(文=谷山美海/撮影=保高幸子)
2022年ジュニアクイーンズカップのU20-55kgは、この春から育英大に進学した清岡もえが制した。2018年にはU-15アジア女子選手権(埼玉・富士見市)をはじめ、出場した全5大会で優勝。2019年世界カデット選手権女王という経歴を持つ期待の新人が、快進撃を続ける育英大のさらなる勝ち頭となるか。
試合後、「優勝するのは久しぶりでうれしいんですけど、ホッとした気持ちが大きいです」と安堵(あんど)の笑みを見せた清岡。昨年のこの大会では2回戦で櫻井つぐみ(育英大)、インターハイでは初戦で藤波朱理(三重・いなべ総合学園卒=現日体大)という飛ぶ鳥を落とす勢いの強豪とぶつかり、ともに上位進出できなかった。
「中3、高1の時はずっと勝てていたのに、去年はぎりぎりで負けるとかじゃなく、ボコボコにされて負けてしまって…。組み合わせのせいにするのも悔しいけど、練習では強くなっている手ごたえがあっても、試合になると自分が強くなっているのか分からなくなっていました」。
今回勝てた要因は「勝って絶対に全日本選手権に出るんだ、という気持ちと、決勝でも強みの組み手とスタミナを活かして闘えたこと」と言う。大野真子(日体大)との決勝は、組み手で相手を嫌がらせ、後半、相手の体力が切れてきた頃に果敢に攻めるという得意の試合展開に持ち込むことに成功。得点を重ね6-1で勝利した。
「試合が始まったときに腕を取られて固められてしまったのは反省」と課題を口にする一方、「点をやらずに粘れた。そこを守り切れたのはよかった」と収穫も。4試合を闘い失点は決勝でのコーションによる1点のみと、守りの強さが光った。
高知・高知南高から育英大に進学した。高知クラブから高知南高、育英大という進路は、昨年度の世界選手権(ノルウェー)で同大学から初の世界チャンピオンに輝いた櫻井つぐみと同じ。進学してからは居残り練習で技術面のアドバイスをもらうことも多いと言う。久々の試合に不安を隠せずにいると、「ビビりすぎ。ビビったらいかんで」と同郷の土佐弁で喝を入れられた。
「二つ上の兄(幸大郎=日体大)とつぐみさんが同い年で幼なじみなんです。一つ上のはなのさん(櫻井=育英大)も、みんな3、4歳頃からレスリングを始めていた。私は、最初は見ているだけで、ちゃんと練習を始めたのは小学校1年生の時ぐらいでした」。
現在は櫻井つぐみと二人暮らし中。在籍人数が増えてチームの宿舎に人が入り切らず、2人だけ別のところに住んでいる。「なぜ、その2人?」と聞いてみると、「つぐみさんが選んでくれた…んですかね。分かりません(笑)」と照れを見せたが、気心の知れた世界女王との生活が、地元を離れたばかりの清岡の支えになっていることは間違いない。
今年の育英大は女子が3名、男子が11名入部。高校までは同級生にレスリング部員がおらず、寂しい思いをしてきたと言うが、「一緒にレスリングをする同級生がたくさんいるのが、大学に入って本当にうれしいこと。環境が変わる不安よりも楽しみ」とにっこり。実力のある女子選手がそろっているが、やはりその中でも目標となるのは「つぐみさん」だ。
「世界で優勝していることもあって、もちろん強いです」と前置きをしつつ、「高校で一緒にやっていたときと比べたら、勝負はできるようになってきているんじゃないかな、と思います」と確かな手ごたえを感じている。
「追い越すところまではいけていませんが、早くつぐみさんに追いつきたいです」
育英大史上2人目の全日本、そして世界チャンピオンとなれるか。