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2022.10.09

【2022年栃木国体・特集】世界トップ選手に勝って優勝! 本格復帰の序章となるか…女子62kg級・花井瑛絵(三重・朝明高教)

 

 全日本チャンピオン、アジア・チャンピオン、U20世界チャンピオンなどの実績を持つ選手が何人も参加した2022年栃木国体の女子62kg級は、昨年の世界選手権(ノルウェー)59kg級銀メダルで、約1年ぶりに実戦のマットに立った花井瑛絵(三重・朝明高教)が頂点に立った。

▲職場や県のバックアップでマットに戻った花井瑛絵(三重・朝明高教)。6試合を勝ち抜いて見事に優勝=撮影・保高幸子

 決勝は、昨年の世界選手権57kg級銅メダルの南條早映(兵庫・東新住建)が相手。南條は、櫻井つぐみ(育英大)と大激戦の末に敗れて世界選手権への出場はならなかったが、出場すれば世界一になれた可能性が十分の選手だ。そんな強豪を相手に、第2ピリオドに決めた4点のタックル返しがきいて、6-6のスコアながらビッグポイント差で薄氷を踏む思いながら栄冠を獲得した。

 2日間で6試合を勝ち抜かねばならない闘い。「国内の女子の大会では、ここまで試合をすることはないでしょう。2日目は3試合すべて6分間の試合になって、体力的にはきつかったです」と話し、1年ぶりの試合が本当に大変だった様子。

 南條との決勝は、途中、相手陣営からのチャレンジがあり、結果として“休憩”になってスタミナを回復。南條の終盤の猛攻をかろうじてしのぐなど、運も味方した優勝だった。

 南條は至学館大の同期生で、この日の朝、「決勝で闘おうね」と言い合っていた間柄。ただ、同じ階級に出場して闘うことはあっても、一度も勝ったことはないそうだ。南條が57kg級世界3位、自身が59kg級世界2位であっても、ブランクもあり、精神的な優位などはまったくなかった。それを乗り越えての優勝だった。

▲大激闘となった至学館大の同期生、南條との一戦。終盤、花井(青)がタックルで攻め、4点を奪う=撮影・保高幸子

微妙な判定にも冷静でいられた理由とは?

 昨年の世界選手権で選手生活に一区切りをつけたあと、審判資格を取るための勉強も積んだ。チャレンジされたシーンは「自分が4点、相手が2点」との確信が持て、気持ちは平静だったと振り返る(当初、レフェリーは相手に4点、ジャッジとチェアマンによって判定は自分に4点=チャレンジの結果、花井の予想した通りのポイントへ)。

 この余裕もよかったのだろう。正しいルールを知ることは、よけいな不安や怒りを生むことなく、冷静に試合を進めるために必要という手本でもあった。

▲花井(青)のタックルを、南條(赤)はタックル返しで対抗。審判の判定が分かれた微妙な攻防だった(国体チャンネル・ライブ配信より)

 そのあとは、6-4のスコアのまま試合を終わりたかったそうだが、「6-6でも(ビッグポイントで)勝てる」との余裕がプラスに作用した。実際に6-6になったが、勝ちは勝ち。「本当は、0点に抑えて6-4で勝ちたかったのですが…」と言いつつ、優勝はうれしそうだ。

 この優勝で、来年のパリ・オリンピックの選考レースに名乗りをあげるのか? 「いや~(笑)。今は疲れ切っていて、何も考えることができません」と、熾烈な闘いへの復帰の明言はしなかった。日本代表争いに加わるには、休むことなくハードな練習が必要。国体まで燃えてきたので休養も必要だし、この時点で「全日本選手権に出る」と明言するまでの気持ちの高まりはないと言う。

 ただ、「自信にはなりました」「来年の国体も出たいですね」という言葉が出るあたり、方向は決まっていると考えていいのではないか。

「人生、何があるか分からないですよね」と、意味深な笑顔!

 昨年の世界選手権が選手生活の集大成、という思いがあり、そこで区切りをつけた。しかし、その後も卒業まで後輩と練習するうちに、まだ燃え尽きていない気持ちが少しずつ出てきたという。国体出場を決めた大きな要因は、教員として就職した職場や三重県のバックアップ。「みんなの応援を感じ、国体を目指すことにしました」と説明する。

 昨年の世界選手権を取材した記者が、“花井引退”の情報を耳にして、「え!」と驚いた事実がある。決勝で負けた直後の悔しがり方は尋常ではなく、叫び声や感情を押さえられないような言葉を連発しながら控室に向かったという。「あれだけ悔しがっていて、マットを去ることはないと思うけど…」と、闘争心が消えるはずはないことを予想していた。

▲昨年の世界選手権決勝で惜敗した花井。悔し涙にくれた…=撮影・布施鋼治

 花井は「あのときは、本当にめちゃ悔しかったんですよ」と笑いながら、「でも、次の日には『やめよう』と思ったんです」とさらり。しかし、復帰した事実を指摘されると、「人生って、何があるか分からないですよね」とにっこり。その満足感たっぷりの笑顔は、このあとの行く先を暗示しているようでもあった。

 「(この日、協会ホームページに掲載された)公認コーチの講習会を受けたいです」と話し、レスリングから離れるつもりはない。このあと、どんな形で携わっていくのか。世界一を目前にして、それを逃した22歳の情熱が、ここで消えることがあるのだろうか…。







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