(文=布施鋼治)
2019年全日本選手権70㎏級優勝の原口伸(国士舘大卒)がMMA(総合格闘技)ファイターとしてプロデビューを果たした。9月5日、ゴールドジム幕張ベイパークアリーナで行なわれた「Grachan50」で大搗汰晟(総合格闘技宇留野道場)を1ラウンド4分34秒、パウンドの連打によるレフェリーストップで破り、初陣を飾った。
試合後、プロ初ファイトの印象を聞くと、原口は「何ですかね…」と首をかしげた。「緊張とかあんまりなくて、ぶっ倒すことだけを考えていました」
対戦相手の大搗は天理大柔道部出身。試合前は“レスリング対柔道”という見方もあったが、原口は「MMAの選手として進化したところを見せたいと思いました」と振り返る。
案の定、この一戦で原口は相手を寝かせると、パウンド(上からのパンチ)や鉄槌でスタミナを削りにかかる。スタンドではチャンスと見るや、磨きに磨きをかけたタイミングのいいタックルでテークダウンを奪った。
「打撃を見せながら、レスリングの技を使いたかった。相手も、僕にはレスリングの実績があるということで警戒していたと思う。だったら、打撃で(スタミナを)削ることによって、さらに自分のレスリングが活きるかなと思いました」
現在の原口は、先にMMAファイターに転身した兄で同じ国士舘大レスリング部出身の原口央とともに、宮田和幸氏が代表を務める「BRAVE」に所属する。試合前は兄にミットを持ってもらい、パンチやキックの最終確認を怠らなかったという。
「兄からは特に作戦を授かったわけではないけど、『おっ、いいね』という感じで言って、サポートしてもらいました」
その成果はあり、実際にケージ(金網に囲まれた試合場)に入っても、「違和感はなかった」と語る。「レスリングをやっている頃から、(相手を)ぶっ倒すという気持ちで闘ってきました。だから、僕にとってはMMAもレスリングも似たような感じですね」
もっとも、試合後、宮田代表からは「何であのとき、首を極められなかったの?」という厳しい指摘も。途中ジャパニーズ・ネクタイという極め技で首関節を狙ったものの、極めきれなかったからだ。
「宮田代表の言葉は『ここで満足するな』という意味に受け止めています。その言葉を真摯に受け止め、また頑張ろうと思います」
今後も日本でキャリアを積むつもりだが、最終目標はMMA最大のプロモーションである「UFC」の頂きに立つこと。「日本でどこの団体のチャンピオンを狙うというのはなく、UFCに行きたいので、(国内では)結果を求めたい。強い相手をどんどん倒していけば、自ずと国内のチャンピオンベルトは勝手にやってくるでしょう。そうしたらUFCも見えてくると思う」
会場には国士舘大の後輩や友人なども応援に駆けつけた。MMAの次戦は10月31日開催予定の「BRAVE FIGHT」を予定している。