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2022.03.08

【特集】難関入試にもかかわらず50年近く続く歴史! 全中王者だった有川将史・前主将が東大レスリング部の存続をアピール!

 

(文=布施鋼治)

有川将史・前主将(前列中央)の努力もあり、例年になく部員が多い東大レスリング部

 「僕が3年生のとき(2020年度)、新型コロナウィルス感染の影響もあって、新入生が一人も見学に来なかったんです。それで部員が4人に。廃部の危機を感じて、今年(2021年度)は、ツイッターなどのSNSに張りついて新勧(新入生勧誘)を試みたところ、なんとか興味を抱いてくれ入ってくれる人が出てきた。じわじわ増えて、部員数は3倍になりました。4月からの新学期は、最初から10人の部員で始められるかもしれない。東大レスリング部としては何十年ぶりの多人数ですよ」

 2月中旬、東京大学・駒場キャンパス。レスリング部の練習を見ながら、前主将の有川将史さん(3月で卒業)は目を細めた。

 創部は1973年で、来年には創立50周年を迎える。その歴史は紆余曲折の連続だった。

 「昔は常設マットが敷かれた道場があったけれど、そこが取り壊されてしまった。そして、練習も毎日できたのに、週2回になってしまったという歴史があるんです」

後輩に技術指導する有川・前主将

 一方で、福田富昭・日本協会名誉会長が部の強化にかかわった歴史もある。

 有川さんは、2005~10年に全国少年少女選手権6連覇、2013年に全国中学選抜選手権73kg級で優勝するなどの強豪選手(関連記事)。東大レスリング部の中では唯一の経験者だっただけに、大学2年の途中から主将を任された。

 まず部の練習メニューの改革に取り組んだ。「昔の記憶を辿ったり、他大学へ出稽古に行かせて頂いて、そこで得たものを部に還元しました」

 それでも、最初は苦難の連続だった。「大学2年から部全体のことを考えるのは大変でした」

YouTubeにチャンネルを開設し、技術を伝承し続ける

有川主将が開設しているYouTubeチャンネル。初心者に役立つ技術動画を更新し続けている《クリック》

 かつては、茨城大、新潟大、群馬大にも存在した国公立大学のレスリング部。現在は東大と防衛大のみになった(4月からは周南公立大=現徳山大が加わる)。有川さんは日本の最難関としても知られる大学にレスリング部があること自体、奇跡だと感じている(関連記事)。

 「その存在は、レスリング界にも絶対に影響があると信じています」

 コロナ期間で廃部の危機を迎えた中、部員を増やすと同時に、未経験者がほとんどの東大でレスリングを学ぶやり方を確立させる必要がある。そう感じた有川さんは自ら詳細な技術チェック表を作成した。そして練習から基本技術に至るまで、一人ひとりが意識してレスリングと向き合えるように試みた。

 「自主性を重んじるやり方。自分でチェックしながら、レスリングの技術を習得できるやり方にしました」

両足タックル初級の技術講座

 チェック表だけではない。今年になってから有川さんは、①レスリングの裾野を広げること、②東大レスリング部の存在を多くの人に知ってもらうこと、の二つを目的に、YouTubeに『チャーミーちゃんねる』なるチャンネルを開設。レスリング初心者に役立つ技術動画を更新し続け、文字だけではなく映像を通してもレスリングの理解度を深めてもらうようにした。

 「小さい頃からレスリングをやっている人には、たぶん意識してないこと(基本技術など)がたくさんあるんです。自分もそうで感覚で取り組んでいました。でも、そのやり方だと、後輩たちがうまくならない。大学や社会人からレスリングを始めた人は、体で覚えるより先に頭で理解することの方が多いですからね。ぜひチャンネル登録お願いします!『東大レスリング部』で検索してください(笑)」

初心者集団だが、強さを求めるだけがレスリングではない

 技術チェック表を取り入れてから、想像以上に部員たちの吸収は早いようだ。

練習は柔道場を間借りして週2回、行われる

 「まず、レスリング全体の中に、どんな技があるのか。そして、それらの学習における優先順位はどうなのか。そういった全体像を理解した上で部分を理解する。すると、何ができていて、何ができていないかがよくわかります。受験勉強と同じです」

 有川さんはリーグ戦の改革を訴える。

 「5月は入部したての選手が多い。あるいは、まだ大学生活に慣れていなくて、部に入ってもいない学生が多い。リーグ戦の時期が9月から10月だと、新入生がもっと多くリーグ戦に出られると思います。また新人のために、新人戦のBグループ(主に大学入学後に競技を始めた選手のトーナメント)の階級を増やしてほしい。メダルを手にすれば、やる気が違ってきます。そういった枠が減少している現状は、残念です」

2022年度の東大を伊藤辰光主将(左)に託す有川・前主将

 4月からの新主将は、4年生になる理学部の伊藤辰光選手が務める。伊藤主将は「東大レスリング部は他の大学と比べて特殊」と感じている。

 「初心者ばかりで、留学生も多い。しかも練習は週2回。(競技として考えると)いい条件ではないけれど、僕みたいに週2回の練習という部分にひかれて入ってきた人もいる。歴代の先輩たちもこの条件でやってきた。僕も、5月の東日本リーグ戦には出ようと思っています」

 レスリングは、強さだけを追い求めるべきものではないはず。勉強の合間のレスリングであってもいい。取り組む目的は何であっても、レスリングに接する人が多くなり、レスリングの価値と魅力を知る人が増えてくれることが望まれる。

 有川さんは、社会人になってからも、OBとして節度を保ちながら東大レスリング部と接しようと思っている。

▲有川主将の技術を末永く伝授できるよう動画を撮影し、後輩へ伝える

▲練習の前後にはマットの上げ下げという環境。それでも部は存続し続けてきた







2023年世界選手権/激戦の跡
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