【2022年ジュニアクイーンズカップ・特集】日本屈指のハイレベル階級（女子53kg級）で台頭！ 今年は世界へ飛躍する年…尾西桜（埼玉・埼玉栄高）

（文＝布施鋼治／撮影＝保高幸子）

　2022年ジュニアクイーンズカップ最終日に行われたＵ17の53㎏級は尾西桜（埼玉・埼玉栄高）が連覇を達成した。高校２年生になったばかりのチャンピオンは「今回は減量が結構苦しかった」と振り返る。「（リミットまで）ギリギリだったけど、リカバリーをきちんとすることができた。練習でやってきたことを全部出すことができました」

昨年に続く優勝に、にっこり笑顔の尾西桜（埼玉・埼玉栄高）

　湊莉菜（帯広・帯広北高）との決勝では、試合開始早々、相手の体をコントロールしてバックを奪い続け、31秒であっという間にフォール勝ち。尾西は冷静な口調で「練習ではいろいろなシチュエーションを想定してやっていて、どういう相手が来ても対応できるように、バランスよくいろいろな相手とやるように心がけました」と思い返す。

　「決勝では、四つ組みから崩すテクニックを使うことができました」

　2歳上の兄・尾西大河は昨年12月の全日本選手権・男子グレコローマン55㎏級で高校生ながら3位に入賞した逸材。今春、佐賀・鳥栖工高から早大に進学した。３歳のときから兄の影響を受ける形でレスリングを始めた尾西は、大河が上京してきたことを喜ぶ。「住んでいるところも近くなったので、頻繁にレスリングについてのやりとりをしています」

　兄弟仲がいいんですねと突っ込むと、尾西は「いやぁ…」と頭をかきながら照れた。

　「仲がいいというより、自分が一番尊敬しているというか、兄のレスリングをいろいろな面で真似しています。ですから、得意なテクニックはすごく似ています」

背中を追った兄と分かれて埼玉栄高を選んだ

　尾西は、中学までは兄と同じ鳥栖中学に通っていたが、卒業を機に埼玉栄高に進学した。故郷（福岡）から遠く離れた学校を選んだ理由を聞くと、尾西は「木島桃子先生がいたから」と即座に答えた。

決勝は10－0からのフォール勝ち。実力を見せた

　「先生は私のことを小さい頃から知っている。信頼度が厚いので、以前から指導を受けたいと思っていました。それに埼玉栄は男女共学なので、男子の力にも耐えられるような練習もしたいなと思い選びました。自分を成長させてくれる場だと思っています」

　2018年の全国中学生選手権を制したあと、出る大会はすべて優勝という強さを見せつけたが、昨年のインターハイでは久しぶりに辛酸をなめさせられた。決勝では、のちにシニアの世界選手権でも優勝する藤波朱理（三重・いなべ総合学園高＝現日体大）に0－10のテクニカルフォール負けを喫した。

　「藤波選手にボコボコにされ、上には上がいることを思い知らされました（苦笑）。いま自分がいるカテゴリー（Ｕ17）で勝つことは基本（ベース）。早く全日本選手権にも出場できるようになって、シニアの世界で自分がどこまでできるのか確かめたい」

オリンピック女王と世界女王の壁に挑む！

　藤波はこの日、Ｕ20の53㎏級に出場し、ぶっちぎりの強さを見せつけ優勝。今月19日からモンゴル・ウランバートルで行われるアジア選手権へ出場する。現在の藤波と比べると、尾西は「すべての面において負けている」と肌で感じている。

昨夏のインターハイでは藤波朱理と対戦。開始早々、積極的に攻めた尾西（青）だが、最後は完敗した

　「体力でも技術でもスピードでも、自分より上。（これから追いつくためには）バランスよくあらゆる面を鍛えていく必要があると思う」

　昨年は、コロナで日本は派遣なしだっため、世界カデット選手権に出場することができなかった。今年は、今回の優勝で７月下旬にイタリア・ローマで開催されるＵ17世界選手権に出場することができそうだ。

　「国際大会に出て自分の経験値を上げたい」

　オリンピックの金メダリストが向田真優で、世界＆全日本チャンピオンが藤波。海外より国内で勝ち抜くことの方が難しい階級で、尾西は新風を吹かせることができるか。