(撮影=保高幸子)
3月29日から東京・味の素トレーニングセンターで合宿中の男子フリースタイルの全日本チームは4月2日、東京オリンピック・アジア予選とアジア選手権(いずれもカザフスタン・アルマトイ)へ向け、報道陣に対してリモートでインタビューに応じ、意気込みを語った。
アジア予選(男子フリースタイルは4月11日)に3度目のオリンピック出場をかける86kg級の高谷惣亮(ALSOK)は「ぼちぼち、です」と第一声。詳しく聞かれると、「ぼちぼちというのは、関西では『いいよ』という意味なんです」と解説(注=「普通です。特に悪いところはありません」「ゆっくりマイペースで」「商売人が儲かっていることを悟られないように曖昧にする表現」など諸説あるようだが)。
コロナ禍で公開練習もできなくなり、パソコンの画面越しとはいえ多くの担当記者に囲まれての取材は、対面取材だった昨年12月の全日本選手権以来。「よく集まってくれました」とリップサービスも好調で、時間の関係で終わりが来ると、「もっといいでしょ」とスタッフを制止するなど、多くの注目を集めることがエネルギーになる選手らしい一面ものぞかせた。
世界レスリング連盟(UWW)がエントリーを発表し、外国人対策にも着手。一昨年までとは別の選手を派遣している国も多く、気を引き締めるが、「自分が一番強いと思う」と自信たっぷり。2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロ大会は、ともに予選2位という成績での出場枠獲得(後者は負傷のため決勝を途中棄権)だった。ともに本番ではメダルを取れなかったので、「縁起が悪い。今度は1位になってオリンピックに行きます」ときっぱり。
アジア選手権(4月17~18日)に出場する65kg級の乙黒拓斗(山梨学院大)は、「練習はしっかりできていますか?」との問いに、「いい日もあるし、悪い日もあるかな」と、リップサービスなし(?)の回答。やや疲れた表情だったのは、練習のハードさもさることながら、先月22日に自衛隊に入隊し、マット以外で覚えることも大変だったという理由もありそう。「体も精神的にも疲れてきた頃です」と心情を吐露した。
圧勝で優勝した昨年2月のアジア選手権(インド)以来の試合出場。試合勘を問われると、「けがで1年半とか試合を離れた時もある」と話し、試合間隔が空いたからといって試合勘が落ちるものではないことを強調。コロナ禍の1年だったが、「自分のレスリングが変わったことを、(皆さんに)感じてほしいです」と話した。
男子フリースタイルの井上謙二・強化委員長(自衛隊)は「みんな調子がよく、メリハリをつけて練習している」と、最後の調整に臨む各代表の仕上がり具合に満足そう。
2016年リオデジャネイロ大会以来の57kg級での国際大会となるアジア予選代表の樋口黎(ミキハウス)は、あと4kgくらいまで落ちているそうで、「昨日も、最後まで動き切るスパーリングをしながら汗もかけていた。いい状態だと思います」と言う。
ライバルの北朝鮮選手が現時点でエントリーしていないことで、「モンゴルが実力的に次にくるかな。あとは中国。それ以外なら、普通にやれば勝てると思う。コンディショニングがよければ、問題ないと思っている」と期待した。
エントリーによって選手の試合動画を収集し、選手たちに提供して主な選手の癖や得意技を研究。対戦相手を想定した練習をやっているという。「重量級もチャンスはある」と期待した。