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2021.05.04

【特集】シルクロードの交易都市で燃えた選手を追う…カザフスタン遠征日記(1)《布施鋼治》

 

 東京オリンピック、そして3年後のパリ・オリンピックを目指す日本代表チームは4月上旬、かつてシルクロード天山北路のオアシスとして交易が盛んだった古都、カザフスタン・アルマトイへ向かった。1997年までは同国の首都だった人口153万人の同国最大の都市。ここでも新型コロナウィルスの感染の猛威にさらされていたが、選手たちは夢の舞台を目指して熱く燃えた。

 チームに同行し、コロナと闘いながら密着取材を続けた布施鋼治記者が、18日間の遠征を振り返った。


4月4日(日)~5日(月)

出発の羽田空港。人はまばらで、機内も空席だらけだった

 アジア予選に出場する男子フリースタイルと女子フリースタイルの一行は、羽田空港からまずはトランジット先のイスタンブールへ。飛行機はガラガラ。これだと、感染のリスクは少ない。ただ、機内でアルコールの提供はなかった。

 イスタンブールでは空港内のホテルで小休止。ロビーでランチボックスを渡される。中身はラップに包まれたサンドイッチ、リンゴ、紙パックのジュース、小さなパウンドケーキ。お世辞にも世界3大料理のひとつに数えられるトルコの国際空港が提供する食事とは思えない粗末なものだった。

 Wi-Fiをつないでメールを確認すると、先発の男子グレコローマン・チームから「近隣のスーパーにも行けないバブル生活です」という報告を受ける。遠征中のちょっとした買い物は大きな息抜きになるだけに残念だったが、仕方ないか。

 イスタンブールからアルマトイまでの飛行機は、羽田~イスタンブールの便とは対照的に満席だった。疲れていたので、どのくらい飛行機に乗っていたのかは定かではない。

▲乗り継ぎで10時間滞在のイスタンブールで休憩したホテルの部屋

▲イスタンブールからアルマトイへ向かう飛行機の機内食


4月6日(火)

アルマトイ空港で入国を待つ選手たち

 6日朝にカザフスタン最大の都市アルマトイに到着。当初は東京のカザフスタン大使館でビザ取得の予定だったが、現地のレスリング協会の指示で、空港で到着時に取得することになっていた(アライバル・ビザ)。取得するために長蛇の列。結構時間はかかった。2年前、カザフスタン(ヌルスルタン)を訪れたときにはノービザだっただけに、コロナの時代を実感する。
 
 大型バスで宿泊先のラハト・パレス・ホテルに到着すると、さっそく地下の宴会場で新型コロナウィルスの検査を受ける。全員陰性だった。検査結果は30分程度でわかったので、抗原検査だったか。その後、ようやくチェックイン。基本は相部屋とはいえ、スペースは広く、バスタブもついているので快適そうだ。パスワードなしのホテルのWi-Fiも快適だった。

 夕方からは大型バスで移動し、近くのトレーニングセンターでさっそく練習…、という予定だったが、事前に話が伝わっていなかったようで、先に練習していた地元のレスラーたちの練習が終わる気配はない。結局、その一部を使わせてもらう形で日本チームは練習を開始。

 お世辞にも衛生観念が行き届いたマットとは言えなかっただけに、少しばかりナーバスになっている選手もいた。練習中の水は、入口にあった売店で大量に購入。こんなデザインのミネラルウォーターは見たことがない(左写真)。

 ちなみにトレーニングセンターはカザフスタン版・味の素トレーニングセンター。階上に寝泊まりしながら練習に励む地元のレスラーがたくさん練習していた。

▲到着当日。ホテルで抗原検査の結果を待つ選手たち。さすがに疲れ気味

▲カザフスタンの英雄(?)の大きな写真の前で練習

▲オリンピック銀メダルの樋口黎選手の練習に外国選手も注目


4月7日(水)

 この日は、男子グレコローマン・チームも含め、ホテルからほど近い昨日とはまた違うドースティック・スポーツセンターでトレーニング。移動は徒歩だった。束の間の解放感。春の風が心地いい。

この日の練習場は“ソ連”を感じさせる建物

 スポーツセンターの建物は旧ソ連時代に建てられたもので、時代を感じさせた。中は専用マットが敷かれていた。男子グレコローマン67㎏級の高橋昭五選手は持参した栄養ドリンクのにおいを嗅いだだけで吐き気をもよおしていた。減量で嗅覚が過敏になっていたのか。

 男子フリースタイル57㎏級の樋口黎選手は、前日と比べると動きが格段によくなっていた。たった1日で選手のコンディションは大きく変わる。あとから気づいたが、別のスペースにも専用マットが敷きつめられ、別の国の選手たちが練習していた。

 ボランティア通訳のパーシャさんから「格闘技や武道専門に使っている施設」と教えられる。これからも徒歩による移動があればいいと思っていたが、この日が最初で最後だった。

 夕方の練習はホテルで各自というスタイルがとられた。地下にはジム、プール、サウナが併設されていただけに、自主トレに励む環境は整っていた。

▲前日より広い練習場

▲ホテルの朝食会場

▲朝、昼、晩ともメニューは別々。写真はある日の筆者がセレクトした昼食


4月8日(木)

試合前日の練習は会場併設のアイスホッケー場

 アジア予選前日。この日は試合会場となるボランスーラック・スポーツセンターに併設されたアイスホッケー場に敷かれた4面のマットを、各国の代表とシェアする形で練習。ホテルからは徒歩でもいける距離だったが、大型バスで迂回しての移動となった。

 男子フリースタイル86㎏級の高谷惣亮選手はここでもマイペース。マスクを二重にして使用し、唯一ベンチコートを着て移動していた。体調管理に抜かりなし。行動はいつも練習パートナーとして連れてきた弟の高谷大地選手と一緒だった。

 減量中の樋口黎選手をフリースタイルの指導陣が円陣を組むようにしてゲキを入れ、叱咤激励している場面が印象的だった。

 この日あたりからホテルのロビー片隅に特設売店がオープン。飲料水や日用品などを売るようになった。市価の3~4倍の価格設定だったが、自由に出歩けない者にとってはオアシス。選手たちはこぞって買い物をしていた。

▲“強力タッグ”で予選に挑む高谷惣亮・大地の兄弟

▲ホテルのロビーに設置された臨時売店

《続く》







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