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2022.11.22

【2022年全日本大学選手権・特集】就任13年目の悲願達成! 日体大・松本慎吾監督の体が宙に浮いた

 

 2022年全日本大学選手権は、日体大が、全階級での決勝進出というわけにはいかなかったが圧倒的な強さを見せて最終日に突入した。館内には「日体大の3連覇、28年ぶりのグランドスラム(学生の団体戦全制覇)達成」という雰囲気が色濃く漂っていた。しかし、山梨学院大も5階級で決勝進出を決め、日大は全階級でファイナル(決勝、3位決定戦)進出という状況。優勝の可能性は首の皮一枚つながっていた。

 ファイナルが始まると、山梨学院大と日大のかすかな望みはあっさりと消えた。日体大にとって最初のファイナルの試合となった86kg級で髙橋夢大が銅メダルを決め、続く山田脩(79kg級)、伊藤飛未来(125kg級)が決勝を制したことで、2大学の得点が日体大を上回る可能性がなくなり、日体大の優勝が決まった。

▲竹下雄登主将は負傷で不出場となり、代わってチームを牽引した伊藤飛未来(左)と白井達也の4年生選手=撮影・保高幸子

 リーグ戦やインターハイ団体戦のように、「4勝したらチームの勝利」という方式ではなく、8位以内に与えられる得点を積み重ねた合計点で総合順位が決まる方式だ。プロ野球の“マジックナンバー”のような数字が館内に掲示されているわけではないので、日体大の選手や応援の人たちでも、この時点で「優勝確定」という事実を正確に知った人はいなかっただろう。

 だが、そんな“数字の上での可能性”にこだわる必要もないほど、マット上での日体大選手の闘いぶりには安定感があり、「優勝間違いなし」という空気に包まれていた。

辞退し続けてきた胴上げ、3年前に“王手”をかけたが…

 松本慎吾監督にとっては、2010年に監督就任以来、待ちに待ったグランドスラム達成だった。この日のために、東日本学生リーグ戦3度、全日本大学グレコローマン選手権8度、昨年までのこの大会3度の優勝のときも、選手からの胴上げを辞退してきた。

 同監督は、13年をかけての悲願達成に「素直にうれしいです」と第一声を発したあと、なかなか言葉が出てこない。「指導者として日体大に戻ってから、ずっと思い続けていた目標でした。それをクリアでき、ホッとしているところがあります」と、しみじみ。

▲松本慎吾監督の思いを知っていた選手たちは、万感の思いをこめて胴上げを求めた

 「今の学生選手だけではなく、これまでの教え子でOB、OGの立場となって支え、応援してくれた人たち、みんなの力で1994年以来の団体のタイトルすべてを獲得することにつながりました」と、ともに汗を流した選手たちへの感謝の言葉を口にし、大阪まで駆け付けた保護者らサポーターたちと記念写真におさまった。

 3年前にも、「グランドスラムまで、あと1大会」と迫ったが、最後のこの大会で失速。1階級優勝の団体3位という結果だった。その年は、リーグ戦では山梨学院大に屈しながら内容差での優勝で、8月の全日本学生選手権では1階級しか優勝しておらず、団体戦2大会を制したとはいえ、基盤は強固ではなかったと言えるだろう。

松本慎吾監督就任以降の日体大の団体戦成績(カッコ内は優勝大学)
東日本学生リーグ戦 全日本大学G選手権 全日本大学選手権
2022年 優 勝 優 勝 優 勝
2021年 (中止) 優 勝 優 勝
2020年 (中止) 3位(山梨学院大) 優 勝
2019年 優 勝 優 勝 3位(山梨学院大)
2018年 3位(山梨学院大) 優 勝 優 勝
2017年 3位(山梨学院大) 優 勝 8位(拓大)
2016年 2位(山梨学院大) 優 勝 4位(山梨学院大)
2015年 4位(山梨学院大) 2位(拓大) 2位(山梨学院大)
2014年 3位(山梨学院大) 2位(拓大) 6位(日大)
2013年 A組3位(山梨学院大) 優 勝 3位(早大)
2012年 優 勝 2位(拓大) 5位(山梨学院大)
2011年 二部優勝(早大) 優 勝 3位(拓大)
2010年 -- 3位(拓大) 4位(拓大)

正選手が負傷で欠場しても、副選手が見事に優勝!

 松本監督は、「盤石の強さとは何か」を、3年前に痛感したのではないか。昨年も今年と同じだけの戦力があったが、コロナのため東日本学生リーグ戦が中止されており、悲願はならなかった。だれにもぶつけられない悔しさをもって迎えた今年。リーグ戦は山梨学院大と大接戦の末の勝利だったが、8月の全日本学生選手権では5階級を制する強さを発揮。同グレコローマンでも8階級を制する強さでチームの勢いを見せつけた。

 今大会、負傷によって正選手が出場を見合わせる階級があったが、そうした状況に遭遇しても、控えでエントリーされていた選手が期待にこたえて優勝を勝ち取るなど、層の厚さは3年前とはけた違い。

▲先輩の負傷欠場で出番が回って来た57kg級の弓矢健人、見事に1年生王者に輝いた=撮影・保高幸子

 優勝は固いと思われていた65kg級の清岡幸大郎と86kg級の髙橋夢大が不覚を喫したことを聞かれても(清岡は負傷によって決勝戦を棄権)、松本監督は「選んだ選手を信じていました。きょう(最終日)も出場した全選手が勝ってくれました。私は見守るだけでした」と、他の選手が埋め合わせてくれるチーム力を信じていた。

 この12年間の中には団体戦無冠という年もあり(2014・15年)、グランドスラムどころか、1大会の団体優勝の難しさに直面したことも事実だ。「いろんな思いがありますね」と振り返った同監督は、あらためてグランドスラムの難しさを実感していることだろう。

「これで終わりではない。目標は世界で勝たせること」と松本監督

 全日本チームのコーチとして活動していた時期もあり、両立の難しさを問われると、「確かに、大変なことはありましたね」と話しつつ、「選手の活躍する姿を見ることが力になりました」と答えた。選手を勝たせ、喜んでもらいたいという思いこそが、その難しさに挑み続けた要因だった。

 「これ(グランドスラムの喜び)が1年でも2年でも続くように、気を引き締めて、1日、1日を前進していきたいと思います」という言葉に続いたのは、これまで団体優勝したときに出てきた言葉と、同じ内容の言葉だった。

▲伊藤飛未来とともに学生二冠王に輝いた74kg級の高田煕、勝利のガッツポーズは来年以降も継承されるか=撮影・保高幸子

 「これで終わりではない。12月には全日本選手権があり、オリンピックの国内予選が始まります。世界で闘える選手を一人でも多く出し、2024年パリ・オリンピック、さらに2028年ロサンゼルス・オリンピックに多くの日体大の選手を送り、広い目で見て日本のレスリングを世界で勝たせたいと思っています」

 今年はOBで世界一の選手が生まれ(樋口黎)、学生の白井達也がU23世界選手権86kg級で優勝し、日本選手にとって大きな壁である重量級の世界進出の道を切り開いた。グランドスラム達成と歩調を合わせるかのように世界への挑戦も進んでいる。「足を止めることなく、がんばっていきたい」と結んだ。







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