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2022.09.04

【特集】辛い時期を支えてくれた人に、恩返しするときがやってきた…男子フリースタイル70kg級・成國大志(MTX GOLDKIDS)

お知らせ
本協会Facebook page / Instagramに、代表選手のポーズ写真やミニインタビュー、抱負などが順次掲載されます。

 

 9月10日からセルビアで行われる2022年世界選手権へ向けた最終合宿(9月1日~10日=東京・味の素トレーニングセンター)を目前に控えても、男子フリースタイル70kg級代表の成國大志(MTX GOLDKIDS)に悲壮感はまったくなかった。 8月29~31日には、GOLDKIDSの仕事で福岡市へ出向き、地元の中学生の指導を行いつつ独自の最終調整をした。

▲成國大志(MTX GOLDKIDS)=撮影・保高幸子

 「余裕ですね」との問いに、「今さら、じたばたしても仕方ないです。自分のペースを崩さなければ、それでいいのではないかと思います」とさらり。

 6月の明治杯全日本選抜選手権でも、試合の6日前には茨城・水戸市で行われた沼尻直杯全国中学生選手権の会場にいて、GOLDKIDSの選手のセコンドについていた。「練習は?」との問いに、「これから東京に戻ってやります」-。対人の練習にこだわらず、徹底した体力トレーニングが主な練習メニューだから、決まった時間にやる必要はないのだろう。

 レスリング活動が「仕事」という生活ではない。福岡へ向かったのはマット販売の一環であり、水戸は教室に通っている選手を勝たせるため。ともにGOLDKIDSスタッフとしての「仕事」。大舞台の直前であっても経営を考えなければならない。「切り替えはうまい方だと思います。試合になったら、集中できますから」と、仕事と選手生活を両立させている。

 試合前は一心不乱に練習に打ち込み、取材や友人と会うことを控えて雑念の排除に全力を尽くす選手もいる。成國は「人それぞれでしょう。自分の場合、早くから集中すると疲れてしまって、試合のときに逆に集中できなくなってしまうんです。あまり早くから集中しないようにしているんです」と言う。

自信になっている世界2位を破ってのアジア選手権優勝

 初めて挑む世界選手権は、「やっと、ここまで来たな、という気持ちしかありません」と言う。緊張感もなければ、選手がよく口にする(本心はともかく…)「楽しもう」という気持ちもない。「ここまで来るのに、長かったですからね」と笑う。

昨年の世界選手権2位のエルナザ・アクマタリエフ(キルギス)を4-3で破ってアジア王者に輝く=UWWサイトより

 インターハイ1年生王者や全日本学生選手権1年生王者という輝かしい実績を持ちながら、医師が処方した禁止薬物を含む薬の服用がドーピング違反とみなされ、1年8ヶ月の出場停止処分を受け、長いトンネルに入った。処分が解けても、例年通りなら出場できた全日本選手権に、コロナ禍によって出場選手数が少なくなって出場できないなど、遠回りの選手生活をおくった。

 「だれからも注目されず、忘れられた存在になっていましたね」。そんな日々を乗り越えての世界の晴れ舞台は、アジア選手権(モンゴル)優勝という勲章を持っての出場となる。強豪が出場していない中での優勝ではなく、決勝では昨年の世界選手権2位・U23世界王者のエルナザ・アクマタリエフ(キルギス)を破っての堂々のチャンピオン。「自信にはなっています」と話し、初出場で優勝も狙えると思えるだけの内容と結果を残している。

 一方で、アジア選手権はノーマークの存在だったことも自覚している。今度の世界選手権ではアジア王者として闘い方を徹底的に研究されていることを予想しており、「簡単に勝てないと思います。アジア選手権で闘ったイランも、一番手ではないと思いますし」と気を引き締める。

ロシア不在の状況では、米国を含めて横一戦

 アクマタリエフが第1シードと言うことに関しては、素直に受け止めていない。「ランキング大会に出てポイントを稼いだのであり、一番強い選手だとは思わないです」と言う。

ガッツポーズが飛び出た世界選手権代表決定プレーオフ。世界で再現なるか=撮影・矢吹建夫

 エントリーを見て一番手と思うのは、第6シードで米国代表のゼイン・レザフォード。米国最強のペンシルベニア州立大の名コーチ、カエル・サンダーソン監督の指導を受け、全米学生(NCAA)選手権3度優勝を誇る。4年間の通算成績は128勝4敗(4敗はすべて1年生のとき)。MVPに与えられるダン・ホッジ賞を2度獲得した4人目の選手など、米国学生界で実績には事欠かない。

 ただ、フリースタイルでは2012年に世界カデット王者になったものの、2017・19年にシニアの世界選手権65kg級で出場したが、ともにメダルには手が届いていない。米国大学で行われているカレッジスタイルからフリースタイルへの適応は今ひとつ。ロシアが不参加の現状で、「米国が少し抜けていて、あとは自分を含めて(数選手が)横一戦という状況でしょう」と話すが、米国を含めて横一戦が正確な勢力図ではないか。

 処分が明けて復帰したときは、「試合に出られる喜び」で充満していた。今は、世界選手権に出場できる喜びで充満している。さらに、注目してもらえることの充実感も感じると言う。「だれよりもトレーニングはしてきました」と言い切り、それは努力の結晶以外、何ものでもない。

 「辛い時期を支えてくれた人に恩返しできるときが、やっと来ました」。たくわえたエネルギーを爆発させるときが、やって来た。







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