(文=布施鋼治、撮影=保高幸子)
今年、創部21年目を迎えた八幡浜工(愛媛)が躍進-。新潟市東総合スポーツセンターで行なわれた全国高校選抜大会の学校対抗戦でベスト16入りを果たした。
今年4月から正式に監督に就任する梅野貴裕氏は「3回戦の網野・丹後緑風(近畿・京都)は、強いとは予想していたけど、やっぱり強かった」と振り返る。「みんな『ベスト8には入ろうよ』という意識が強かったと思う。最初から優勝を目指していないと、ベスト8には入れない。そこの意識が足りなかったと思う」
とはいえ、初戦となった2回戦で、一昨年2位など実績では八幡浜工を大きく上回る鹿島学園(茨城)を競り合った末に4-3で振り切ったことは評価されるべきだろう。梅野監督は「チームを通して、自分たちのレスリングができたことが最大の勝因」と分析。「(0-2というビハインドで迎えた)60㎏級で平井翔太がテクニカルフォール勝ちを収めいい流れを作ってくれたと思う」
鹿島学園戦では平井に続いて勝利を収めた、チームのキャプテンで65㎏級の長野壮志の存在も大きかった。
「長野は、ものすごく元気のいい選手なんですよ。リードされた状況でも、周囲に『頑張ろうぜ』と声をかけるなど、その明るい雰囲気は崩れることがなかった」
チームのメンバーは、レスリングで実績のある生徒を集めて構成されているわけではない。51㎏級の山崎哲也と55㎏級の佐々木鴨久は高校に入ってからレスリングを始めた選手。梅野監督は約5ヶ月前に開催された前年の大会と比べると、「彼らも含め、チーム全体として力をつけてきている」と実感している。
「山崎はスピードを活かしたレスリングができるようになってきた。佐々木は力強いレスリングが特徴です。平井は前に出るレスリングが得意。長野と71㎏級の小川凛太郎は組んでから勝負するタイプ。80㎏級の豊田哲平は基礎体力がすごいので、好きにやらせています。125㎏級の井上響には地力がある」
指導のモットーを問うと、「礼儀」と「愛情」を挙げた。3回戦終了直後のミーティングでは、出場選手全員にけがの有無をやさしい口調で問いかけていたのが印象的だった。また、部員たちには「これで終わりではない」と訴えた。
「今回の反省を活かして、県総体、四国総体、そしてインターハイでの優勝を目指していく」
2016年の全日本選抜選手権・男子グレコローマン71㎏級で優勝し、世界選手権出場の実績を誇る梅野監督は、伸びしろだらけの新チームを今後どのようにブラッシュアップしていくのか。