日本レスリング協会公式サイト
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2022.08.05

【重要】「胸を合わせて闘う」が徹底されるか…男子グレコローマンで「テスト・ルール」実施

 

監修=日本協会審判委員長・斎藤修
沖山功・国際審判員/本田原明・国際審判員

 世界レスリング連盟(UWW)は6月、男子グレコローマンにおいて、攻撃レスリングを拒否する“異常事態”が繰り返し発生している事態を憂慮し、積極的なレスリングを奨励するためのテスト・ルールを提示。7月の「スペイン・グランプリ」(スペイン)第4回ランキング大会(チュニジア)、全日本チームも参加した「ピトラシンスキ国際大会」(ポーランド)でテスト実施した。

 UWWが問題としたのは、下記の状況。
■胸を合わせる姿勢をとらず、あるいは維持せず、前かがみの状態
■組み合ってアクションする意思のない試合
■パシビティポイントのみによる1-1のスコアで、ラストポイントを取っている選手が逃げ切りをはかること
■第1ピリオドの間、両選手が一切のコンタクトを拒否するというお粗末な試合があった(2021年東京オリンピック、2022年欧州選手権)→「これは容認できず、厳しく制裁されなければならない」としている。

東京オリンピック決勝。文田健一郎のそり投げ狙いのコンタクトを、前傾姿勢で防ぐルイス・オルタ・サンチェス(キューバ)。こうした防御方法は認められなくなるか

 テストされたルールで一番の大きな点は、選手が相手選手とのコンタクトを拒否した場合、口頭注意のあと、「イエローカード」が出されること。極端な消極レスリングの場合は、口頭注意がなく出される場合もあるという。片方の選手だけではなく、両選手に同時に出されるケースがあることも従来とは違うルール。

 離れて闘うことや、フリースタイル的な構えで相手のコンタクトを拒否すれば、それは「イエローカード」の対象。レフェリーの判断のみで出される場合もあれば、チェアマンが「イエロー出すように」と指示する場合もあったという。

 その後も同様の闘いが続いた場合は「レッドカード」が出され、片方の選手、場合によっては両選手が失格となる。ただ、「イエローカード」の次に、即座に「レッドカード」が出されることはなく、コーションが出されてパーテールポジションで試合再開という従来の試合進行が続き、それでも消極レスリングが改善されない場合の“最終手段”として「レッドカード」となるもよう。

 日本協会審判委員会では、8月17日(水)~19日(木)に大阪・堺市金岡公園体育館で行われる全国高校グレコローマン選手権で、監督会議にてVTRで説明したうえで、テストマッチを実施する予定という。

 「ピトラシンスキ国際大会」には、沖山功・審判員(香川・香川中部養護学教=国際IS審判員)本田原明・審判員(自衛隊=国際I審判員)が参加。テスト・ルールについて振り返ってもらった。


「技が出て、試合が面白くなっている」と口をそろえる両審判員

 両審判員は、「胸と胸を合わせて技を仕掛ける選手が増えた。技が出て、試合が面白くなっている」と口をそろえる。大会のあった日の朝、審判員とコーチに対してテスト・ルールの説明があり、沖山審判員は「選手にもきちんと伝わっていたのでしょう、胸を合わせることを意識し、しっかりコンタクトする闘いが多かった」と振り返る。初日に「イエローカード」が出たケースは5回だけだったという。2日目はやや多かったそうで、審判員が攻撃レスリング奨励のため、厳しくしたのかもしれない。

上体を起こしてのコンタクトがグレコローマンの必須条件となるか

 パッシブやコーションを科せられるより、「イエローカード」の方が選手に与えるプレッシャーが強いのだろう。コーションのみの1-1で終わる試合がほとんどなく、本田原審判員が任されたBマット、沖山審判員が任されたCマットとも、1日で1試合だけだったとのこと。本田原審判員が見た1-1は、「両者とも本気に攻め合った末の1-1」とのことで、UWW審判委員長も納得した1-1の試合。消極的な試合に終始した1-1ではなかったという。

 ただ、「レッドカード」が出たケースはなかったという。今だからこそ「イエローカード」に対して反応するのであり、選手に「レッドカードまでは出ないさ」という意識が出てくると、今と変わらなくなるのではないか、との見方もあるようだ。審判が毅然として「レッドカード」を出せるかどうかに、このルールの有効性があるかもしれない。

 ただ、フリースタイルのような構えになることに対しては厳しく、すぐに「ヘッドアップ」との声がかかるとのことなので、これに関しては意識が変わっていくのではないか。日本の若い世代はフリースタイル中心なので、無意識のうちにもその姿勢になることが多い。フリースタイルの延長上ではなく、“グレコローマンの闘い方”が求められていくだろう。

9月の世界選手権で採用される可能性もあり

 本田原審判員は、このテスト・ルールの導入は、選手の消極性が要因と分析する。現行のルールでは、1-1で終わった場合、ラストポイントを取った選手が勝つので、昨年の東京オリンピック予選や世界選手権でも、第1ピリオドはほとんど攻めず、スタミナ温存をはかって1-1の勝利を狙う選手が目立ち、こうした試合がUWWで問題になっていたと言う。

テスト・ルールを報告する沖山功審判員(左)本田原明審判員

 オリンピック競技におけるレスリング・スタイルの一本化、すなわちグレコローマンの削除問題は、1990年ころから浮かんでは消えていた。現在のネナド・ラロビッチ会長の努力により、男子グレコローマンの対として女子ビーチ案が浮上。今度こそ完全に消えたとも思われたが、そうでもないようだ。少なくとも、男子グレコローマンのアクションの少ない試合の多さに、UWWが危機感・警戒感を持っていることは間違いない。

 3大会のテスト実施の結果・分析次第では、さらにUWW審判委員長の言動から、「早ければ9月の世界選手権でも導入されるかもしれない」(両審判員)というルール。グレコローマンの発展につながるか。







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