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2021.09.21

【2024年パリ・オリンピックへのスタート】初めて「悔しい」と思いながら観戦した東京オリンピック…女子76kg級・松雪泰葉(至学館大)

 

(文=ジャーナリスト・粟野仁雄)

松雪泰葉(至学館大)

 久々に至学館大のレスリング道場で写真を撮っていたら、間違っていると気づいたのだろう、栄和人監督が「それ、成葉(なるは)だよ。泰葉(やすは)は、あっち、あっち」と遠くを指差した。双子はやはり似ている。区別がつかない。

 10月2日に始まる2021年世界選手権(ノルウェー・オスロ)に、女子最重量級(76kg級)で初出場するのは姉の松雪泰葉。妹・成葉は2018年大会(ハンガリー)に出場しており、3年遅れての晴れ舞台だ。

 昨年12月の全日本選手権では、決勝で2つ年下の鏡優翔(東洋大)に終了間際の逆転劇で敗れた。しかし、今年5月の全日本選抜選手権では鏡にリベンジ。その後に実施されたプレーオフも5-0で制し、初の世界選手権の代表となった。「栄監督栄希和コーチがマットサイドでアドバイスしてくれ、力が出ました。ノルウェーでも頑張ります」と意気込んだ。

家族総出で2008年北京オリンピックへ

 愛知県刈谷市出身。レスリング一家と言っていい。父・昌浩さんはアイシン精機(現アイシン)の選手として全日本社会人選手権も出場し、その後は刈谷クラブのコーチへ。兄・泰成(専大~レスターホールディングス)は男子フリースタイル86kg級で大学王者に輝き、妹・成葉(前述)も68kg級のトップ選手。

女子重量級の再興を目指し、世界選手権へ出場する松雪泰葉=筆者撮影

 「レスリングは、父の影響で3歳から刈谷クラブで始めました。兄とマットで遊んでいただけですが」。2008年北京オリンピックには、母・英子さんも含めて家族総出で応援に行った。吉田沙保里、伊調馨という、のちに大学の先輩になるレジェンドのオリンピック連覇を8歳にして目の当たりにしたのだから、驚くというか、うらやましいというか。

 「刈谷クラブの練習で、時々、至学館大の道場に行きました。沙保里さんや馨さんは、遊んでくれるお姉さんという感じでした」。

 だが、この頃から姉妹は母に「いつかオリンピックに出て、『やすはー! なるは!』って応援されたい」ともらすようになったと言う。

中学から至学館大のレスリング場で練習

 刈谷市の朝日中学へ進むと、週末は至学館大学の道場に通って練習し、全国中学選抜選手権などで優勝。至学館高校へ進み、2年時の2016年には、全日本選抜選手権で2位に躍進し、インターハイと世界カデット選手権で優勝。ジュニアクイーンズカップは、階級は変えながらも4連覇し、世界ジュニア選手権は2016年から2位、3位、3位、U23世界選手権は2017年優勝と、コンスタントに世界の上位に顔を出している。

2014年全国中学生選手権で優勝=撮影・矢吹建夫

 11月に22歳になる。18年ものマット生活にも、「本当にやめたいと思ったことはありません」。全日本選抜選手権では、残念ながら68kg級で妹の成葉が宮道りん(日体大)に敗れ、姉妹そろっての世界選手権出場はならなかった。「妹の分も頑張らなきゃ」と言う。
 
 北京オリンピックのあと、高校2年生のときの2016年リオデジャネイロ大会に75kg級代表の渡利璃穏選手の練習パートナーとして参加した。リオデジャネイロ・オリンピックまでと、東京オリンピックとは、先輩の試合を観戦するときの気持ちがまったく違ったそうだ。

 「リオまでは、『いつか出たいな』くらいでしたが、今回は自分が出られなくて悔しいという気持ちでした。パリ・オリンピックには絶対に出るぞ、って思いました」と、心境を吐露してくれた。

世界との差が大きくなった重量級だが…

 東京オリンピックの日本代表選考対象だった2018年全日本選手権は2位、翌年の全日本選抜選手権は、ともに皆川博恵(クリナップ)に敗れた。夢舞台は十分、視界にも入っていたが、オリンピックの切符を手にしたのは皆川。「私、皆川さんには6戦全敗なんですよ」。

今年5月の全日本選抜選手権決勝で鏡優翔にリベンジした松雪。プレーオフでも勝って世界選手権へ出場する

 東京オリンピックでの皆川は、3位決定戦まで進んだが、北京大会の浜口京子以来のメダルには手が届かなかった。世界との差は大きい重量級。日本代表には、その差を縮めることが義務づけられる。

 松雪の場合、まずは勝ち取った世界選手権の大舞台で飛躍することが目標。その後は、ベテランが復帰すれば「6連敗返上」であり、鏡優翔をはじめとした同世代のライバルを倒し続けることだ。

 「得意技はないけれど、自分のスタイルを徹底させていきたい」。スタイルの内容を聞くと「あまりタックルする方ではないですけど、相手を横へ振って、片足を取って攻めていくのが多いかな。前に出ることを常に心がけたいです」と説明してくれた。

 日本期待の最重量レスラー、松雪泰葉にとって、初めて「悔しがって観戦したオリンピック」だった東京オリンピックこそが、世界へ羽ばたくべき「最大のバネ」になる。







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