【2020年全国高校選抜大会・特集】八海が新潟県勢として23年ぶりのベスト8進出！ 王国復活劇が加速する！

（文＝布施鋼治、撮影＝保高幸子）

関川博紀監督に代わり、チームを指揮した島袋慶生監督代行

　2020年風間杯全国高校選抜大会の学校対抗戦で、開催県である新潟県の八海がベスト８に進出するという快挙を成し遂げた。同県のベスト8進出は、1997年の新潟工以来、23年ぶりの快挙。

　初日の３回戦を突破しベスト8入りが決まった瞬間、出場選手たちはみな感動の涙を流していた。だが、会場に一番喜んでいるはずの関川博紀監督の姿はなかった。実は最終追い込み中に大けがを負い、大会初日の9日に手術という状況に追い込まれていた。

　代わりに新潟県央工の島袋慶生監督が監督代行として八海高のセコンドについた。島袋監督代行は日体大出身。2019年の全日本選抜選手権では男子グレコローマン72㎏級で３位に入場した実績を持つ教員レスラーだ。

　「関川監督は以前から『ベスト８に行きたい』と言っていたので、自分が何をしたというわけではないですけど、とりあえずホッとしました」

　それにしても、なぜ他校のセコンドに就くことになったのか。「新潟県は強化練習が多いので、チーム単位というより県全体で動くことが多い。自分もよく他校との強化練習に参加させてもらっているので、八海の部員たちの練習もよくみている。そういうこともあって、関川監督は自分に頼んできたんだと思います」

3回戦でチームスコア0－3からの逆転勝ち

　大会２日前に来た急なオファーだったが、状況が状況だけに断る理由はなかった。「（関係部署に）書類を出し、（県央工高の）校長にも許可をいただきました」

3回戦の日本文理大戦、チームのベスト8進出をかけて挑んだ125kg級の庭野泰地（赤）

　初戦の２回戦は八戸工大一（青森）を５－１で撃破。続く３回戦の日本文理大附（大分）戦で試練が待ち受けていた。51kg級から３連敗を喫し崖っぷちまで追い込まれてしまった。とはいえ、そこからの盛り返しは鬼気迫るものがあった。71㎏級の山賀から逆に３連勝をマーク。結局、勝ち点の合計で１点差という内容で勝利し、準々決勝進出を決めた。

　「最初３人負けてしまったので、気合を入れ、相手をボコボコにしてやろうという気持ちで挑みました。チーム一丸となって応援してくれたので、勝てた試合だったと思います」（山賀）

　島袋監督代行は「負けたところでも点を取っていたところが大きかった。対照的に相手チームはそれがなくて負けていましたからね」と勝因を分析する。確かに60㎏級の本名帝心、65㎏級の石沢一太は、いずれも敗れたとはいえ、１点ずつ奪っている。

　大会２日目。「ここまで来たら、優勝するしかない」（山賀）という気持ちで大会３連覇中の日体大柏（千葉）に挑んだが、その壁は厚く、0－7と完封負けを喫した。

価値ある“ベスト8常連校”の仲間入り

　島袋監督代行は「力の差がありました」と肩を落した。「試合前は昨日の３回戦のように、レスリングは最後まで何があるかわからないと声をかけました。ベスト８に進出したということで、選手たちにはうれしい気持ちがある反面、浮かれた気持ちも少なからずあったと思う」

チームを支えた71kg級の山賀秀

　そして「関川監督が一番悔しい思いをしているはず」と入院中の指導者の気持ちをおもんぱかった。「よく、『今まで作ってきたチームの中で、いまの代が一番いい』と言っていました。昨日、３回戦を突破しましたというメールを入れたら、『おめでとう』という返信が戻ってきたけど、今日は『負けてしまいました。力不足です。また僕も一緒に新潟県で頑張ります』と伝えようと思います」

　それでも、新潟県勢としてベスト８入りした事実は大きい。「今回、準々決勝まで勝ち上がった他の７校は全国大会ベスト８の常連。それらの学校と同じマットに立ったことは、ものすごくいい経験になったと思う。やっぱり新潟県のレベルも上がってきているということでしょう」

　監督代行の采配のもとでの八海の快進撃は、新潟県全体でレベルの底上げをしてきた努力とスクラムの賜物だったか。