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2021.07.13

【2021年東京オリンピックにかける(4)】座右の銘「人事を尽くして天命を待つ」を胸に大舞台を迎える…女子50㎏級・須﨑優衣(早大)

 

(文=渋谷淳)

 開会式で日本選手団の先頭に立ち、日の丸を掲げて入場する旗手の大役を任された。女子50kg級代表の須﨑優衣(早大)。自身初のオリンピックを迎える22歳は、ひときわ大きな期待を背に、幼少のころから夢見ていた大舞台に立つことになった。

Zoomインタビューで東京オリンピックへの思いを話した須﨑優衣(早大)

 本人が「代表になるまで長くて厳しい道のりでした。ようやくスタートラインに立てた気持ちだった」と振り返るように、オリンピック出場選手の中でも須﨑ほどドラマチックにオリンピックへの切符を手にした選手はいないかもしれない。

 2017・18年の世界選手権を連覇。2020年東京オリンピックに向けて視界良好と思われた矢先、左ひじの脱臼とじん帯断裂という大けがに見舞われた。復帰して2019年の全日本選抜選手権で優勝したものの、世界選手権出場をかけた同年7月のプレーオフで入江ゆき(自衛隊)に敗れてしまう。

 入江が世界選手権でメダルを獲得すれば東京オリンピック代表に内定するため、この時点で須﨑の東京オリンピックは絶望的に。「可能性は1%もなかった」というところまで追い込まれた。

 プレーオフに敗れ、マットに崩れ落ちて涙した須﨑は当時の思いを次のように語る。

 「東京でオリンピックが開催されることが決まってから、東京で金メダルを取ることだけを考えてきた。その夢、目標がなくなってしまって、何のためにこれから生きていけばいいんだろう、というくらい落ち込んだ。練習はすぐに再開しましたが、次のオリンピックを目指すという気持ちにはなれなかった」

絶望状態からはい上がって手にしたオリンピック代表

 絶望したのは当然だろう。早大レスリング部出身の父・康弘さんの影響を受け、千葉県の松戸クラブでレスリングを始めたのが小学校1年生のとき。体を動かすのが大好きだった少女は、「ほかにも水泳とかピアノとかやっていた。レスリングが一番フィットしたというか、ピンときた感じがありました。一番はまりました」と、このスポーツにのめり込んだ。以来、青春のすべてをレスリングにかけてきたと言っても過言ではなかった。

2012年、中学1年生で全国大会を制したときの須﨑=撮影・矢吹建夫

 小学校5・6年生で全国大会に優勝し、中学に進学するとその勢いをさらに加速させた。中学入学の際に一度は断ったJOCエリートアカデミーに2年生から編入し、最終的には全国中学生選手権を3連覇するなど活躍。東京・安部学院高に進んでからもその才能をいかんなく発揮し続けた。

 そして早大2年生で迎えたのが前述したプレーオフだった。須﨑の順風満帆とも言えるレスリング人生、輝かしい実績を知るにつけ、この挫折がいかに大きなものだったかは容易に想像できる。

 ところが、である。入江が世界選手権でメダルに届かず、代表争いが一気に白紙に戻るという予想していなかった事態が訪れた。このチャンスに須﨑は燃えた。2019年12月の全日本選手権準決勝で2016年リオデジャネイロ・オリンピック金メダリストの登坂絵莉を破り、決勝で入江を下して優勝。そして今年4月に開催されたアジア予選で優勝し、一度はあきらめたオリンピック出場を2年越しで決めた。

あの敗戦があったからこそ成長できた!

 目の前が真っ暗になったプレーオフでの敗戦は、悪夢に違いなかったが、あの敗戦があったからこそ成長できたのも事実だ。そのことがはっきり見て取れたのが東京オリンピック代表を内定させたカザフスタンでのアジア予選だった。

2018年、リオデジャネイロ銀のマリア・スタドニク(アゼルバイジャン=2019年世界女王)を破って世界一の須﨑。今回も、このシーンが見られるか=撮影・保高幸子

 コロナ禍の影響でおよそ1年4ヶ月ぶりの試合だったにもかかわらず、「久しぶりだから緊張するのかと心配だった。あまり緊張もせずに試合を楽しめた。試合前に考えすぎてうまくいかない時期もあった。アジア予選はそういうこともなく、メンタルが安定していた」とは本人の弁。厳しい代表争いが、大舞台でも動じないハートを作った。

 技術的にも「練習してきたけど試合で出せなかった」という“またさき”を繰り出したり、タックルを決めた後にすかさずフォールを決めにいったり、これまではあまり見せなかった動きを披露した。現状に満足することなく、常に強くなろうというあくなき向上心が幸運も呼び寄せた-。そう言えるのではないだろうか。

 本番を目前にした2ヶ月は「自分がタックルに入ってからの処理、タックルに入られてからの対応」を重点的に練習している。「挑戦」という言葉を大切にしてきた22歳は、もう一つの座右の銘「人事を尽くして天命を待つ」の言葉を胸に、待ちに待った大舞台を迎えようとしている。







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