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2020.06.23

【記録】高校のみならず学生タイトルもなし、“遅咲き”ナンバーワンは藤村義…オリンピック・日本代表選手

 高校の全国大会としては、1975年に全国高校選抜大会で全国レベルの個人戦が始まり、インターハイ、国体とともに高校生の3大大会として定着。1985年に全国高校生グレコローマン選手権、1993年にJOCジュニアオリンピックカップが始まり、年間で5回の全国王者の可能性ができた。

 そうなると、さすがにオリンピック代表になるほどの選手、特にフリースタイルの選手は、1度くらいは全国王者になっているのが普通になった。1988年ソウル大会は、フリースタイル10人のうち、全国王者の経験がないのは74kg級の原喜彦ただ一人だった(原も2年連続で全国高校選抜大会2位の実績を持っていた)。

 予選が導入された1992年バルセロナ大会以降、フリースタイル27人、グレコローマン23人の代表の中で、高校時代に全国王者を経験せずに代表になった選手は、フリースタイル3人、グレコローマン12人(柔道からの転向選手3人を含む)。2004年アテネ大会以降の割合はさらに低くなり、フリースタイルは12人中1人、グレコローマンは11人中3人となった。

全国大会無冠の高校・大学時代を経て、30歳でオリンピック出場を勝ち取った藤村義。タオルに顔をうずめて涙を隠した=2012年3月、アジア予選(カザフスタン)

 その一人が銀メダルを取った永田克彦で、前回、“底辺からのはい上がり”はナンバーワンと紹介した。“遅咲き”という点では、2012年ロンドン大会に出場した藤村義(山口・田布施農高~徳山大~自衛隊)の方が上と言えよう。

 藤村は全国高校選抜大会、インターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体の4大会には出場していて、全国高校選抜大会はベスト8に進出している。この点では永田より上。しかし、永田が大学3年生で学生王者となり、24歳で全日本王者、27歳でオリンピック出場を果たしたのに対し、藤村は大学進学後、西日本学生選手権の優勝はあるが、東西の大学が集まる大会では全日本大学グレコローマン選手権2位が最高だった。

 自衛隊3年目の全国社会人オープン選手権が初の全国タイトル獲得となり、この時が24歳。その2年後、26歳にして国体を初制覇し、初の全日本チャンピオンに輝いた。永田より歩みの遅い日本一で、オリンピック出場時は「30歳4ヶ月10日」(関連記事)。最も直近の晩成選手だ。

 藤村は、高校時代に現役のトップ選手や他校の指導者と練習をした際、「おだてられただけかもしれないけど、高評価をもらい、続けていけば勝てるようになるかもしれない、という気持ちになれた」ことが、全国上位に行けなくとも気持ちが萎えなかった一因と振り返る。

30歳でオリンピック初出場を果たした藤村義

 大学時代は「どうやったらオリンピックに出られるのかも分からないし、分かろうともしなかった」と振り返る一方、「強くなりたいという気持ちははっきり持っており、大会のためにがむしゃらに練習していた」と言う。徳山大と自衛隊に認めてもらったことが、タイトル歴はなくともレスリングを続けるモチベーションだったそうだ。

 竹刀やキックがとび、反発をエネルギーに変えさせて鍛えるのが主流の時代もあっただろうが、現在は「ほめる」「認める」が、必要な選手育成方法なのだろう。

 他に、2000・04・08年に3大会連続出場の笹本睦(2007年世界選手権2位)、2004・08年に2大会連続出場の池松和彦(2003年世界選手権3位)、1996・2000年に2大会連続出場した片山貴光は、いずれも高校時代は全国王者なしから、オリンピックに複数回出場している。片山は永田と同じく全国高校選抜大会、インターハイ、国体の出場経験のないとところからのはい上がり選手。

 キッズ・レスリングの隆盛と若年世代におけるグレコローマンの普及と強化が進んでいる今後、こうした選手の出現は少なくなるかもしれない。だが、「高校から始めては遅い」「高校時代に全国王者にならなければオリンピックは無理」といった“きまり”など存在しない。そうした常識があったとしても、常識を破るところに進歩・発展がある。目立つ選手だけではなく、磨けば光る無名選手を発掘し、丹念に育てることも指導者に求められる使命と言えよう。

 そんな指導者や選手の励みになるためにも、高校時代の無名選手によるオリンピック代表の出現が待たれる。


高校時代・全国無冠~オリンピック代表選手(1992年大会以降)

選 手 名 オリンピック成績 階   級 高校時代の主な成績
藤村 義 2012年13位 男子グレコローマン66kg級 1999年全国高校選抜大会5位
池松 和彦 2004年5位・2008年13位 男子フリースタイル66kg級 1997年国体2位
笹本 睦 2000年8位・04年5位・2008年9位 男子グレコローマン60kg級 1995年全国高校グレコ選手権3位
永田 克彦 2000年2位・04年16位 男子グレコローマン74kg級 1991年全国高校生グレコ選手権四回戦
元木 康年 2000年9位 男子グレコローマン63kg級 柔道からの転向
片山 貴光 1996年8位・2000年17位 男子グレコローマン76kg級 1989年全国高校グレコ選手権2位
嘉戸 洋 1996年7位 男子グレコローマン48kg級 1989年全国高校グレコ選手権3位
西見 健吉 1996年8位 男子グレコローマン57kg級 1985年国体3位
三宅 靖志 1996年16位 男子グレコローマン68kg級 柔道からの転向
鈴木 賢一 1992年二回戦・96年8位 男子グレコローマン130kg級 1986年国体3位
中西 学 1992年二回戦 男子フリースタイル100kg級 1984年国体2位
大橋 正教 1992年9位 男子グレコローマン48kg級 1982年国体3位
花原 大介 1992年二回戦 男子グレコローマン57kg級 1987年全国高校グレコ選手権3位
原 喜彦 1988五回戦・92年四回戦 男子フリースタイル74kg級 1980・81年全国高校選抜大会2位
森山 泰年 1984年二回戦・88年二回戦・92年二回戦 男子グレコローマン90kg級 柔道からの転向

(注)1992年は、10位までを順位づけ







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