【2022年栃木国体・特集】インターハイ1年生王者が開花、激戦階級に挑む…成年男子フリースタイル57kg級・小野正之助（佐賀・山梨学院大）

　2020年の中止がなければインターハイ3連覇を達成していた可能性もある小野正之助（佐賀・山梨学院大）が、成年男子フリースタイル57kg級で優勝。大学進学後、初のタイトルを手にした。

　準決勝で全日本社会人選手権優勝の荒木大貴（熊本・自衛隊）に4－0。決勝は、今年のアジア選手権3位の新井陸人（鹿児島・自衛隊）に8－5。新井とは6月の明治杯全日本選抜選手権の1回戦で対戦して0－4で敗れており、リベンジを達成しての優勝だった。

▲新井陸人（鹿児島・自衛隊）の後半の猛攻を耐えて栄冠を引き寄せた小野正之助（佐賀・山梨学院大）＝撮影・保高幸子

　試合後の小野は右ひざをアイシングし、テープでがっちり固定。足を引きずりながらの退場だった。準決勝で痛め、決勝はかなりきつく、「ひざが90度曲がらなかった。棄権も考えた状態だった」と説明した。それでも、決勝では第１ピリオドにすくい投げとがぶり返しという2度の4点技が決まり、第2ピリオドは相手の攻撃をかわして勝利につなげた。

右ひざを負傷、長引けば不利とばかりに先制攻撃を仕掛けた

　フロア出口で、山梨学院大の高橋侑希コーチ（東京オリンピック・男子フリースタイル57kg級代表）から祝福された小野は、けがをした中での勝利に「まさか…、勝てたんだ…、という気持ちです」と、きつかった中での勝利を振り返った。開始直後に決めたすくい投げは「賭けでした」とのこと。スコアが拮抗して試合が進んでは勝てない、との思いがあったようだ。

▲どちらが勝者が分からない試合後。ひざの激痛に耐えての優勝だった

　進学後は負傷やコロナ感染のため、試合に勝てないどころか出場すらできないこともあった。この半年間を振り返り、「ここでタイトルを取れたことはよかったです」とホッとした表情。優勝への道として「高橋コーチがめちゃくちゃ強くて…。（スパーリングで）勝ったことがない。世界トップレベルの選手と毎日やってきたから、勝てたんだと思います」と、高校時代とはケタ違いのレベルの中で鍛えられていることを挙げた。

　「高橋コーチのどこが強いのか？」との問いには、「すべてです。フィジカル面でも、スタミナ面でも全然通じない」と言う。同コーチだけではなく、「高校のときは、同じくらいの階級の選手に負けることはなかったのですが、今は違います」と、上級生の強さにも追いついていないことを口にした。

今までは「あこがれ」だった樋口黎や長谷川敏裕に、これからは「挑む」

　もちろん、日本代表争いはこんなものではないことも覚悟している。61kg級で世界王者になった樋口黎（ミキハウス）が階級を下げてくるほか、昨年61kg級で世界3位になった長谷川敏裕（三恵海運）も57kg級でパリ・オリンピックを目指す。

　「パリ・オリンピックを目指す、なんて言えるレベルではないんですよ」と言う一方、「（樋口、長谷川は）今までは、あこがれの選手。これからは、勝たなければならない選手です」と、ライバルとしての意識を口にした。

▲2019年に1年生インターハイ王者に輝いたときの小野（当時佐賀・鳥栖工）＝撮影・矢吹建夫

　自身も、高校時代は60kg級の選手で、進学後に57kg級に落とした。実は、中学・高校のときは、成長期であることで、医師のアドバイスに従って減量はほとんどしていなかったと言う。「身長からすれば、57kg級で大丈夫でしょう」と話し、57kg級での闘いに問題ないようだ。

　最後に、佐賀県の記者からの質問に対し、「中学、高校と佐賀県で6年間、レスリングをやってきて（鳥栖クラブ～鳥栖工高）、その基礎があって今の自分があります」と話し、恩を返せたことを口にした。2024年には佐賀県で国体が予定されているが、「そこでも優勝してさらに恩返しをしたいです」と話し、第2の故郷（生まれは島根県）への思いを話した。

（撮影＝保高幸子）