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2022.12.31

【2022年全日本選手権・特集】階級を上げてすぐに優勝、オリンピック選手の血を受け継いだ非凡な才能が完全開花するか…女子62kg級・元木咲良(育英大)

 

(文=ジャーナリスト・粟野仁雄)
 
 女子62kg級準決勝で東京オリンピック。チャンピオンの川井友香子(サントリービバレッジソリューション)を破った勢いで、元木咲良(育英大)が初優勝した。

 決勝の相手は、今年の明治杯全日本選抜選手権で川井を破り、9月の世界選手権で優勝するなど“飛ぶ鳥を落とす勢い”の尾﨑野乃香(慶大)。1ポイントをリードされたままで迎えた残り25秒。がぶられた姿勢から尾﨑の左脇をくぐって懐に飛び込み、バックを取り2点奪って逆転した。

 スタンドになって残り12秒。尾﨑が死にもの狂いの反撃を見せ、2人が激しく動き回ったところでブザー。尾﨑サイドからテークダウンしたというチャレンジが申し立てられたが、尾﨑が元木のシングレットをつかんだという反則行為が明らかになって抗議が認められず、元木が4-2で勝利した。

▲ラスト25秒、逆転を狙って仕掛けた元木咲良(育英大)=撮影・矢吹建夫

 喜びの会見では「尾﨑選手は攻撃的に来るので、合わせていたら負けると思った。自分は世界選手権の時よりも絶対強くなっていると思っていた。世界選手権(59kg級で3位)では残り30秒でやみくもに行って負けたので、残り時間を考えた練習をした。それが生きたと思う」と話し、考えた練習の成果だったことを喜んだ。

中学時代は全国大会の優勝なし、そこからはい上がった!

 元木は埼玉県出身。父・康年さんは2000年シドニー・オリンピックの男子グレコローマン63kg級の代表として惜しくも入賞を逃した。全日本選手権では2度優勝している。元木は、そんな父の影響で幼少の頃から「和光クラブ」でレスリングを始め、埼玉栄中学・高校で続けた。中学時代は全国大会の優勝はなかったが、高校ではJOCジュニアオリンピック・カデット(現U17)で勝ち、世界カデット選手権でも優勝するなど活躍。2020年春に育英大に進学した。

 前日の準決勝で破った川井について、「友香子さんとは経験値が違う。コーション勝負の選択肢もあったけど、それでは負けると思った。最初のタックルがうまく入ってペースがつかめた」などと振り返っていた。

▲準決勝で川井友香子(サントリービバレッジソリューション)を破って勢いに乗った=撮影・矢吹建夫

 そんな元木は、ごく最近までは59kg級で闘っていた。今年6月の明治杯全日本選抜選手では優勝し、プレーオフを制して世界選手権に出場。準決勝でモルドバの選手に惜敗して3位だった。

父・康年さんは紆余曲折を経てシドニーのマットに立った

 今回、オリンピック階級の62kgに上げてすぐに優勝できる潜在能力は非凡ではない。愛娘の快挙をスタンドから見守っていた康年さんは、「何が何でもパリ・オリンピックに行く覚悟でやれ」と送り出した。かつて平井満生さん(当時綜合警備保障)とプレーオフまで争ってシドニー・オリンピック代表の座を獲得した経験がある。

 それだけに、今後は精神面を含めて激戦のオリンピック代表争いを勝ち抜くノウハウを娘に教えることができるだろう。娘も「父もオリンピックまで負けたりけがしたりで、楽な道のりではなかったそうです」と熟知の様子。

▲終盤の猛攻も実らず敗れた世界選手権・準決勝。このときの経験が生きた優勝だった

 元木は「明治杯まで6か月あるので、まだまだ強くなれると思う。レスリングが面白い」と繰り返すなど、ライバルにはいよいよ「不気味な」存在になってきた。

 元木との試合で再発した川井の腰痛が気になるところだが、川井、尾﨑を合わせた3人を軸に、パリ・オリンピックへ向けての62kg級代表争いの激しい闘いの火ぶたが切って落とされた。







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