【2020年全日本大学選手権・特集】2年ぶりのアベック優勝、地元で燃えた“竹馬の友”谷山拓磨・志賀晃次郎（ともに拓大）

2年ぶりの地元大会でアベック優勝の志賀晃次郎（左）と谷山拓磨＝撮影・矢吹建夫

　10月の全日本大学グロコローマン選手権では2人の1年生王者が誕生した拓大。男子フリースタイルの全日本大学選手権では4年生の2選手が躍動。それぞれ昨年までより1つ上の階級となったが、70kg級で谷山拓磨、74kg級で志賀晃次郎が見事に優勝を果たした。

　ともに大阪・エンジョイクラブで5歳からレスリングに親しんでおり、準地元と言える会場。奇しくも、同じアリーナで行われた2年前の大会でも2選手そろって優勝していた。その再現となり、最高の形で学生最後の大会を飾った。

　谷山は、「もしかしたら、この大会が引退試合になるかもしれない」という気持ちで迎えた大会だった。初戦で全日本選手権3位の坂野秀尭（日大）が相手など、強豪が自分のブロックに固まった組み合わせを見て、「やるしかない。優勝しかない」とファイトが出てきたと言う。

強豪が集まったブロックを突破し、決勝で快勝の谷山拓磨

　坂野には終始押されていたが、終盤に粘って逆転勝ち。「相手は減量があったのに対し、自分は3kgくらい。ないようなもので動きやすかった」というアドバンテージをもって競り勝った。「チャレンジャーでしたから」という気持ちも、思い切りのよさにつながった。

1回戦、坂野秀尭（日大）に押され気味だったが、終了間際に逆転勝ちした谷山拓磨＝同

　これで勢いがついたのか、３回戦で昨年2位の米澤凌（早大）にテクニカルフォール勝ち。準決勝で昨年3位の伊藤朱里（中大）を9－1で破るなど、65kg級で大学王者に輝いた実力を発揮。決勝の齋藤一樹（明大）には1分31秒、10－０のテクニカルフォールで圧勝。2年生の時の秋季新人選手権決勝で闘い、快勝していた相手であり、「気持ち的に楽だった。今度も絶対に勝つ」という気持ちで臨んだ。

　昨年まではけがが多く、満足な練習ができないことが多かった。そのため、本格的なレスリング活動は今年が最後。コロナによるブランクはあったものの、けがもなく順調な仕上がりでコンディションは最高だったそうで、「（コロナで）試合をできずに終わることになったかもしれない。試合ができてよかった。地元で優勝、とう気持ちも果たせた」と言う。

　もし全日本選手権に出ることがあれば、それが最後の大会となる。「けがをせず、追い込んだ練習をやって、今までやってきたことを出したい」と話した。

世界選手権のチームメートに快勝の志賀晃次郎

　一方、志賀は決勝で昨年の世界選手権（カザフスタン）のチームメートでもある髙橋夢大（日体大）との闘いとなった。志賀が70kg級、髙橋が79kg級の代表で、2階級上の相手だが、その時の全日本合宿での練習でも互角に闘えていたし、「（相手は）1年生なので負けたくなかった。３連覇を達成したい」という気持ちがあったことを強調。「攻めて勝つ、という気持ちを貫き通せたことが、テクニカルフォールにつながった」と振り返った。

世界選手権のチームメート、髙橋夢大（日体大）に圧勝した志賀晃次郎（拓大）＝同

　階級を上げた選手の方が体格のハンディがあって不利とも考えられるが、減量による体力ダウンがない分、有利な面もある。志賀も「（階級を）下げた選手より、体重で余裕がある」と思っていたそうで、「70kg級だったら、ばてていたかもしれませんね」と言う。

　昨年のこの大会の70kg級で勝ったあと、全日本選手権はオリンピック階級の74kg級に挑んだが、復帰して学生王者に輝いていた成國大志（青山学院大）にテクニカルフォールで完敗した。「計量で並んだ時、みんな体が大きかった」と、この階級でやっていくにはもっと体を大きくしないとならないことを感じた。

　幸か不幸か、コロナによってマット練習ができず、その期間は徹底したウェートトレーニングに挑んだ。「まだ完全ではないですが、74kg級の体になりつつあると思います」と言う。

　世界選手権の代表にもなっている志賀だが、決して目立った選手ではなく、高校時代は全国大会無冠だった。拓大ヘ進み、新人選手権での優勝を経て、2年前のこの大会で初の学生タイトルを手にし、そこから飛躍した。「その時は谷山が先に優勝してくれ、頑張れた。今回も谷山が先に勝ってくれた。2人で地元優勝を飾りたかった」と振り返った。

　卒業後もレスリング活動に専念できる就職先が決まりつつある。谷山とは別の道を歩むことになるわけで、今後は竹馬の友（幼なじみ）の分まで頑張りたいところ。その前に全日本選手権。「ひとつひとつ、確実に自分のレスリングをやっていきたい」と話した。