日本レスリング協会公式サイト
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2020.04.19

【特集】レスリングにピリオドを打ち、子供の頃からの夢に挑むU23世界王者・中村倫也(専大OB)

(文=布施鋼治)

 2016・17年に2年連続全日本選抜選手権で優勝(57kg級と61kg級)。その後、男子フリースタイル65㎏級で活躍した中村倫也(埼玉・花咲徳栄高~専大~博報堂DYスポーツ=3月まで)が、4月1日付けでSNSを通じMMA(ミックストマーシャルアーツ=総合格闘技)への転向を表明した。

【報告】20年続けてきたレスリングを引退しました。生き物としてより強くなる事を毎日考え続けて、気付いたら全日本や世界で優勝したり、想像もつかなかった景色を見ることができました。今後は物心付いてからの夢、総合格闘技の舞台で大暴れする為、より一層死に物狂いで努力します。(原文まま)

2017年U23世界選手権61kg級で優勝した中村倫也(当時博報堂DYスポーツ)=撮影・矢吹建夫

 2017年にはU23世界選手権(ポーランド)61kg級でも優勝している“世界チャンピオン”。反響は大きく、MMAを扱うウェブサイトはこぞってこのニュースを伝えた。

 中村は埼玉県出身。父・晃三氏は日本で総合格闘技の礎となったジム「PUREBRED大宮」のオーナーで、日本で初めてヒクソン・グレイシーを招聘してバーリトゥード(MMAの原型)を行った「バーリトゥード・ジャパンオープン」の開催に尽力した人物として知られている。

 広大なマットスペースがあったPUREBRED大宮は中村にとって格好の遊び場だったという。「(朝日昇など)当時現役だったプロの総合格闘家の皆さんが遊んでくれました。レスリングをやるきっかけを作ってくれたのは、山本美憂先生。僕が『キッズレスリングをやりたい』とお願いしたらしい。たまにノリさん(山本”KID”徳郁)も教えてくれました」

初出場の2017年世界選手権61kg級では5位

 高校時代に開発した独特のアンクルホールドは”リンクル(ホールド)”と命名され、オリンピック連覇を狙う川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)にも伝授されたことで、さらに知名度を高めた。

 レスリング時代、最も思い出に残っているのは、2017年世界選手権(フランス)の男子フリースタイル61㎏級に出場したことだと振り返る。「出場する前は、世界のシニアのレベルが全く分からなかったので、正直なめていた部分もありましたね」

2017年世界選手権61kg級2回戦で2014・15年世界王者ハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)と闘う中村

 この時は1回戦こそモルドバの選手に7-3で快勝したものの、続く2回戦で2014・15年世界王者のハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)に1-10で敗北を喫し、運よく敗者復活戦へ。結局、3位決定戦で2016年リオデジャネイロ・オリンピック57kg級5位のヨウリス・ボネロドリゲス(キューバ)にフォール負けを喫し5位に終わった。

 「アリエフ戦でけがしてしまい、片目が見えない状態で闘わなければならなかった。敗者復活戦は相手との実力差があったので勝ち上がることができたけど、その一方で、自分はまだまだ練習不足であることを実感しました」

 東京オリンピック出場を目指して挑んだ昨年の全日本選手権は、オリンピック階級である男子フリースタイル65㎏級にエントリー。順当に勝ち進んだが、決勝では日本男子史上最年少で2018年世界選手権を制した乙黒拓斗(山梨学院大)に0-10のテクニカルフォール負け。オリンピック出場の夢は断たれた。

 「乙黒選手の右手の攻撃を警戒しながら攻めていく中で左に意識を散らされ、右手を出してしまったところで取られてしまった。向こうの作戦にまんまとはまった気がします」

目標は世界最大のMMA団体「UFC」のチャンピオン

 この一戦で中村はレスリング生活にピリオドを打つことを決心。今年2月から本格的なMMAの練習を始めた。MMAをやることは物心ついた時から公言していたことだけに、中村の周囲には応援ムードが漂う。

打撃練習で顔にアザをつくった中村=撮影・布施鋼治

 「昔から変わらない夢ですからね。昔は反対していた母(恵子さん)も、『ケガさえしなければ』といまは応援してくれます」

 専大の恩師・佐藤満ヘッドコーチは力のこもったアドバイスを送る。「打撃や寝技も大事だけど、絶対にレスリングのことを忘れるな。格闘技の中で一番きついのはレスリング。いまのMMAを見ても、フィジカルはレスリング出身者がずば抜けている。中村はスタミナで勝ってきた選手なんだから、レスリングの練習は続けなさい」

 新型コロナウイルスの影響で対人練習もままならない状況が続くが、中村は自主トレを中心に黙々と汗を流す。世界最大のMMAプロモーション「UFC」でチャンピオンになる夢に向かって、中村は当面の課題となる打撃と寝技に取り組む。

 所属先やデビュー戦の舞台などの交渉は全てこれからながら、活動資金確保のため寄付を通じてアスリートを支援するスポーツギフティングサービス「unlim」に登録したという。「死に物狂いで努力します」

 今回の取材は転向宣言直後に行われた。某ジムでの打撃練習後だったが、中村の右目下には打撃練習の壮絶さを物語るかのように大きなアザができていた。







2023年世界選手権/激戦の跡
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