日本レスリング協会公式サイト
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2022.06.02

【特集】競技者でも指導者でもない新たな道、ジェンダーフリーな審判委員会へ向けて、「求む!女性審判員」

 

(文=谷山美海/撮影=保高幸子)

ジェンダーフリーを目指して行動を起こした女性審判員。左から寺尾唯、正田絢子、古里愛里の各審判員=2022年4月のジュニアクイーンズカップ(以下、同じ)

 「2017年の山形インターハイで、当時高体連レスリング専門部の審判長だった沖山功先生(現香川・香川中部養護学教=審判員として2016年リオデジャネイロ&東京オリンピックに参加)に『ジェンダーフリー(従来の固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に、自らの能力を生かして自由に行動・生活できること)な審判委員会を作りたいので一緒に頑張りましょう』と言われたのをずっと覚えています。男女関係なく活躍できる審判委員会の実現を目指しています」(古里愛里審判員=茨城・東洋大牛久高教)

 国際オリンピック委員会(IOC)の理念のひとつである男女平等の実現へ向け、2021年の東京オリンピックでは、約1万1000人のアスリートの女性参加比率が49%にまで達した。「ジェンダーバランスが取れた史上初の大会」として注目を集めたことは記憶に新しい。

 その波は日本レスリング界にも例外なく及び、昨年度、創立85年目にして東日本学生連盟に初の女性学生委員長が誕生したことに続き(関連記事)、今年度は西日本学生連盟の学生委員16人中、女子学生が11人を占めるなど(関連記事)、男女共同参画を推し進めている最中。学生に続けと、女性の参画と登用の促進・拡大を目指すのが日本協会の審判委員会だ。

今年5月11日、トルコで世界16ヶ国の女性審判員を集めて行われた審判クリニック。UWWはジェンダーフリーへの努力を続ける=UWWサイトより

 レスリングの審判資格には、国内審判C~A級、国際審判3~1S級と7つのカテゴリーが存在する。全日本選手権を裁ける資格となるA級ライセンスを持つ女性は、昨年昇級した2人を加えて現在8人。男性のA級審判員が209人であることを考えると、ジェンダーバランスの偏りはまだまだ大きい。

 1981年に日本で初の女性レフェリー(大阪・吹田市民教室の前田佳子さん)が誕生して以来、多くの女性が審判員として活躍してきたが、そのほとんどが結婚・出産を経て子育てに追われ、活動から退いてきた。一方、2015年の東日本学生春季新人選手権では、活動再開を望む授乳期の女性審判員が子どもを連れて大会に参加するなど(関連記事)、少しずつ体制は変化してきている。

 今年4月からは育児・介護休業法の改正もスタートし、「子育て=女性のもの」という価値観は刷新されつつある。「ジェンダーフリーな審判委員会」の実現は急務と言えよう。

日本人女性初のオリンピック審判員を目指す3児の母…古里愛里

 全日本女子連盟の審判長を務める古里さんは、上は中学1年生、下は3歳になる子を持つ3児の母。国際審判の3級資格を取得しており、東京オリンピックにも携わるなど、第一線で活躍中だ。

3児の母であり、国際審判員としても活動する古里愛里さん

 「家族や周りの応援あってこそ」の私生活との両立。決して簡単ではないが、県大会では子ども連れを快諾してもらうなど、運営側のサポートの存在も大きい。「いろんな人に出会えて、審判員をすることによって世界が広がるのは幸せ」と、大変な中でも楽しんで活動していると言う。

 目標である日本人女性初のオリンピック審判員になるべく、選出基準となる国際1S級までの昇級を目指すが、審判員に興味がある女性関係者には「もっと気軽に」と呼び掛ける。

 「女性には難しい、という声もあったけど、そうじゃないことを示したい。競技引退者や指導者だけではなく、子どもがレスリングを始めてルールが知りたいお母さんも大歓迎です! ぜひ、一緒にやりましょう」

世界選手権を4度制した元女王も「審判としては新米」…正田絢子

 昨年A級に昇級した女性審判員の一人が、現行ルール下における世界女王として最年少記録(17歳10ヶ月9日)を持ち、今年度から日本協会のU-20女子コーチを務める正田絢子さん(京都・丹後緑風高教)

世界チャンピオンにして審判の道を歩む正田絢子さん

 「新たな目線を手に入れるチャンス」と審判員資格の取得を決め、女性の参画促進に対しても、「女性が…、みたいな意見があるのは確か。だからこそ、やらないといけない」と意気込む。

 「審判としては新米なので、すべてが新鮮。一瞬も気を抜けないので、選手でやっている方が気楽でした(笑)」と、気を張る場面も多いが、選手時代に納得いかなかった判定も理解できたと言い、選手・指導者の目線からもルールへの深い理解の必要性を感じている。

 「選手としても指導者としてもスキルが上がるので、ぜひ審判員の勉強をしてほしい。競技を続行しない選手にも、指導者だけじゃない、もう一つの道があることを知ってほしいです。審判や補助員がいないと試合はできないので、現役引退後も何かしらの形で関わってくれる人が増えるとうれしいですね」

普段はバスケットボール部顧問 審判活動で「未来ある子たちの力に」…寺尾唯

 正田さんと同じく昨年A級に合格した寺尾唯さん(静岡・相良高教)は、日体大卒業後は地元の高校で教員を務めている。今年度から赴任した学校にはレスリング部がなく、普段はバスケットボール部の顧問をしている。

大学卒業後、地元に戻って審判の道を選んだ寺尾唯さん

 周囲の勧めもあり、「幼稚園から18年間レスリングをやってきて、運営や審判をやってくださる人がいたから大会に出られた。未来ある子たちの力に少しでもなりたい」と審判資格を取得し、現在もレスリング活動に携わっている。

 「試合中ずっと走らないといけないので…(笑)」とバスケットボールの指導者資格の取得予定はないとのことだが、レスリングのレフェリング技術向上への気合いは十分。「選手は試合にかけています。責任ある役割だなと感じています。まだまだ勉強不足ですが、経験して吹いて自分のスキルを上げていきたいです」

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 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)にも「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」とあるように世界全体で推し進められているこの課題。世界経済フォーラム(WEF)が2021年3月に公表した、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数で156カ国中120位であることからも分かるように、日本はジェンダーフリーにおいては国際的に後れをとっている。

 女子の選手育成と強化の分野では、世界の先陣を切り、結果を残してきた日本レスリング界。数多くの世界女王を輩出してきたからには、ここで後れをとるわけにはいかないだろう。競技全体の課題として、女性審判員の強化に注力していきたい。







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