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2022.12.05

【2022年全日本選手権にかける】世界2トップに挑む「3世代世界チャンピオン」…女子62kg級・稲垣柚香(至学館大)

 2024年パリ・オリンピックの日本代表争い第1弾となる2022年全日本選手権(12月22~25日、東京・駒沢体育館)。女子62kg級はオリンピック・チャンピオン(川井友香子)と世界チャンピオン(尾﨑野乃香)の対決で注目を集めることになりそうだが、「そうはさせない」と燃えている選手も少なくない。

 6月の明治杯全日本選抜選手権3位の稲垣柚香(至学館大)もその一人。同選手権での尾﨑との対戦(準決勝)は1-2の惜敗。両者のポイントはアクティブタイムによるコーションのみ。稲垣が攻めあぐんだのは事実だが、尾﨑の攻撃を防いだのも確か。ラスト48秒には尾﨑の左足首を取ってテークダウン寸前に追い込んだりもした。

▲今年6月の明治杯全日本選抜選手権、1-1のラスト48秒、尾﨑を追い込んだ稲垣(赤)だが、ポイントにつなげられなかった=ネット中継より

 尾﨑はこのあとの決勝で川井友香子を破り、U20、シニア、U23の世界選手権を制覇。稲垣は国際舞台で闘う機会を得ることができず、大きな差ができた2022年となったが、稲垣が尾﨑にとって強敵の一人であることは間違いない。

 稲垣は全日本選手権を控え、「パリ・オリンピックの予選が始まることで緊張します。ひとつずつ勝って優勝したい、という気持ちです」と言う。6月の尾﨑との一戦については、「(1点差であっても)負けは、負けです。足りないところがあったということ」と振り返る。

 いいところまで追い込みながらテークダウンを取れない詰めの甘さ、全体を通じての攻撃の決定力不足など、いろんなことがあるのだろうが、「課題を克服し、全日本選手権では(修正したものを)すべてを出したい」と言う。

コロナ禍で試合数が激減したが、「挑戦者らしく闘いたい」と稲垣

 この間、8月に全日本学生選手権、10月には西日本学生選手権に出場し、ともに優勝している。西日本学生選手権は、全日本トップ選手なら無理に出る必要はない大会とも思える。事実、2試合をともに約1分で勝つ優勝で、実力的に大きく抜け出している中での試合から、学ぶことがあるのだろうか。

 稲垣は「試合でしか学べないことはあります」ときっぱり。一昨年も昨年も出ている大会で、「試合に出ることで、自分のレスリングを見つめ直すことができます。出てよかったです」と、実戦を経験することのメリットを強調した。

▲至学館大の新主将としてチームを牽引する稲垣柚香

 実戦を積むことの必要性は、実力を急上昇させた高校3年生の2019年の経験によるものかもしれない。この年は11大会(国内6、国際5)に出場。シニアのアジア選手権のほか世界ジュニア(現U20)選手権とU23世界選手権で優勝し、8位に終わったがシニアの世界選手権にも出場。数多くの経験を積んだ年だ。

 しかし、その後のコロナ禍で試合数が激減し、本来ならあったはずのジュニアや学生の国際大会の出場機会が奪われた。今年は国内3大会のみの出場。尾﨑は今年だけで6大会(国内2、国際4)に出て、そのすべてで優勝する強さを見せている。

 「焦る気持ちはあります」と正直な気持ちを話すとともに、「自分は挑戦者。挑戦者らしく闘いたい」と気持ちを奮い立たせる。尾﨑は手足の長さを生かして実力をつけていると感じ、「入りこむのが難しいけれど、自分は体が小さい分、逆にそれを生かして闘いたい」と、スピードで切り崩す腹積もりだ。

4年前、2連敗していた尾﨑を破ってインターハイで優勝

 尾﨑を破ることを目標にしたのは、4年前にも経験している。2017年に世界カデット(現U17)選手権52kg級で優勝して勢いに乗る稲垣の前に立ちはだかったのが尾﨑だった。2018年のジュニアクイーンズカップとJOCジュニアオリンピック(当時は女子も実施)で、ともに僅差ながら敗れ、勢いを止められた。

 迎えた地元インターハイ(三重)。準決勝で対戦することになり、稲垣が4-2で勝ってリベンジした。「対策をしっかりして臨みました」。その後、同年12月の全日本選手権で「17歳3ヶ月」という当時歴代3位となる若さで優勝。2019年の世界への飛躍につながった(前述)。打倒尾﨑への思いと努力が、実力をアップさせたことは間違いあるまい。

▲2018年インターハイ、2連敗中だった尾﨑(右端)を破って優勝した稲垣

 今回は尾﨑だけでなく、至学館大でともに汗を流していた川井友香子という高い壁もある。「一緒に練習できたのは、メリットもデメリットもありますね」と話し、“同門対決”の難しさを口にする。これまでに、2019年明治杯全日本選抜選手権の決勝で対戦し、1-3で敗れている。そのときはまだ59kg級の選手であり(あえてオリンピック階級に挑戦)、3年前の対戦結果や内容がそのまま当てはまるものではない。

尾﨑と闘うには、川井友香子を破らなければならない…

 今回の全日本選手権は、明治杯の成績からすれば尾﨑が第1シード、川井が第2シード、稲垣が第3シードとなることが予想される(注=あくまでも本HPの予想です)。優勝するには川井と尾﨑を連破しなければならない。一方、今大会は2日間試合で、準決勝と決勝が別の日に行われる追い風も吹いた。準決勝まで勝ち上がって川井と闘うことになれば、体力を使い果たしてもいい、という気持ちで挑める。

▲2019年明治杯全日本選抜選手権62kg級決勝で川井友香子に挑んだ稲垣=撮影・矢吹建夫

 栄和人監督からは、全日本レベルで優勝から見離されている状況でも「しっかりやっていけば勝てるから、あきらめるな」などという言葉をかけられ、ともすると弱気になってしまう気持ちを奮い立たせてもらっていると言う。

 3世代の世界一になっているので、須﨑優衣が今年、世界で初めて達成した主要5大会を制する“グランドスラム”に挑める権利を持つ数少ない選手。しかし、U23を制したのは3年前で、「過去の話ですから」と笑い、何の意識もない。今あるのは目の前の闘いに勝つことだけ。オリンピック・チャンピオンと世界チャンピオンがそろう女子62kg級に、“新顔”のチャンピオンが誕生するか-。

(撮影=保高幸子)

 

 

 







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