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2021.07.20

【2021年東京オリンピックにかける(8)】負のスパイラルから脱出、自信をもって臨む晴れ舞台…男子フリースタイル65kg級・乙黒拓斗(自衛隊)

 

(文=渋谷淳)

柔和な表情でZoomインタビューに答える乙黒拓斗(自衛隊)。マット上では“別人格”に豹変する!

 男子フリースタイルの金メダル候補の筆頭といえば、この選手。65㎏級の乙黒拓斗(自衛隊)だ。試合まで1ヶ月という7月上旬、メディアのオンライン取材に応じた22歳の若武者は「自分が全力を出せれば勝てるし、出せなければ負ける。勝つ、負けるじゃなく、出すか、出さないか」と話し、自分に打ち勝つことを金メダル獲得の条件に挙げた。

 華々しい経歴の持ち主である。レスリング一家に育ち、男子フリースタイル74㎏級で同じオリンピックの舞台に立つ2歳上の兄、圭祐(現自衛隊)とともに小学生のときから腕を磨き続けた。柔道や水泳、サッカーなどにも親しみ、「バスケットボール以外は、今でも全部できます」というスポーツ万能少年。あっという間にその才能を開花させたのは当然だったかもしれない。

 中学からはJOCエリートアカデミーに入り、全国中学選抜選手権2連覇、世界カデット選手権3位など活躍。東京・帝京高に進学すると、インターハイ3連覇のほか、世界カデット選手権では優勝を飾り、将来は日本のエースとしての活躍が期待されるレスラーとなった。

 乙黒が世界を驚かせたのが2018年、山梨学院大2年生で出場した世界選手権(ハンガリー)だった。初戦から3試合連続テクニカルフォール勝ち。以前はカウンター中心のスタイルだったが、本人が「ネコのよう」と表現する、まるで空中戦のような派手なレスリングで世界の強豪を蹴散らしていく姿は壮観だった。

快挙達成と引き替えに。大きな試練がやってきた

 準決勝はロシア王者、アフメド・チャカエフに15-10。決勝は同年のアジア大会王者のバジラン・プニア(インド)に、第2ピリオドに右足首を捻挫し、動けなくなって2度コーションを受けるピンチに陥りながら、点取り合戦を16-9で制して優勝。恩師、高田裕司・山梨学院大監督(当時)が1974年にマークした「20歳6ヶ月」を44年ぶりに更新し、日本男子史上最年少となる「19歳10ヶ月」で世界選手権優勝を果たした。

2018年世界選手権決勝のあと、脚の激痛で動けなくなった乙黒。満身創痍の世界一奪取だった!

 “天才”の出現に周囲は沸いたが、この快挙は乙黒に大きな試練を与えた。内外の有力選手は当然のように乙黒を徹底してマークし、世界チャンピオンの長所をつぶすことに全精力を注いできた。ディフェンシブな闘いに終始したり、場合によっては反則スレスレの技を仕掛けてきたりすることで、思い切って攻めたい乙黒はストレスをためた。

 けがが多かったこともあり、世界王者になったあとは、2019年の全日本選抜選手権で敗れ、プレーオフを制して出場した世界選手権でもメダルに届かず低迷する。「嫌なことが続いた時期だった」。人一倍負けず嫌いの乙黒は、当時を簡潔な言葉で振り返った。

 何としても負のスパイラルから抜け出さなければならない。乙黒は肉体を追い込むトレーニングもさることながら、普段から冷静さをキープする心のコントロールに気を配るようになった。

持ち味を問われ、「全部できること」-

 「以前は落ち着きがないというか、イライラするというか、そういうことを言われていました。けがの防止という意味で、落ち着いて冷静に、熱くならないように練習から改善していきました。そうしたら(試合での)冷静さも身についた。ひとつ改善したら、二つとも改善できた、という感じです」

コロナによるブランクを経ても強さ変わらず! 圧勝した4月のアジア選手権(カザフスタン)

 この4月には社会人となり、自衛隊の一員となって自覚もより増した。メンタル面を鍛えると同時に、走り込みに力を入れて下半身とスタミナの強化に取り込み、マットの上ではライバルたちの“仕掛けてこないレスリング”を想定してスパーリングを重ねた。

 久しぶりの試合となった4月のアジア選手権(カザフスタン)では、2試合ながら危なげなく勝利して優勝を飾った。もうスランプは完全に克服したと言えそうだ。自らのレスリングの特長を問われた乙黒の言葉が頼もしい。

 「全部できること。攻撃も防御もできるし、タックルも投げもできる。スタンドもグランドもできるし、組み手もできる。一つ一つの精度が高い。それが自分の持ち味じゃないかと思っている」。

 幼いころから夢見たオリンピックを、これほど大きな自信を持って迎えられるアスリートは、なかなかいないだろう。冷静に相手の動きを見据えながら、マットの上をネコのように素早く舞う乙黒の姿が、今から目に浮かんでくる。目標はもちろん、兄弟同時金メダルだ。







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