世界カデット選手権3位、レスリング育ちの田中志歩（山口・ファイブ☆スター出身＝JR東日本）が柔道無差別で日本一へ！

2015年世界カデット選手権で3位に入賞した田中志歩＝撮影:UWWオフィシャルカメラマン、保高幸子

　体重無差別で争う柔道の全日本女子選手権（12月25日、東京・講道館）で、レスリングで世界カデット選手権3位に入賞経験のある田中志歩（JR東日本）が優勝した。70kg級の選手ながら、大会では通常体重で40kgも重い最重量級の選手を破っての快挙。重量級以外の選手の優勝は35年ぶりとのこと。

　同選手は、柔道経験のある父と兄の影響で、5歳から山口・田布施スポーツ少年団で柔道を始め、小学校5年から徳山大学内のジュニアアスリート・アカデミー「ファイブ☆スター」の一期生としてレスリングにも取り組んだ。山口・聖光高では、学校の部活動は柔道部に所属してインターハイ・チャンピオンとなる一方、週3回ほどレスリングをやっていたという。

　レスリングでは、2014年JOCジュニアオリンピック・カデット65kg級で優勝。このときの決勝の相手が松雪泰葉（愛知・刈谷クラブ＝現至学館大）。同年の全日本選手権出場も果たしている（注＝当時は16歳でも出場できた）。

　翌2015年のジュニアクイーンズカップ・カデット65kg級では、決勝で森川美和（東京・安部学院高＝現日体大）を倒して優勝。この優勝でボスニアヘルツェゴビナで行われた世界カデット選手権の代表となり、銅メダルを獲得した。このときのチームメートには、東京オリンピック優勝の須﨑優衣（JOCエリートアカデミー／東京・安部学院高＝現早大）や、世界選手権3位の南條早映（同＝現至学館大）がいる。

マットを下りると、「優しいお姉さん」

　その後は柔道に絞り、1992年バルセロナ・オリンピック金メダリストの古賀稔彦氏（故人）が総監督を務める環太平洋大学へ進学。講道館杯で2連覇を達成するなど活躍し、今年4月からJR東日本で柔道を続け、2024年パリ・オリンピックを目指している。今回の優勝に際し、メディアに「レスリングはマット運動がたくさんあって体幹が鍛えられる。大きな相手にも軸がブレないところが（柔道に）生きていると思います」（東京スポーツ）と話している。

2015年ジュニアクイーンズカップ（京都・舞鶴市）で優勝

　ファイブスターの柴田寛代表（東京農大OB）は「小学6年生の全国少年少女大会では1回戦開始から1分程度でテクニカルフォール負けし、ほろ苦いデビューでしたが、その後、持ち前の負けん気で努力を重ね、2014年のJOC杯カデットの部で初優勝。2015年のジュニアクイーンズカップでも優勝し、世界カデット選手権では3位に入賞しました。週1～2回の練習で世界のトップクラスへと駆け上がりました」と、卓越した格闘能力を振り返る。

　マットを下りると、「小さい子たちへの面倒見がよく、優しくて、ちょっと天然のお姉さん」とのことだが、いざマットに上がると、「闘志を前面にむき出して闘い、その姿が百獣の王ライオンのようで印象的です」と言う。

　大学進学に際し、柔道を選択することになったが、同代表は変わらぬエールを送り続け、ユニバーシアードをはじめ国際大会でも活躍する姿がうれしかったと言う。

パリでは柔道で金メダル、ロスではレスリングで金メダルを！…柴田寛代表

　今後はパリ・オリンピックの最有力選手として注目されことになるが、同代表は「しっかりと代表権を勝ち取り、パリで金メダルを獲得してほしい」と期待。

2015年世界カデット選手権女子チーム。後列右端がファイブ☆スターの柴田代表、右から3人目が田中

　一方で、その後はレスリングに転向し、2028年ロサンゼルス・オリンピックではレスリングでも金メダルを取り、「これまで日本人でだれも成し遂げていない、夏季オリンピック2種目での金メダリストを目指してほしいと思います」と続けた。

　ファイブ☆スターは、日本オリンピック委員会（JOC）が運営しているエリートアカデミーの山口県版として、2010年に全国で初めてスタート（関連記事）。全日本選手権22回出場の最多記録を持つ同代表が、ジュニア選手育成に情熱を注いでいる。同クラブからは、小野弘運選手（山口・鴻城高～徳山大）が西日本学生王者に輝き、2019年全日本選抜選手権で2位に躍進している。（下写真は、柔道に進んでも帰省の際にファイブ☆スターに顔を出してくれる田中志歩＝柴田代表提供）