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2018.03.10

【特集】4月からコーチとしてマットへ復帰、自衛隊からオリンピック選手を育てる!…小原日登美さん


(文・撮影=保高幸子)

全自衛隊大会に姿を見せた小原日登美さん

 3月3~4日に埼玉・朝霞駐屯地で行われた全自衛隊大会に、2012年ロンドン・オリンピック金メダリストの小原日登美さんの姿があった。すっかり母親の顔になった小原さんは、悠陽(ゆうひ=3歳)くんと風利(ふうり=1歳)ちゃんをあやしながらインタビューに答えてくれた。

 現役時代、多いときは10kgの減量をしていた。ずっと月経不順で、2012年は「全く来なかった」と言い、医師にも「女性ホルモンがほとんど出ていない、子供はできにくい」と言われた。ロンドン・オリンピックのあと1年間治療したが戻らず、排卵誘発剤の助けを借りて2014年に悠陽くんを妊娠。

 月経がなかった頃について「減量がなかったらよかったんじゃないかと後悔し、でも講演会に行って喜んでもらえて、ああ、やっぱり金メダルを取れてよかった、と、その繰り返しでした」と心境を語る。その後、自然に月経がもどり、風利ちゃんを妊娠したとうれしそうに話してくれた。

 2014年と2016年に出産して現在は育休中。2015年夏、現在のレスリング班の井上謙二監督に「東京オリンピックに向けて女子のコーチに加わってほしい」と打診された。まだ風利ちゃんがお腹の中にいる時で、悩んだという。「引退後は3人産んで、2020年東京オリンピックが終わったら(コーチとして)復帰しようと思っていた」-。

 選手を終えてセカンドキャリアを考えるとき、「年齢もありますし」と、まず母親になることを優先した。それゆえ、復帰についてはかなり葛藤があったという。加えて、「オリンピックに選手を輩出する、メダルを取らせる、というのは責任重大な仕事だと思った」-。

夫・康司さん、2人の子供とともに

 子育てしながらできるのだろうか、と悩んだそうだが、「でも、私は体育学校に救われてオリンピックに行けた。しっかり恩返しをしようって思ったんです」と心を決めた。今年4月からコーチとして復帰する。

 自衛隊体育学校の中で、レスリング班は2016年リオデジャネイロ・オリンピックに選手を輩出できなかった。選手は出場したもののメダルが獲得できなかった2008年北京オリンピックのあと、体育学校には「レスリングができなくなるかもしれない」という危機感があったといい、当然、東京オリンピックでは好成績を達成しなければならない。

 「東京で開催されるオリンピックは、自衛隊としても『本番』。選手を出したいです。金メダルを取った後、いろいろな駐屯地を回ったんですが、どこに行ってもすごく喜ばれて、士気が上がるんだと言われました。こんなに影響があるんだ!と驚きました」。

「選手が自信を持って闘えるように育てたい」

 小原さんは「災害派遣や防衛の任務をこなす隊員の中で、私たちはスポーツをさせてもらっている。成績を出すのが仕事」と語気を強める。

 男性にはあまり知られていないが、女性には月経前症候群(PMS)というものもあり、月経中だけでなく10日ほど前から心身に不調をかかえる女性も多い。小原は同じ女性として、経験から女子選手にアドバイスもできる。女子レスラーのコーチをするにあたって、「みんな一生レスラーじゃない。体のことで、不調があっても言いにくいかもしれない。そういうケアもしていきたい」と、あらゆる方面からのケアも目標にする。

昨年12月の全日本選手権で入江ゆきのセコンドについた小原さん(左)=撮影・矢吹建夫

 弟の将典さんも妹の真喜子さん(ともに自衛隊レスリングOB)も近くにいる。両親は青森に家を残しつつ埼玉に仮住まいをしており、子供を預けられる環境。4月からは子供の保育園も決まっている。「この子達は知らない人の中に放り込まれるけど、私は知っている人の中に戻るだけだから、頑張らなきゃ」。

 昨年は12月の全日本選手権に向けては度々マットに向かい、コーチした50kg級の入江ゆきが激戦を制して見事に優勝した。「入江はロンドンにむけても一緒に闘った。次のオリンピックに出てほしい」。女子の選手数が少ないため、「少しでも相手ができれば」と思って練習に行くと、めちゃくちゃにやられるそうで、「もうプライドもなくなりました」と笑う。

「私が現役の時は本田原(明)コーチがスパーリングをしてくれ、いつも試合の気持ちで練習できた。今は冨田(和秀)コーチが常に見てくださっているし、私もいいサポートをしたい」と言う。本格的に“復帰”すれば、またレスリング力も戻り、スパーリング相手として大活躍してくれるだろう。「マットに立てるのは選手だけ。自信を持って闘えるように育てたい」-。

「東京オリンピックが終わったら3人目を産みたい」と将来を語る小原さん。選手として金メダルを獲得し、幸せな家庭も築いた。こんどは指導者としてオリンピックを目指す。後に続く女子レスラーたちにとって、いいロールモデルとなっていくだろう。







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