち点の差「1」で日本が負けていた可能性があった。ポイントを取っての判定負けだったので、この段階で日本の勝利が決定。続く75kg級で古市雅子(日大)が負傷した時、無理をさせることなく棄権させることができた。

大会終了後のチェボクサリの街。日本チームの熱気は雪をとかしたか

 「価値ある判定負け」という表現が適当かどうか分からないが、両者の格の違いを考えれば、その健闘は評価される。個人戦なら、強豪相手に守るより、玉砕覚悟で攻めることがその後につながるだろうが、団体戦では“判定負け狙い”の試合運びも時に必要。

 状況に応じた闘いができるのは、それだけの実力があるからこそであり、実力のない選手なら、そのような芸当はできない。結果として、土性を苦しめた相手とこれだけの善戦ができたことは、森川の大きな自信になったはず。闘い方の広がりにもつながるだろう。森川だけでなく、それぞれの選手が個人戦とは違う闘いの中で、飛躍のきっかけをつかんだことは間違いあるまい。

 吉村コーチは「トップ選手も頑張っていますが、若手選手も、こうして頑張っています。2020年、その先の2024年に続いていくことを信じています」と結んだ。







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