(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)
全国中学選抜選手権の男子44kg級は、先月の世界選手権(ハンガリー)の女子55kg級で世界一に返り咲いた向田真優(至学館大)の弟の向田旭登(三重・四日市南/四日市ジュニア教室)が優勝。3年生の最後の大会で全国一になり、姉に続く朗報を向田家にもたらした。
初戦の2回戦からの3試合は、試合時間が1分もかからないテクニカルフォールかフォールでの勝利。準決勝は2分17秒かかったが、11-0のテクニカルフォールで勝ち抜く強さ。決勝は簡単には勝たせてもらえず6-1のスコアだったが、安定した試合ぶりでの初の全国一。「中学に入ってから2位が多かったので、うれしい」と、最初は顔がほころんだ。
しかし、ちょっぴり残念な面がある優勝でもあるようだ。昨年(38kg級)の決勝と今年6月の全国中学選手権の決勝で敗れた西内悠人(高知・高知南)が負傷で欠場し、リベンジしての優勝ではなかったからだ。「ここでリベンジしないと、いつリベンジできるか分からなかったので、闘って勝ちたかった」とのこと。圧勝続きで勝ち抜く地力をつけているだけに、無念だったようだ。
それでも優勝に変わりはない。準決勝までの快勝続きは「自分のレスリングができたからです。タックルに入れるようになり、すぐにアンクルホールドでポイントを重ねることができるようになった結果」と振り返る。スタンドからグラウンドへの移行に成長があったことは間違いない。
決勝の相手の上村律心は、ライバルの西内と同じクラブの選手。「研究されているのでは、と警戒して、なかなか攻められなかった」と言う。闘ううちに相手の力も分かり、「タックルを決めて勝つことができてよかった」と言う。
6歳上の姉は中学入学と同時に三重を離れてJOCエリートアカデミーに入校した。そのため、姉の帰省以外で一緒に練習する機会はなかったが、「減量の方法や体の休め方など、よくアドバイスしてくれます」と、常に気にかけてくれるという。「仲いいね」の声に、「ええ」とにっこり。そんな姉の世界一復帰は、当然「刺激になった」とのこと。
母・啓子さんは「1年生の時も、2年生の時も2位だったんです。やっと優勝できてよかったです」とうれしそう。初戦から「すごく集中していましたね。絶対に勝つ、という気持ちがあったんだと思います」と言う。
姉の応援で全日本選手権などを生で見ることも多く、その時には男子のトップ選手のハイレベルの試合も観戦している。そうした経験も「実力アップにつながっているのではないでしょうか」と見ている。
卒業後の進路は、まだ具体的に決まっていないとのことだが、高校でも1年生から全国チャンピオンになることを目標に掲げる。「タックルにもっとスピードをつけたいし、パワーがないので、パワーをしっかりつけたい」と話し、高校での飛躍を誓った。