(文=増渕由気子)
全国高校体育連盟(高体連)のレスリング専門部の強化委員のメンバーが12月16日、愛知県の至学館大に集まって指導者講習会を実施した。藤波俊一強化委員長(三重・いなべ総合学園高教)を中心に、秋田・秋田商高の横山秀和監督、愛媛・八幡浜工高の栗本秀樹監督、京都・網野高の吉岡治監督、石川・金沢北陵高の川井孝人監督、東京・自由ヶ丘学園高の田野倉翔太コーチの6名が集まった。
高体連の強化委員会は、これまでJOC杯など全国大会時に会議を設けて話し合いの場を設けていたが、指導者講習会のために全国から指導者を集めて実施するのは初の試みだった。藤波強化委員長は「選手だけではなく、若い指導者も育てていこうということで、今回は田野倉コーチにも集まっていただいた」と、現役選手でもある新人教員にも召集をかけた理由を説明した。
単独の指導者講習会は、10月の愛媛国体で頸椎損傷の事故が発生したことで、藤波強化委員長が安全面を考慮した指導の確認が急務だと発案し、栄和人日本協会強化本部長の助言もあって至学館大で行う流れとなった。
また、各議題の話し合いも行われた。来年4月からは高校生も新階級で行われ、3月の全国高校選抜選手権と8月のインターハイの階級が異なることからシード選手の扱いや、世界カデット選手権などの各国際大会の代表選手の選出方法などについて約2時間、意見交換を行い、各草案を練った。
2020年東京オリンピックへ向けての強化が実り、最近は高校生のレベルは右肩上がり。一部の階級では大学生をしのぐ選手も目白押しだ。
それに伴い、安全面の配慮やアンチ・ドーピングに関する正しい知識など選手と指導者がともに配慮しなければならない項目も増えてきた。ドーピング問題では、不正を行ったために、来年の平昌・冬季オリンピックにロシアが国として参加できないというニュースが発表されたばかり。それをふまえて、高体連でどんな取り組みをしてくかなどにも時間を割いて話し合った。
講習会を至学館大で行ったこともあり、会議の後は、女子世界一のチームである至学館大の練習を見学。全日本選手権の試合直前のピリピリムードの中、川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)や土性沙羅(東新住建)などの金メダリストのガチンコスパーリングが見られ、貴重な研修となった。練習後は、強化委員メンバー全員がマットに上がり、実演しながら危険な技などの確認を行い、改めて安全面について確認した。
そのほかにも、今年1月に新設された至学館のレスリング専用寮を見学。マッサージ室や栄養満点のメニューなどを見て、目を丸くして驚いていた。栗本監督は「今回、初めて至学館にお邪魔させていただきましたが、とにかく環境が素晴らしい。練習環境はもちろん、寮に接骨院さながらの施設が備わっているのは、初めて見ました。寮母さんが毎日作る栄養満点の食事がとれ、私生活もしっかり管理されている。至学館の強さの理由がわかりました。来年、八幡浜工にも女子が入ってくるので、とても参考になりました」と感想を述べた。
藤波強化委員長も「初めての試みでしたので、世界一のチームを持つ栄本部長の指導方法を学ぶいい機会となりました。今回の研修を我々の指導に生かしていきたいです」と大きな収穫だった模様。「年に1回以上は、このような形で指導者を集めて行いたい」とビジョンを語った。