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2021.08.07

【2021年東京オリンピック・特集】妹の優勝で発奮! 女子史上初の快挙を達成…女子57kg級・川井梨紗子(サントリーグループ・ジャパンビバレッジ)

 

(文=布施鋼治)

 川井梨紗子(サントリーグループ・ジャパンビバレッジ)がオリンピックで2回連続金メダル! 8月5日に行なわれた女子57㎏級決勝で、川井はイリナ・クラチキナ(ベラルーシ)を相手に5-0で勝利を収め、2016年リオデジャネイロ大会63kg級に続いてオリンピックの頂きに立った。

表彰式で感慨深そうに金メダルを見つめる川井梨紗子

日本レスリング界の女子でオリンピックでの2大会連続「金」は、吉田沙保里、伊調馨に続いて史上3人目の記録となった。

 前日には妹・川井友香子(同)が62㎏級で金メダルを獲得しているため、川井は日本レスリング史上初めて兄弟姉妹でオリンピック「金」という快挙も成し遂げた。優勝した直後、マイクを向けられると、妹の優勝が発奮材料になったと打ち明けた。

「友香子に昨日あんな素晴らしい試合を見せられたら自分もやるしかないと思っていた」

 もう一方のブロックで川井の対抗と目されていたオデュナヨ・アデクオロイェ(ナイジェリア)が初戦で逆転フォール負けを喫するという波乱があった。一方、川井はギニアの選手との1回戦こそ、やや堅い動きを見せていたが、尻上がりに調子を上げ、準決勝ではリオデジャネイロ大会53㎏級決勝で吉田沙保里を破って優勝しているヘレン・マルーリス(米国)との初対決を迎えた。

 リオのオリンピック女王対決は接戦となったが、2-1で制した。

「最後の1秒まで相手から目を逸らさない」

 川井は「プレッシャーがなかったらうそになる」と振り返る。「リオのときと比べると、1試合1試合を重く感じていました。ただ、プレッシャーは(自分の)応援になると信じ、それを抱えることができる精神を持たないといけないと思いながら戦っていました」

クラチキナのローシングルを冷静にさばく

 迎えたクラチキナとの決勝。このベラルーシ代表は、今年4月の欧州選手権で優勝するなど確実に力をつけてきており、川井とは初対決。第1ピリオド開始早々、慎重に相手の様子を伺うことなく、川井はいきなりアタック。引き落としてバックを奪うと、そのまま場外まで押し込んで先制点を奪った。

 クラチキナは上半身を上下に揺さぶるフェイントをかけながら反撃のチャンスをうかがうが、川井は相手の動きにつき合うことなく自分のレスリングに徹した。第2ピリオドになると、再び場外押し出しで1点を追加する。その後、クラチキナの変則的なフェイントからのタックルをしのいだと思った刹那、川井は再びバックを奪いスコアを5-0とした。

 残り時間1分を切ったところで、クラチキナはタイミングのいいローシングル。これは決まったかに見えたが、川井はバランスを崩さず1点も与えなかった。

 試合後、川井は自らに課していた課題を明かす。「最後の1秒まで相手から目を逸らさないと決めていました」

 なんという集中力。この日の川井からは勝ち切るだけではなく、守り切る強さも感じられた。試合終了のブザーが鳴ると、観客席から祈るように姉を応援していた友香子に対して「私も、取ったぞ」と言いたげに左右の拳を高々と突き上げた。

レスリングは最高! 帰ったらまた練習か

 優勝記念のインタビューが始まり、いまの気持ちを訊かれると、川井は「やっと一段落」と安堵の表情を浮かべた。「友香子と一緒に金メダルを取れたので、これで安心できる」

優勝を決め、妹ら日本選手団に報告

 リオのときの金メダルとの違いについての質問が飛ぶと、川井は「比べるものではない」と前置きしてから、「2連覇は誰もが目指せるものではない」と語り始めた。「経験している年数や重みが違うので、やっぱり特別だなと思いましたね」

 今後の進退についての明言は避けた。

 「これが最後と思っていると、絶対にすきが生まれると思ったので、そういうことは考えないようにしていました。(今回、全部の試合が)終わったときに自分がどんな気持ちになっているかで決めようと思いました」

 実際に決勝が終わったら?

「レスリングは最高だと思いました。だから、帰ったらまた練習しているんだろう、と」

 26歳の女王は最高の笑みを浮かべた。







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