(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
男子では大会史上11人目という快挙だ。インターハイ最終日。男子71㎏級で山口叶太(東京・自由ヶ丘学園)が優勝し、1年生チャンピオンに輝いた。
決勝は、準決勝で林拳進(全国高校選抜大会3位=埼玉・埼玉栄)を撃破した山路太心(同優勝=和歌山・和歌山北)との一戦。山口はバックの奪い合いを制して2点を先制。その後も場外への押し出しや反則などでポイントを重ね、6-4で勝利をおさめた。勝因を聞くと、山口はケンカ四つでの闘いだったことをあげた。
「自分は左利きで、相手は右利き。片足タックルに入る距離が近く、やりやすかった」
山口は三重県出身。レスリングは3歳から地元の鳥羽・ジュニアクラブで始めた。小学校を卒業するにあたり、東京の中学に進学して自由が丘学園ジュニアに通い始めた。なぜこのクラブに?
「ほかの学校だったら、普通に4時間くらい練習しているところもあると思う。そうした中、自由が丘学園は2時間から2時間半という短い練習時間で質の高い練習ができるところにひかれました」
同じ高校から早大に進学した兄・太一(2019年JOC杯カデット優勝)からは「インターハイでは、戦術をきちんと立てれば、絶対勝てる」というアドバイスをもらっていたという。「決勝に行くことは大前提で、優勝することが目標でした」
兄からはカウンターテクニックに関するアドバイスもあり、それもいきた。「相手がタックルに来たら、いなして逆にバックに回る。団体戦では失敗したけど、個人戦では実践することができたと思う」
組み技格闘技では強くなるために必要不可欠とされる、もつれたときの強さも光った。「そういう状況で足を取られても、僕は失点しないで粘れる。仮にグラウンドになったとしても、もう一回立って自分の形で取ることができる。そこが自分のレスリングの強みだと思います」
夢は大きく、オリンピック出場だ。「敵に1点も与えず、自分からずっと攻めるレスリングを貫きたい」
インターハイ1年生王者になった大先輩である圭祐と拓斗の乙黒兄弟に続け。