【オスロ(ノルウェー)、文・撮影=布施鋼治】「3位決定戦はテクニカルフォールで勝つ、という強い気持ちで挑みました。自分のイメージ通りの試合ができたかなと思います」
大会第2日(10月3日)、男子フリースタイル61㎏級で長谷川敏裕(日体クラブ)が3位決定戦で2018年世界選手権3位のツブシンツルガ・ツメンビレグ(モンゴル)を12-2で撃破。銅メダルを獲得した。
「(試合前から)3位以内には入れると思っていました。本当は1番になりたかったので、うれしさ半分、悔しさ半分。優勝者だけがもらえるチャンピオンベルトがほしかった」
もっとも目立った活躍を見せてくれたのは、9-5で勝利したラフマン・モウサ・アモウザドカリリ(イラン)との2回戦だろう。「内容的にはそんなによくなかったけど、イランの選手は世界的にも注目されている選手。ここで勝てば、自分に流れが来ると思っていました」
勝負の分岐点は、長谷川の持ち味である低いタックルを執拗に狙い続けたことだった。「自分のスタイルを貫けば、勝てるかなと思っていました。イランの選手は差しが強い選手で、動画をチェックしても『絶対差される」と想定していました。だから、差されてからどう対処するかをすごく考えていました。しのいで、しのいで、相手がちょっとばてたところで攻めたことが功を奏したと思います」
長谷川は2018年の57㎏級U23世界王者。そのときに破った選手には、東京オリンピックで銀メダルに輝いたラビ・クマール(インド)もいる。「自分がオリンピックの舞台に立っていたら、どうなっていたかな、ということは考えました。今回は初めて(シニアの)世界選手権に出場することで、自分のレベルが世界のどのあたりにあるのかを知りたかった」
練習や試合を離れても、レスリング三昧の生活だ。週2回、山本KID徳郁(故人)が興した東京の「クレイジービー」でキッズ・レスリングを教える。「キッズたちは、僕がメダルを取ったことを(インタビューの時点で)まだ知らないと思うけど、今回の僕の試合を見て、もっとレスリングを好きになってもらいたい。教えていると、逆に僕が小さい子からレスリングを楽しむことを教わってばかりいるんですけどね」
今後はオリンピック階級の57㎏級に落とすか、このまま非オリンピック階級の61㎏級で闘うか思案中ながら、次の全日本選手権はこの階級で出場するつもりだ。
「世界3位になったことで、これからマークがきつくなってくるはず。持っている技に磨きをかけるとともに、新たな技も身につけたい」
これまで地味強のイメージが強かった25歳。シニアの世界で初めて存在感を示したか。