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2018.02.20

【特集】全日本チームの試写会で感動の渦…映画「ダンガル きっと、つよくなる」がレスリング界にもたらすもの


《関連記事》=1月7日1月27日2月10日 /《株式会社GAGA作品情報ページ》《予告動画》

(文・撮影=樋口郁夫)

4月6日公開の「ダンガル きっと、つよくなる」=提供・GAGA

 インド映画の世界興収1位を打ち立てた感動作「ダンガル きっと、つよくなる」。これまでレスリングを題材にした映画といえば、過酷なトレーニングに打ち込む米国の高校のレスリング部員と年上女性との恋を描いた「ビジョン・クエスト」(1985年)、1996年のデーブ・シュルツ殺害事件を題材にした「フォックスキャッチャー」(2014年)などがあるが、日本での盛り上がりとなると、正直なところ、今ひとつだった。

 今回の「ダンガル きっと、つよくなる」は、インドのみならず中国、香港でも大ヒットをとばした。同じアジアの日本人の感性にマッチする部分は多いはず。描かれている父と娘の絆や姉妹愛などは、レスリングを知らない人の胸にも響くストーリーだ。4月6日の公開が待たれる。

 2月7~13日に東京・味の素トレーニングセンターで3スタイル合同合宿をした全日本チームは、4月の公開を前に参加選手全員で試写を鑑賞した。見終わったあと、栄和人強化本部長は「自分達のやっているスポーツが、こうした形で世に出ることは喜ばしいこと。レスリングには感動を引き起こす力がある。世界中で大ヒットしたことに誇りを持ってほしい。だれもが映画の主人公のような存在になれる。努力を重ね、人に感動を与えられる選手になってほしい」と選手に伝えた。

 スクリーンの中での“作り話”ではある。だが、実話をもとにしているがゆえに、そのリアルさは人の胸に熱く押し寄せる。映画は2時間20分の長編、しかも字幕。連日の猛練習で選手の体は疲れており、試写会の前は「寝てしまうかもしれない」と話していた選手もいた。事実、栄本部長は「疲れている選手は、上映前に5分でも10分でも机に伏して寝ろ」との“指令”を出した。

全日本合宿中に実施された試写会

 始まると、だれもがスクリーンに引きつけられた。自分達のやっているスポーツの物語だけに興味が沸くことと、演ずる俳優と女優のレスリングのアクションが本物のレスリングに近いからだろう。

 水車落としのような大技が多く出るのは、現実とはやや違うものの、タックルへの入り方や切り方などは、「本物のレスリングをやらせても、ある程度勝てるのでは?」と思わせるほど。主演のアーミル・カーン氏は、前半は筋肉隆々の男、後半はふっくらとした中年太りの父を演じている。

 いずれもトリックではない。ギータとバビータの子供時代と成長してからを演じた4人は、健康チェックを含む厳正な適正オーディションで選ばれ、さらに約8ヶ月間、レスリングの練習に取り組んだ。カーン氏は映画のため、いったん増量して中年太りの体型となり、そのあと約1年かけて肉体をビルドアップ。“若き日”の撮影をしたのだという。

 世界のトップとなる人間や作品は、「こんなところでいいだろう」といった妥協の産物からは生まれない。頂点をとことん追求する強烈な “プロ魂”を持つがゆえに、世界の最高峰に立てる。それは、スポーツの世界を含め、どんな分野でも同じだ。

日本でのヒットが、世界での女子レスリングの普及につながる!

【上】だれもが引き込まれた2時間20分。【下】感動のフィナーレを迎え、目頭を熱くした選手も

 「父と娘の愛情に感動した」-。鑑賞した選手に書いてもらった感想文には、こうした意味の感想が多かった(別記事参照)。そうした感動とともに、この作品はレスリング界に2つの課題を投げかける映画と言える。

 ひとつは、父の指導と所属チームの監督の指導が違うケース。現在でも、父あるいは母がレスリング選手で、少年時代は親の指導でレスリングをやっていた選手は多い。今後も増えていくだろう。だが、いつかは親元を離れ、高校や大学、全日本チームの監督に指導を預けることになる。オリンピックの舞台のセコンドに父親がいた吉田沙保里選手のようなケースは例外だ。

 両者の指導理論が違っていた時にどうするか。選手の多くはいずれ親となり、子供にレスリングをやらせるケースが多いはず。逆に言うなら、高校や大学の指導者は親子で成長してきた選手を預かるケースが多くなってくる。もし、映画のような状況になった時、「自分ならどうするだろうか?」-。今後増えていくケースだけに、考えさせてくれる映画だ。

 もうひとつは、この映画が女性の社会進出、すなわち女性のスポーツ進出を描いていること。国際オリンピック委員会(IOC)の理念にしたがい、女子の普及が急務となっている世界のレスリング界に一石を投じる作品と言えよう。

 この映画がインドで大ヒットしたのは、インドではいまだに「女性は家事、出産、育児」という概念がはびこっているからでもあるという。10代半ばで親の決めた顔も見たことのない男と強制的に結婚させられ、子供を産んで家庭を守るのが女性の一生であり、オリンピックを目指すことなど許されない風潮が根強く残っている。

映画の1シーン。厳しい父親が描かれている

 インドのみならず、そうした国はまだ多い。格闘技、まして男性コーチと体が密着するレスリングは偏見を生みやすく、女性とはリンクしない。こうした社会の存在が女子レスリングの普及を阻んでいる一因でもある。

 映画の中で、スパルタの父親を嫌う姉妹を、既婚者が「あなたの父親は娘の人生を本気で考えているわ」と諭すシーンがある。終盤には、父親が娘に男社会に風穴を開けるような感動的な試合をするようアドバイスしている。この映画のヒットは、女子レスリングの普及に大きなパワーとなることだろう。

 女子の普及は世界のレスリング界に課せられた重要課題。そうでなければオリンピック競技から外されてしまう。女子レスリング不毛の国でも上映してほしいと思えるようなストーリー。そのためにも、日本でのヒットが望まれる。







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