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2022.11.23

【2022年全日本大学選手権・特集】生かせ、“超長身”! 両親ともオリンピック代表の血…伊藤飛未来(日体大)がMVPで団体優勝に花

 

(文=ジャーナリスト・粟野仁雄)

 最優秀選手(MVP)受賞のアナウンスを聞くと、少し照れながらも踊るように表彰台に向かった。うれしい団体優勝に花を添えたのが125kg級優勝の伊藤飛未来(日体大)

 「リーグ戦優勝の時は、監督が『団体三冠を取らないと胴上げには応じない』と言っていたことを、後で記事を読んで知ったんです。今日は絶対に胴上げしますよ」。

 表彰式のあとに行われた歓喜の胴上げの輪の中で、その体はキリンのようにひときわ高くそびえていた。

▲団体優勝と学生三冠獲得に加え、MVPを受賞した伊藤飛未来(日体大)=撮影・保高幸子

 宙を舞った日体大の松本慎吾監督は「(伊藤は)U23世界選手権(10月中旬、スペイン)が終わってからは、教育実習の合間に練習するような形になり、時間的に本人も心配していた。その中でも、しっかりとした試合をしてくれ、団体優勝にも貢献してくれた。おおいに自信になったでしょう」と評価する。

 今後の課題については、「リーチはあるけれど、力の伝え方が大事。上半身と下半身がバラバラにならないように連動を強化し、体幹をしっかりさせることです」と話した。 

全4試合で1失点と危なげない優勝

 準決勝で奥村総太(拓大、グレコローマン学生二冠王者=全日本学生選手権、全日本大学グレコローマン選手権=、国体王者)を破った伊藤は、決勝ではカザフスタンからこの春に来日したアビレイ・ソビィット(山梨学院大学)と相対した。

 第1ピリオド開始早々、相手の強い圧力で押し出されて失点したが、長い腕を生かしてタックルに入り、あっさりと4点を取って逆転。その後もタックルを決めて加点し、最後は7-1で完勝した。全4試合を通じて、失点は決勝の1点だけと危なげなかった。

▲5月の東日本学生リーグ戦に続いてカザフスタンからの留学生を撃破=撮影・保高幸子

 日本の重量級選手としては珍しい「超長身」。193cmある。埼玉県育ち。母親の恵子さん=旧姓宮島=は1984年ロサンゼルス・オリンピックの女子バレーボール日本代表の銅メダリスト。身長178cmのスパイカーで、日本リーグ日立製作所の黄金時代の選手で、中田久美さん(東京オリンピック女子監督)と同僚だった。大林素子さん(現タレント)とも重なっている。

 その昔、筆者がバレーボールを取材していた頃のスターでもある。母のDNAだろう、伊藤はレスリング選手というよりもバレーボール選手のような体型だ。

最初は、いろんな習い事のひとつだったレスリング

 父の広道さんは自衛隊に所属していたレスリング選手で、全日本選手権の男子グレコローマン74kg級で5度優勝、アジア選手権を制したこともあり、1988年ソウル・オリンピックでは8位入賞を果たしている。

 伊藤は父の指導で幼少からレスリングを始めた。「最初は、いろんな習い事のひとつでしかなかったけれど、中学の頃からはレスリング一本になっていました」。

▲キッズ時代の伊藤飛未来。後方の左端が父・広道さん、その隣で動画撮影しているのが母・恵子さん=2011年1月の東京少年少女選手権

 埼玉栄高校を経て日体大に入った。高校時代は2017年JOC杯カデット2位、2018年全国高校選抜大会96kg級で3位に入った成績があるくらいで、ずば抜けて目立つ成績は残せなかった。

 しかし、大学に入ってから伸び、新人戦を制するなど順調に力をつけて学生王者になった。「父は今も様々なアドバイスをしてくれ、新しい技術も教えてくれています」と言う。

十分すぎるDNAと恵まれた長身を生かせるか

 今回はチーム事情で125kg級に出場したが、通常体重は94~95kg。今年8月の全日本学生選手権では、両スタイルの97kg級(以下同じ)に出場して、ともに優勝している。しかし、5月の明治杯全日本選抜選手権では、決勝で石黒峻士(新日本プロレス職)に敗れて2位、10月のU23世界選手権では初戦でドイツ選手に敗れてしまった。全日本トップや世界とは、まだ差があるのが現実だ。

▲準決勝でグレコローマン130kg級の強豪、奥村総太(拓大)も破った伊藤。世界への飛躍を目指す=撮影・保高幸子

 伊藤は「タックルには自信があるけど、相手に合わせてしまうところがあるんです。フィジカルの面でも、まだまだ負けていることが多い。技にしても、まだ出まかせのようなところがあるので、しっかりと組み立てていきたい」と自己分析していた。

 もっとパワーアップしていけば、長身は絶対の武器になる。松本監督も「しっかりトレーニングしていて、全体的にパワーアップしてきている。天皇杯(12月の全日本選手権)はパリ・オリンピックの(日本代表争いの)スタート。課題を持ち帰って、しっかりと臨ませたい」と話す。

 十分すぎるDNAと身体に恵まれた伊藤の飛躍が楽しみだ。







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