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2021.07.17

【2021年東京オリンピックにかける(7)】幕張のマットで見せられるか、勝利のパフォーマンス!…男子フリースタイル86kg級・高谷惣亮(ALSOK)

 

(文=ジャーナリスト、粟野仁雄)
 

Zoomでインタビューに応じる高谷惣亮(ALSOK)

 「えっ、これで終わりなの。もっと話したかったのに」

 昨年12月の全日本選手権(東京・駒沢体育館)。男子フリースタイル92kg級で、決勝まで1ポイントも取られない“完全優勝”を果たし、4階級にわたって10連覇という前人未踏の偉業を達成した高谷惣亮(ALSOK)。普通なら、TVカメラが回っている中での共同インタビューの後、ペン記者が集まる「囲み取材」が行われるが、コロナの感染予防でそれが行われないことを知り、残念そうな顔をした。

 旺盛なサービス精神や、勝利したマットでのパフォーマンス(アイドルグループ「NiziU(ニジュー)」の「縄跳びダンス」)も32歳の実力者の余裕からか。

 ひょうきんな性格だが、ルックスは一級品。柳澤健著『日本レスリング物語』(2012年=岩波書店)の表紙は、この男が飾った。「タックル王子」の異名通り、鋭いタックルを武器に国内では無敵の強さを誇ってきた。

 2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロ大会に続く3回目のオリンピックは、74kg級から86kg級に上げて臨む。「海外の86kg級は長身選手が多く、タックルが入りやすい」と、恐れる様子はない。

過酷な減量で「めまいがした」と言う2016年リオデジャネイロ大会

 このクラスの出場枠を取る前に東京オリンピックの1年延期が決定。今年5月にブルガリアで行われた世界最終予選で優勝し、オリンピック3大会連続の代表内定を勝ち取った。4月のアジア予選(カザフスタン)では出場枠獲得に失敗したが、妻の奈美さんが「東京オリンピックはあるかどうか分からない。最終予選を私たちのオリンピックにしようよ」と言ってくれ、開き直れたという。

全日本の舞台のデビュー戦となった2007年全日本選手権。決勝まで進むも、惜敗で2位=撮影・矢吹建夫

 日本海に面する風光明媚な京都府網野町(現京丹後市)出身。中学まで空手を習っていた。網野高校時代の2007年の全日本選手権(2008年北京オリンピック予選)で2位となり、注目を浴びた。卒業後は、格闘家から政界に転じた須藤元気・現参議院議員などユニークな人材を輩出した拓大レスリング部へ。2012年のロンドン大会は初戦敗退したが、2014年の世界選手権では74kg級で銀メダルに輝く。

 2016年リオデジャネイロ大会では、7位に入賞したが「めまいがしていた」というほど減量に苦しみ、「明けても暮れても減量のことばかり考えている自分に疑問を持った」。

 悩んだ末、階級アップして東京オリンピックを目指すことを決断した。「元々、82~83kgくらいの体重ですから、スピードは落ちません。86kg級なら一番自然な状態で、自分らしいレスリングができます」。

 とはいえ、相手のパワーは増す。80kg代は、欧米などでは男子の平均体重に近い。ボクシングなども同様だが、人口層も厚い体重80kg台の格闘技で、腕力も弱く腕も短い日本人が勝つのは至難だ。

個々の選手がファンを作ることで底辺拡大を

 長い日本の男子レスリングの歴史でも、オリンピックで80kgを超える階級でメダルを取ったのは、太田章(1984年ロサンゼルス・1988年ソウル両大会の90kg級で銀)と長島偉之(1984年ロサンゼルス大会82kg級で銀)しかいない。 

世界最終予選で出場枠を獲得、3度目のオリンピックへ挑む=提供・UWW(撮影=Kadir Caliskan)

 2014年の世界選手権では、高谷が破ったベラルーシ選手に控室で熱湯をかけられて頭を大やけどした。リモート取材でそれを問うと、「僕らしいなと思います。東京オリンピックでもあるかもしれませんよ」と、物騒なことを宣(のたま)った。

 7月6日の日本オリンピック委員会(JOC)によるリモート壮行会にも出た。「コロナのため、ロンドンやリオの壮行会とは雰囲気が違い、無理くりやっているだけのような印象でした」。沈黙する代表選手が多い中、歯に衣着せない。

 「八田イズムの伝統などを重んじる古参の人たちに、ダンスパフォーマンスや長髪が批判されました。でも、レスリングの底辺拡大は協会に任せるのではなく、個々の選手がファンを作ることで広げていきたい。『高谷』と聞いて、『踊る人ね』と言ってる人がいたけど、よかったと思いますよ」。ファンやマスコミへのサービスも、ただ目立ちたくてやっているのではない。

 「オリンピックで、ダンスみたいなのをやりますか?」と聞くと、「やります」-。弟(大地=自衛隊)との兄弟出場は果たせなかったが、幕張メッセのマットで王者となり、見せてくれる高谷ダンスが楽しみだ。







2023年世界選手権/激戦の跡
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