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(文=布施鋼治)
「50㎏級で世界選手権に出るのは初めてなので、挑戦者として金メダルを獲りたい」。昨年の世界選手権(フランス)では、初出場ながら女子48㎏級で優勝した須﨑優衣(早大)が2年連続で世界Vを狙う。
「1年前に世界選手権に出た時と比べたら、できるようになったことが増えたと思います」。10月6日に行われた公開練習後、記者団に囲まれた須﨑はいつものようにハキハキとていねいに答えた。
「(進学した)早大では先輩や仲間からいろいろな技を教えてもらうことによって、今までよりレスリングの幅が広がったと実感しています。(同大学レスリング部の)男子は力があったり、スピードが速かったり、技がうまかったりする。そうした中で、どうやったら自分はその人たちに勝てるのか。そういうふうに挑戦していくことが自分の中ではプラスになっていると思います」
公開練習では吉田沙保里とのスパーリングが目を引いた。オリンピックで3連覇を達成した女子レスリング界のレジェンドと相対するのは2回目。須﨑は前日の全日本合宿初日から自らお願いして初めて相手をしてもらったことを打ち明けた。「やっぱり吉田さんが相手だと、中途半端にタックルに入ってもダメ。そのあとの処理もしっかりやらないと、取り切れない。おかげで緊張感のある、いい練習をさせてもらっています」
この日はスパーリングの本数を重ねる中で、須﨑がアンクルホールドで吉田を2回転させる場面も。その攻防について水を向けると、須﨑は満足そうな微笑を浮かべながら口を開いた。「世界選手権に向けてスタンドからグラウンドへの取り組みは課題のひとつ。吉田さんを回せたことは自信になりました」
練習中、吉田からのアドバイスには熱心に耳を傾けた。「海外の選手は返しが得意なので中途半端なタックルだと返されてしまう。それをさせないためには、入ったら、頭を下げないでしっかり上げること。そういう基本的なアドバイスを中心に、試合でやるべきことを指摘していただきました」
世界選手権でマークしているのはマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)。2016年リオデジャネイロ・オリンピックでは登坂絵莉と48㎏級決勝を争った強豪で、2012年ロンドン大会や2018年北京大会でもメダルを獲得しているベテランだ。スタドニクとは今年のクリッパン国際大会で一度対戦
「特に警戒するのはスタドニク選手ですけど、世界選手権は本当にどの選手も強い。だから1試合1試合、全力で挑みたい」。昨年春に実現した柔道の日本代表との合同練習では、東京オリンピックで実兄・一二三(日体大)と史上初の兄妹での金を狙う阿部詩(兵庫・夙川学院高)と初めて肌を合わせた。
阿部は当時高校2年生だったが、3年生となった今年の世界選手権(アゼルバイジャン)で初優勝した。奇しくも、昨年世界で頂きを極めた時の須﨑も同じ学年だったということも手伝い、阿部は須﨑から大きな刺激を受けての優勝だったと伝えられている。
それは須﨑とて同じで、実り多き邂逅(かいこう=巡り会い)だったと振り返る。「阿部選手は力が強かった印象がある。とくに足技がうまかった」
全てを肥やしとし、東京オリンピックに向け、須﨑は疾走する。