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2021.09.20

【特集】レスリング王国に学ぶ!…JOC海外研修員制度でロシアへ向かった湯元進一コーチ(自衛隊)

 

8月28日、コロナのため閑散とした成田空港からロシアへ向かった湯元進一コーチ。2年間の修業のスタート(提供=日体大・湯元健一コーチ)

 東京オリンピックで乙黒拓斗(自衛隊)のセコンドにつき、金メダル獲得を支えた自衛隊の湯元進一コーチ(2012年ロンドン・オリンピック男子フリースタイル55kg級銅メダル)が8月28日、日本オリンピック委員会(JOC)のスポーツ指導者海外研修員制度でロシア・ウラジカフカス(北オセチア共和国)へ向かった。期間は2年間。

 言葉や食事のみならず、生活すべてが不慣れな中でのスタートだが、約半月が経って生活も一段落したもよう。「現地だけではなく、ロシア国内の多くの共和国に出向いてその地のレスリングに接し、その地域の強さの秘密も知りたい」と希望に胸をふくらませている。

 この制度を使って海外へ行き、指導者としてのノウハウを学んだコーチはこれまでに何人もいるが、フリースタイルの場合は例外なく米国だった。湯元コーチが選んだのはロシアで、ジョージア国境に近い地。東京オリンピックの男子フリースタイル74kg級で金メダルを獲得したザウルベク・シダコフや、同じく86kg級で銅メダルを取ったアルトゥール・ナイフォノフの生まれ故郷。

ロシア語の習得がコーチとしての質の向上につながる

 さかのぼれば、赤石光生コーチのライバルだったアルセン・ファザエフ(1988年ソウル・92年バルセロナ両オリンピック優勝)の出身地。大相撲で活躍した露鵬・白露山兄弟もこの地で生まれ、レスリングをやっていた。

拠点となるレスリング・アカデミーでの練習風景

 湯元コーチは2019年1月のロシア遠征に監督としてチームに同行し、レスリング王国と言えるこの地に強い関心を持った。それが、コーチ留学としてこの地を選んだ背景としてある。「施設の環境のよさや、選手たちのレスリングに対する強い思いを感じました。選手を支えるサポート体制や、オセチア共和国内でのレスリングの地位など、現地の歴史に裏づけられた独自の強化システムが胸に残りました」と言う。

 学びたいことは、3つあった。ひとつは、当然のことながらコーチとしてのスキルの向上。「レスリングは、科学的な理論だけで勝てないのは確かですが、一方で、根性論で勝てるような甘い競技でもありません。ここには、理論でも根性論でも説明できないような、効率的な強化のシステムがあるのではないかと考えました」と言う。

 それを知るには、現地で生活をし、現地のレスリングに対しての地位、環境、コーチの考え、選手の生活基盤(所属、収入)はどういったものなのかを「知る必要がある」と考えた。

2004年アテネ・オリンピックを含め世界V5のハジムラド・ガチャロフ・コーチとともに

 2つ目は、ロシア語の習得。旧ソ連の中央アジアは当然としても、東ヨーロッパの大半は日常会話に不自由しないくらいにロシア語が話せる。コミュニケーションがとれてこそ、本当の意味で学ぶことができる。「コーチとしての幅を広げるためだけではなく、今後の日本レスリングの強化に貢献するには、ロシア語を覚えることが非常に有効だと考えています」と言う。

 そのため、現地の人と身ぶり手ぶりを交えて積極的に話すことのほか、ニュース番組をしっかり見ることも日課のひとつ。11月には家族が現地に来る予定で、それまではロシア語オンリーの生活。家族と合流したあとも、語学マスターを怠るつもりはない。

 3つ目は、前述の通り、ウラジカフカス以外のロシア国内に出向き、ロシア全体の強さの秘密を探ることだ。

アゼルバイジャンやダゲスタンからも選手が来る

 派遣が決まったのは今年2月。しかし、出発前は東京オリンピックで代表選手を勝たせることに集中。カザフスタンでのアジア予選・選手権への参加と帰国後の隔離、バブル方式での代表チーム合宿と続き、準備らしい準備はできず、協会事務局ほか多くの人のサポートに助けられた。その経験は、「自分のためだけの研修ではない。将来、必ず日本協会に還元する」という気持ちにつながっている。出発の準備は、オリンピックが終わってからの2週間で慌ただしくやったという。

市内にあるクラブチームでの練習風景

 現地では、共和国が管理運営している「アスラン・ハダルツェフ・レスリング・アカデミー」(日本の味の素トレーニングセンターのような施設)で生活。現在はアゼルバイジャンの選手や、ロシア内のもうひとつの強豪輩出地、ダゲスタン共和国の選手などが合宿しているという。

 練習は、月・火・木・金がマット練習、その他はウエイトトレーニングなど。基本的に1日1回練習。マットは8面で、多い時は50人程度が一緒に練習している。ウラジカフカスには多くのクラブチームがあり、いくつかのクラブにも連れて行ってもらい、練習も見学した。トップチームだけではなく、底辺のチームの練習に接することでも、得るものもあるだろう。

 9年前のオリンピック・メダリストであっても、顔と名前は知られているようで、時に技術指導も求められる。「レスリングのオリンピック・メダリストの地位の高さを感じますね」と言う。

 日本レスリングの発展のため、この在外研修制度を利用して指導者として選手やコーチが増えてほしいと願っている。コーチ留学を身近なものと感じてもらうため、また現役選手にロシアの練習の一環を知ってもらうため、SNSを通じて練習内容や感じたことを伝えていきたいという。

 レスリング王国からの情熱に満ちたメッセージが待たれる。(空港以外の写真は湯元進一コーチ提供)


▲11月に合流する家族とは、しばしのお別れ(提供:日体大・湯元健一コーチ=右から2人目)

▲現地での食事







2023年世界選手権/激戦の跡
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