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2023.01.03

【新春対談】松本薫さん(柔道)と岡村優さん(ゴルフ)がレスリング時代を振り返り、古巣へ熱きメッセージ(3)

《第1回》《第2回から続く》

戦術として、闘う相手にあえて話しかけることもある…松本薫

――ゴルフの場合、視線による闘いというのは、あるのでしょうか?

岡村 ゴルフは相手と直接闘うスポーツではなく、自然との闘いであり、自分との闘いのスポーツなので、相手をにらみつけるようなことはないですね。ただ、集中するときとか、ボールをぐっとにらみつけることはありますね。

松本 ラウンド中、移動のときに選手同士はしゃべっていますよね。何をしゃべっているんですか?

岡村 たわいもない話です。

松本 「どこのラーメンがおいしいよ」とか?(笑)

岡村 「今日の夜は何食べる?」とかの話はしますね。ゴルフは競技時間が4~5時間と長いので、オンとオフを作ることが必要です。集中してボールを打ったあとは、みんなで話してリラックスするようにします。まあ、人によりますね。話さない選手は、ほとんど話さないです。

松本 ゴルフのそのシーン、なぞだったんですよ。闘っている相手とプレー中に、何をしゃべっているのかな、と。岡村さんは、しゃべる方ですよね。

岡村 しゃべった方が調子がいいです。楽しんだ方がいい結果につながるみたいです。時に、おやつを食べながら、話します。おやつの交換もします。

松本 「(毒を)盛っているんじゃない?」とか、疑わないんですか?(笑)。

岡村 それはないですね(笑)。柔道では考えられないですよね。

松本 戦術として、あえて話しかけることはあるんですよ。私を意識して、嫌そうにしている選手に、「次、当たるね~」なんて話しかけるんです。相手からすれば、不気味ですよね(笑)。レスリングでもそうだと思いますけど、ウォーミングアップ場では、次に闘う選手同士は近づかないのが普通でしょ。私は、あえて近づくんです(笑)。相手の視野に入っただけで、相手は集中できないはずなんです。

――学生時代から、そういうことをやっていたんですか?

松本 まあ~(笑)。世界で勝つには、普通じゃダメだと思っていました。才能のない選手が普通にやっていては勝てるわけない、普通以外のことをやらないと勝てないと思ったので、普通でないことは何かな、と思って行動しました。みんながきつそうにしているときに笑顔でいれば、周りは「なんだ、この選手は? 普通の体力じゃないな」なんて思いますよね。「普通じゃないこと」をやることは意識していました。

岡村 それは大切なことですね。

松本 岡村さんは才能があるから、そんなことやらなくていいんですよ(笑)。

▲2012年ロンドン・オリンピックで金メダルを取り、満面の笑みの松本さん=提供・東京スポーツ新聞社

――岡村さんが、勝つために意識してやっていることは?

岡村 さっきも言いましたけど、ゴルフは自分との闘いなので、いかにいいパフォーマンスを出せるか、いかに練習のときのようにプレーできるかだと思います。練習ラウンドのときから、しっかり準備するようにやっています。時にメモをとったりして、怠りなく準備することでしょうかね。

松本 準備は大事ですよね。

――松本さんも、ロンドン・オリンピックで優勝するまでは準備することが大変だったのではないですか?

松本 いかに野獣になるかの闘いでしたね(笑)。野獣って、つくるものですよ。いかに闘う自分をつくるかの連続でした。普通の大会は1ヶ月前、世界選手権は3ヶ月前、オリンピックは半年前から、作り上げていきました。

岡村 具体的には?

松本 簡単なことでは、女性のしぐさをやめることがありました。格闘技は、本来が男性の競技なので、女性のしぐさではよくないのです。スマホの持ち方でも、女性は(脇をあけないなど)女性特有のしぐさでかけます。物の持ち方でも、力のある男性には男性の持ち方があって、女性には女性なりの持ち方があります。男性的な持ち方を心がけるとか、日ごろから、そうした動きを意識しました。

岡村 日常の生活から闘いなんですね。

松本 岡村さんは、やらなくていいからね(笑)。そんなことをしたら、周りがびっくりしますよ。

▲スマホのみならず、すべての物に「女性的な持ち方をやめることが必要だった」と話す松本薫さん=撮影・保高幸子

――ゴルフは、男女格差はあるのでしょうか。

岡村 男女どちらかのスポーツ、ということはないですね。小さくても、年をとっても、男女でできるスポーツですね。

松本 根強い人気がありますよね。

オンとオフの切り替え、引きずらないことが必要なスポーツ

――選手生活の中で、気持ちを保つのが難しい時期もあったかと思います。そんなときは、どんなふうに乗り切ったのでしょうか。

松本 オンとオフの切り替えでしょうか。ずっと緊張してやってきたわけではないです。ロンドン・オリンピックへ向けては、自分が「出たい」という気持ちでやってきましたけど、それだけでは闘えなかったです。正直なところ、柔道はそんなに好きじゃなかったし…(笑)。

岡村 そうなんですか?

松本 好きなら、「出たい」という気持ちだけで続くかもしれません。私の場合は「出たい」という気持ちに加えて、「お母さんをオリンピックに連れていきたい」という思いがあって、それで続きました。次のリオデジャネイロ大会へ向けては、父から「母さんばかりが(マスコミに)出て、わしはおらんのか…」と、すねられてしまいまして(笑)。それなら、父を連れて行こう、という気持ちになったんです。

――明確な動機があったんですね。

松本 選手生活の間には、気持ちがぶれることもあります。そのとき、「何のためにやっているのか」と考え、自分を支えるものを明確に持っていることが大事だと思います。「親を連れて行く」という気持ちが、「今を乗り越えよう」という頑張りになります。こうした明確な気持ちが必要だと思います。

▲2009年のレスリング協会・傘下連盟選出年間最優秀選手賞の表彰式。右端が全国少年少女連盟選出の岡村さん。その隣が(順に)成國大志、向田(現姓志土地)真優、坂野結衣=撮影・矢吹建夫

――「勝たなければ」と思っても、勝てないときもあったかと思います。そんなときは、どんなふうにリカバリーされましたか?

松本 「次、勝とう」って思うだけです(笑)。引きずらないことです。

岡村 私も引きずらないタイプです。周りが引きずることもありますけど、私は「次は勝つ」と思って。

《続く》

 

 







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