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2020.06.15

【記録】加藤喜代美に匹敵する永田克彦の“無名高校選手~銀メダル”…オリンピック・日本代表選手

 オリンピックでメダルを取った男子の日本選手は47人。1956年メルボルン大会までは高校レスリングとの関連づけはできないとして、1960年ローマ大会以降は41人。このうち、16人(39%)が全国大会での優勝の経験がないところからのメダル獲得で、11人は全国3位以内の経験もないか、柔道からの転向者だった。

 現在のグレコローマン選手が聞いたら心外だと思うが、以前、グレコローマンは格下に見られ、「フリースタイルで結果を出せない選手がグレコローマンに取り組む」という風潮があった。グレコローマンのオリンピック代表は、高校時代に全国大会優勝の経験がないのが“普通”だった。

2000年シドニー・オリンピック銀メダルの永田克彦(左)は、高校時代は関東高校大会にも出場できず、全国トップにほど遠い全くの無名選手だった

 1960年ローマ大会では青海上(79kg級)がインターハイと国体で2連覇を達成していたが、1964年東京大会と1968年メキシコ大会のグレコローマン代表は、柔道からの転向選手を含めて全員が高校時代に全国王者の経験がない選手だった。

 1972年ミュンヘン大会では、斎藤真(100kg級)が国体フリースタイル優勝の経験を持ってグレコローマン代表となったが、1976年モントリオール大会では、再び全国王者皆無のメンバーだった。

 その中でも、オリンピックでは金メダル(花原勉、市口政光、宗村宗二)、銀メダル(藤本英男、平山紘一郎)、銅メダル(平山紘一郎)を取り、世界チャンピオン(藤本英男)も生まれたのだから、グレコローマンの強化もしっかりしていた。

 1980年モスクワ大会では、グレコローマンの国体王者に輝いた選手が代表へ(藤森安一、宮内輝和)。1984年ロサンゼルス大会では江藤正基、1988年ソウル大会では出口一也のインターハイ王者がグレコローマンの代表になった。グレコローマンの大会も新設され、置かれている状況も徐々に変わっていき、2000年シドニー大会以降の5大会では、複数回出場の選手を含めて13人中8人が高校時代に何らかの全国大会を制している選手となった。

 全国王者なしからの一人が、2000年シドニー大会と2004年アテネ大会に出場した永田克彦(千葉・成東高~日体大卒)。前者は銀メダルを獲得した。野球から転向した高校時代は全国高校選抜大会、インターハイ、国体には出場できず、フリースタイルでの関東高校大会の出場もない。全国高校生グレコローマン選手権が唯一の全国大会で、4回戦敗退。

 前回紹介した1972年ミュンヘン大会金メダルの加藤喜代美の場合、全国大会出場なしとはいえ、ハイレベルの北海道の2位は全国の3位近くに相当していたという。永田は3年生のインターハイと国体の県予選は、ともに準決勝で年下選手に負けたそうなので、加藤のようなレベルでもなかった。キッズからの経験者が多くなっていた時代でもあった。“底辺からのはい上がり”という点では、日本レスリング界ナンバー1と言えよう。

 永田は「大学に入った時は練習についていけず、下の階級の先輩にもボロ雑巾のようにされました。日体大で強くなった過去の先輩達の話を聞いて励みになり、見返してやるという反骨エネルギーで頑張ることができました」と振り返っている。《続く》


高校時代・全国無冠~オリンピック・メダリスト

選 手 名 オリンピック成績 階  級 出身高校 高校時代の主な成績
永田克彦 2000年2位 グレコローマン69kg級 千葉・成東 全国高校グレコ選手権四回戦
宮原 厚次  1984年優勝・88年2位 グレコローマン52kg級 鹿児島・岩川 柔道からの転向
長島 偉之 1984年2位 フリースタイル82kg級 栃木・足利工 柔道からの転向
工藤 章  1976年3位 フリースタイル48kg級 岩手・宮古 インターハイ2位
高田 裕司  1976年優勝 フリースタイル52kg級 群馬・大泉 インターハイ3位
荒井 政雄  1976年3位 フリースタイル57kg級 山口・柳井商工 国民体育大会5位
菅原弥三郎 1976年3位 フリースタイル68kg級 秋田・五城目 国民体育大会5位
平山紘一郎 1972年2位・76年3位 グレコローマン52kg級 鹿児島・鹿児島工 柔道・重量挙げからの転向
加藤喜代美 1972年優勝 フリースタイル52kg級 北海道・旭川商 北海道2位
金子 正明  1968年優勝 フリースタイル63kg級 栃木・足利工 インターハイ2位
藤本 英男  1972年2位 グレコローマン63kg級 徳島・穴吹 インターハイ4位
宗村 宗二 1968年優勝 グレコローマン70kg級 新潟・巻農 インターハイ3位
市口 政光 1964年優勝 グレコローマン57kg級 大阪・浪速 柔道からの転向
花原 勉  1964年優勝 グレコローマン52kg級 山口・豊津 柔道からの転向
堀内 岩雄  1964年3位 フリースタイル70kg級 富山・滑川 インターハイ5位
渡辺 長武  1964年優勝 フリースタイル63kg級 北海道・士別 インターハイ2位






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