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2021.09.29

【特集】草の根レベルの強化が開花、再び高校女子の頂点を目指す!…愛知・至学館高

 

インターハイを制した山口夏月(左)と森川晴凪=撮影・矢吹建夫

 今夏、新型コロナウィルスの感染拡大がピークだったにもかかわらず、「高校生選手にとって貴重な場」として、厳重な感染予防対策のもとで行われたインターハイ。レスリング女子では、愛知・至学館高が5階級で決勝に進出し、50kg級の森川晴凪(2年)、57kg級の山口夏月(3年)、68kg級の北出桃子(1年)の3選手が優勝という快挙を成し遂げた。

 至学館高は、オリンピック・チャンピオンを次々と輩出している至学館大と一緒に練習しているので、こちらも「強豪」というイメージがある。だが、同高がインターハイで3階級を制したのは初めて。2階級で勝ったこともない。

 前身の全国高校女子選手権のときにこそ3階級以上で優勝したことはあり、高校女子の頂点にいたと言える。インターハイで実施されるほど女子が普及すると、戦力が均衡化。2016年に東京・安部学院高がJOCエリートアカデミー2選手を含めて4階級で勝っているものの、どの高校も複数階級を制するのは至難の業となっていた。2018・19年大会は7階級の優勝を7校で分け合った。

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 昨秋、若い栄希和コーチが就任し、選手に寄り添った指導が始まった成果もあるだろうが、全日本の指導を離れた栄和人監督が、草の根レベルでの育成に全力を尽くし、選手を育てた結果とも言える。57kg級を制した山口夏月主将(埼玉・WAKO少年少女クラブ出身)は、小学生時代に全国一はなく、中学でも全国4位が最高。2019年インターハイはベスト8の選手。

 同監督は「埼玉から、『強くなりたい』とウチに来てくれた。そんな選手を大切に育てていきたい」と話す。全日本チームの指揮は外れたが、若い選手を育て、日本レスリング界のために貢献しようとする気持ちは変わらない。「高校生にも、『いつかは世界チャンピオンになるんだよ、オリンピックに出るんだよ』と言っています」。以前と変わらない情熱で毎日の練習に臨んでいる。

無名の小中学時代から高校チャンピオンへ…山口夏月

 山口は「全国で優勝するのは初めて。ずっと目標にしていたので、とてもうれしいです」と振り返る。年下の選手が多かったので「優勝しなければならない」という気持ちだったと言う。決勝の相手の浅野稔理(神奈川・慶応女子)は6月の関東高校選手権を制した選手。試合で闘ったことはないが、至学館に出げいこに来て練習したことがあり、互角だった。

初の全国一を機に、飛躍を目指す山口夏月

 初対戦でも接戦となり、コーションによる2点しか取れなかったが、2-0のスコアで勝利。技をかけてのポイントが取れなかったことに不満は残っても、「最後まで前に出ることを忘れずに攻めたことがよかった」と振り返った。

 埼玉から愛知の高校に進んだのは、全国一になって世界でもトップの選手になりたかったから。「世界一の選手を輩出しているチームに加わることで、その思いが実現に近づくと思いました」と言う。

 中学時代までは、世界で闘うあこがれはあったものの、それほど強い気持ちではなかったようだ。「朱に交われば、赤くなる」のことわざ通り、至学館で世界一の選手に接することで、その気持ちがはっきりしてきた。「オリンピック・チャンピオンから学ぶことが多くありました。『勝つ』という気持ちが強い。自分もその舞台に立ちたい。そのために、まずインターハイで優勝する、という強い気持ちを持てました」

 次の試合出場予定は12月の全日本選手権。至学館の“黄金階級”である57kg級で、何らかの形を残せるか。

全日本チャンピオンとの連日の練習で実力アップ…森川晴凪

 一方、50kg級を制した森川晴凪(はるな)は、吉田沙保里さんの出身、三重・一志ジュニア教室から至学館高へ進んだ選手。2019年にはジュニアクイーンズカップ、全国中学生選手権、全日本女子オープン選手権、U15アジア選手権で連続優勝したレスリング・エリートだ。しかし、今回のインターハイは“天敵”がいて、強い覚悟をもって臨まねばならなかった。

吉田沙保里さんの後を追う森川晴凪

 その選手とは、すでに全日本選抜選手権で3位という実績をつくっている1学年上の坂本由宇(東京・帝京高/JOCエリートアカデミー)。小学校時代での最初の試合に勝ったあと、「何連敗もしている」という苦手な相手だ。2回戦での激突なので、負ければメダルを手にできない。

 結果は3-1の勝利。ここを勝ち抜いたことで、優勝が大きく見えてきた。苦手選手に勝てた要因を聞くと、「同じ階級の全日本チャンピオン(吉元玲美那)と毎日練習していますから」と答えた。必死にぶつかって行く毎日の中から、「粘り強さが身についていきました」。強豪との練習の中で実力をアップさせていった。

 吉田沙保里さんの応援で2008年北京と2012年ロンドンの両オリンピックに出向いている。北京大会のときは4歳で確かな記憶はないが、ロンドン大会のとき、吉田さんの姿がかっこよく、「自分もここでやってみたいと思った」と言う。故・吉田栄勝さんの指導は「厳しかったです。泣くのをこらえることが多かった」としみじみ。

 吉元の上には須﨑優衣(早大)がいて、世界一は遠い場所にあることは十分に理解している。それでも、世界トップ選手が多く汗を流す環境で練習していれば、「絶対に上に行ける」という信念を持ち、次の目標へ向かう。







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