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2022.08.09

【特集】母は東京生まれの日本人、U17世界王者に輝いたジョエル・アダムズ(米国)が両スタイルのオリンピック王者を目指す!

 

 7月下旬にイタリア・ローマで行われた2022年U17世界選手権の男子グレコローマン65kg級で、ジョエル・アダムズ(米国)が優勝。この世代(旧カデット)の米国の男子グレコローマンで5年ぶりの世界王者に輝いた。5試合のスコアが36-0(テクニカルフォール2試合)という圧倒的な差をつけての優勝だった。

5試合に快勝して優勝したジョエル・アダムズ(米国)。母は日本人!=UWWサイトより

 米国レスリング協会は、毎週選出している「アスリート・オブ・ザ・ウィーク」(週間MVP)の8月5日選出選手にアダムズを選んだ。「無失点の優勝を評価した」と説明している。

 アダムスの母・あけみさんは、東京都足立区生まれの日本人。そのせいか、アダムズは日本のレスリングへの関心も高く、2018年4月に米国アイオワで行われた男子フリースタイルのワールドカップで高橋侑希選手(現山梨学院大職)乙黒拓斗・圭祐選手(ともに現自衛隊)と対面。高橋選手からTシャツをもらい、乙黒兄弟とは記念撮影をしてもらったという。

 東京オリンピックの期間中、外国人の来日は禁止されていたが、日本のパスポートを持っていたことが幸いし、母の帰国に合わせて来日。米国選手のみならず、日本選手を応援するつもりだったという。しかし、無観客開催となって断念。都内の「ゴールドキッズ」などで練習して帰国した。

 今年は、6月のパンアメリカン選手権(アルゼンチン)の両スタイルで優勝。米国選手には珍しく、両スタイルに挑んでいる選手だ。「夢はフリースタイルとグレコローマンの両スタイルでオリンピック・チャンピオンになること」ときっぱり。母からは「目標は大きく持て! 大切なのはゴールまで行く努力の過程! ゴールを見失わないこと。1人の力ではゴールには到達できない。みんなの支えがある。日々感謝の気持ちを忘れないこと」と言われているそうだ。

30年間で米国2人目のU17(旧カデット)グレコローマン世界王者!

 あけみさんは中学・高校と器械体操をしており、都大会の跳び箱で優勝の経験もあるという。1998年にレスリング経験者のジョシュア・アダムズさんと国際結婚し、2000年1月から米国ネブラスカ州オマハに在住。ジョウルは2005年2月16日に生まれた。長兄・マクスウェル(日本名・真久寿上瑠)、次兄・ジョナ(盛直)に続く三男で、日本人名は「盛有瑠」。

必殺技はブリッジワークを使ったスープレックス=UWWサイトより

 4歳のとき、父が2人の兄とともに市内のレスリング場に連れて行き、レスリングと出合った。プロレスのイメージがあったのか、「レスリングというのは、パンチをしたり、キックをしたりするものだと思っていました」と言う。それでも、やんちゃな子供だったので、闘うことに関心を示した。

 米国の若い世代は、フォークスタイル(フリースタイルに似ているが、やや異なる)に取り組むのが普通で、大学ではカレッジスタイルと呼ばれて人気競技になっている。フリースタイルは、主に大学を卒業して世界を目指す選手が取り組むスタイルで、U17(旧カデット)やU20(旧ジュニア)で世界選手権に出場する選手も並行して取り組んでいる。

 若い世代でグレコローマンを取り組む選手はぐっと少なく、この30年間、U17の世界選手権優勝はジョウルが2人目。U20の世界選手権も2人しかいない。

小学生時代は野球、水泳、フットボールなど多くのスポーツに親しんだ

 父は小学校3年生の頃から高校までフォークスタイルをやっており、フリースタイルとグレコローマンの経験はなかったが、レスリングそのものに関心が高かった。フォークスタイルのシーズン(冬)が終わると、地元でフリースタイルとグレコローマンをやっているクラブへ連れて行って練習させ、ジョウルは6歳から両スタイルもやるようになった。

応援のためのTシャツを作ってイタリアまで応援に行った両親と優勝したジョウル・アダムズ=母・あけみさん提供

 ただ、米国は子供の頃からひとつのスポーツに専念させるケースは少なく、ジョエルも野球、水泳、フットボール、サッカーなど多くのスポーツに親しむ小学生時代をおくったそうだ。レスリングに打ち込むようになったのは中学2年生の頃。「レスリングが一番好きだと気がついた」と振り返る。

 2019年、「Legends of Gold Wrestling」というクラブにスカウトされ、1年間という限定でそのクラブに住み、現地の学校に通いながらレスリングに親しんだ。このときにグレコローマンの面白さに出合った。

 同年6月にハンガリーで行われたU15を対象とした「世界スクールコンバットゲームズ」で銅メダルを獲得。世界を目指す気持ちが芽生えた。

日本に合同練習を呼び掛けるクラブのコーチ

 現在は、地元オマハの高校に通いながら、「The Best Wrester」で活動。州チャンピオンを皮切りに両スタイルでU16全米王者に輝き、今年6月のU17パンアメリカン選手権両スタイル優勝(前述)を経て、グレコローマンでのU17世界選手権優勝につなげている。

80kg級日本代表の吉田泰造(香川・高松北高)とともに=吉田選手提供

 夏休みである今の練習は、「週9回」とか。マット練習が夜に6回、筋持久力コンディショニング・トレーニングが2回、さらにウェイトリフティング・トレーニング1回が加わる。8月中旬からは高校の授業が始まるので、コーチと相談して練習計画を決め、米国内、さらに来年以降の世界での闘いを視野に入れるとのこと。

 すでに米国国籍なので、オリンピック王者を目指すのは米国選手としてになるが、2024年パリ大会や2028年ロサンゼルス大会へ向け、日本人の血が入っている選手の健闘も注目したいところだ。

 「The Best Wrester」のアイバン・デルチェブ・アイバノーブジョージ・アイバノーブ両コーチは、太田忍文田健一郎に代表される最近の日本の男子グレコローマンの活躍を知っているのだろう、「日本選手に来てほしいです。一緒に練習しましょう」と呼び掛けているという。アダムズの母をかけ橋に、日米のタッグチーム結成もあるか。


▲今年2月、ネブラスカ州の州チャンピオンに輝く=母・あけみさん提供

▲イラン選手を破ってU17世界王者へ=UWWサイトより

▲U17世界選手権の表彰式

 







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