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2021.03.06

【特集】3歳からレスリングを始めた元木咲良(育英大)、“遅咲きオリンピアン”の父を追い越す日を目指す

 

(文・撮影=保高幸子)

元木咲良(育英大)

 昨年12月の全日本選手権・女子55kg級で櫻井つぐみがチャンピオンに輝き、53kg級で下野佑実が3位の好成績を残した創部3年目の育英大。その2人を、うれしさと悔しさの混じる思いで見つめていたのが、59kg級の元木咲良だ。

 出場資格がなく全日本選手権に出場できなかった元木は、パートナーとして会場入りしていた。同じ所属の2人が表彰台に上るシーンを目の前で見て「いつも練習していた2人なので、うれしい気持ちと悔しい気持ちがありました。すごく悔しかった。全日本選手権に出られないことが悔しかった」と静かに話す。

 育英大に進学した動機は、「(埼玉・埼玉栄高校時代に)出げいこに行ったとき、監督の柳川(美磨)先生がすごく熱心に指導している姿を見たことです。厳しい環境じゃないと強くなれないと思っていた。それに同じくらいの(体重の)選手がたくさんいたので」と話す。高校3年当時、53kg級で戦っていた元木にとって、最善の場所だと直感した。

父・康年さんは遅咲きのオリンピアン

 元木の父・康年さんは、自衛隊入隊後の20歳からレスリングを始め、2000年シドニー・オリンピック(グレコローマン63kg級)に出場した猛者。父親がオリンピアンであれば小さい頃からそれを意識するようなことをいろんな人に言われる。

2018年世界カデット選手権46kg級で優勝=チーム提供

 元木自身は、オリンピックを遠くに感じていた。「中学生の頃にはどんどん強い子が出てきて、勝てなかった時期がすごく長かった。中学から高校まで伊藤海(京都・網野高)ちゃんと7回ぐらい試合して、テクられたり(テクニカルフォール負け)して、ずっと勝てなくて…」と振り返る。「現実味がなくて…」-。

 そんな元木の意識が変わったのは2018年だ。ジュニアクイーンズカップで初めて伊藤海に勝ち、初めての全国大会優勝を経験。日本代表に選ばれて出場した世界カデット選手権(クロアチア)でも優勝した。「そのときに初めて、優勝する感覚が分かった」と元木。「今まで頑張ってきてよかったな、って思え、周りも泣いて喜んでくれたりして、支えてくれる人がたくさんいるんだなと、初めて思いました。もっと努力したい、オリンピックを目指したいと思いました」と話す。

 その後、同年の秋にひざと肩を同時に手術し、約1年のブランク。2019年のベストは全日本女子オープン選手権・高校生の部53kg級の2位。2020年は新型コロナウィルスの感染拡大のため大会が開催されず、またも約1年のブランクを余儀なくされた。だが育英大は柳川監督の努力で大学が閉鎖している間もなんとか練習場所を確保。少人数ずつ、しっかり練習を積んでいた。

進学後初の大会で、U23世界チャンピオンを破る殊勲!

 進学後初の大会となった昨年11月の東日本学生女子選手権は59kg級にエントリー。高校時代に比べると3階級のアップとなった。「高校の時は6kgくらい減量して53kg級に出場していたんです。けがが多くて…。柳川先生から『減量しないで体を作り、自分に合った階級でレスリングした方がいい』とアドバイスされ、上げることにしました」-。

減量の心配がなくなり、伸び伸び練習する元木

 大学での初めての大会であり、階級を上げて初めての試合。「力負けとかするんじゃないか」と心配する気持ちもあったが、結果は見事に優勝。「緊張はなく、挑戦する気持ちで試合に臨みました」。新しい挑戦だったこともあり、伸び伸びとレスリングができた。

 「強い選手に挑んで、勝った。新しい階級で勝ててうれしかったです。だけど課題もたくさん見つかりました」-。元木の力を見込んで階級アップをアドバイスした柳川監督からも試合後に「トップとの差はない。コツコツ練習していって来年は全日本で優勝できるように頑張ろう」と太鼓判を押された。

 「減量していた時は、最後に体力がなくなってしまって、負けている場面で取りに行けなかった」という元木だが、東日本選手権では試合直後も息も上がっていないようだった。「最後までばてることなく動けた。育英大に入ってからすごく練習量が増えたのもあるとは思うんですけど、この階級が自分の体に合っているな、と思いました」と自信を持った。監督の「トップとの差はない」という言葉も、自分のものとして実感できた。

チーム内のライバルと毎日競った練習

 ローシングルが得意ではあるが、以前は取り切ることができないことも多かった。「大学に入ってから、キャッチしてからの処理ができるようになってすごく自信を持って入れるようになってきました。”取れる技”になったと思います」と技術の進化の手応えもある。

ハイレベルの練習の中でローシングルに磨きをかける

 「お父さんは20歳になってからレスリングを始めた。私は3歳からやっているので、自分の方が可能性はあるのかな…」。オリンピックに出場した父に追いつき追い越す日も遠くない。目下の目標は12月に予定されている全日本選手権で優勝すること。それまでの約9ヶ月半、時間をかけてじっくり強化し、父がレスリングを始めた年とほぼ同じ年齢での栄冠を目指す。

 「育英大は毎日競った練習をしていて、練習の中でライバルがいることがすごく目標になってモチベーションが下がらない。毎日切磋琢磨していけば、全日本優勝も遠くないのかな」と、言葉は控えめだが、その目はまっすぐ前を向いていた。







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