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2023.01.13

【特集】総工費4億5200万円のレスリングセンターが完成、県の強力支援で佐賀・鳥栖工高が覇権奪還を目指す

▲高校日本一奪還を目指す佐賀・鳥栖工高

 

 2021年に全国高校選抜大会とインターハイの学校対抗戦を制し、高校レスリング界の頂点に立った佐賀・鳥栖工業高校。昨年は千葉・日体大柏高に両大会とも覇権を奪還され、連覇することの難しさに遭遇。2023年は巻き返しを狙う年となった。

 正月気分の抜け切らない1月4日、鳥栖工高の選手は東京にいた。日体大、国士舘大、神奈川大といった強豪大学への出げいこで新年の練習をスタート。日体大では、ライバルとなる日体大柏高の選手も来ていて、3月末の全国高校選抜大会を前に早くも激しい火花が散った年明けだった。

 神奈川大で取材に応じた小柴健二監督は「去年のレギュラーメンバーが4人残る」と話し、その選手を中心として全国王座の奪還を目指す意気込みを話した。51kg級の怡土悠馬(国体3位)、65kg級の松原拓郎(国体2位)、70kg級の三浦修矢(2021年全国中学選抜選手権優勝)の現1年生と、125kg級で今年度2年生ながら92kg級で高校三冠(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)を制した甫木元起

 62kg級でU15アジア選手権に出場した伊藤海里(北海道・オビヒロクラブ出身)も貴重な戦力。最重量級の闘いを迎えるまでに3勝していれば、チームの勝利は高い布陣だ。

▲神奈川大選手の胸を借りて練習する鳥栖工高の選手(シングレット姿)

練習の中心はレスリングの技術と戦術の習得

 同校の特徴は、筋力トレーニングやランニングにはあまり時間を割かず、技術の習得や反復に多くの時間を費やすこと。筋力、瞬発力、筋持久力、スタミナ(心拍)と、あらゆる体力が必要とされるレスリングは、打ち込みやスパーリングに入る前に何種類ものマット運動やブリッジ、2人1組になっての運動などをこなし、その段階で大量の汗が流れている練習をよく見かける。

 空手をやっていた格闘技ライターが、強豪レスリング・チームの練習を見て、「ここまでがウォーミングアップ?」と驚いたという話もある(そのあとのスパーリングのすさまじさと量に、さらに驚いたそうだが…)。体力があってこそ闘争心や集中力が続くので、「何よりも体力アップ」という考えも間違いではないし、それが必要な選手もいる。

 小柴監督は「体力をつける練習で選手を追い込むと、そのあとの練習で冷静な判断ができなくなる。高校の2年半は、あっという間に過ぎます。レスリングの技術や戦術を身につけることに時間を使うべきです」と話す。練習が始まり、体があたたまればすぐに打ち込みが始まる。朝練習といえば「体力トレーニング」と相場が決まっているが、ここでもマットワークが中心だ。

▲神奈川大との合同練習を見守る小柴健二監督(左端)

 基礎体力づくりの必要性を否定しているわけではない。パワーアップの必要がある選手には筋力トレーニングに時間を割かせるし、高校へ入ってからレスリングに取り組んだ選手には6分間闘える体力づくりを課す。ただ、「レスリングの技術練習をしっかりやる中からも、筋力やスタミナはつきます」とも言う。

 「試行錯誤の段階ですけどね」とは言うものの、団体戦で全国一となり、個人王者も輩出しているのだから、正しい方向に向いていることは間違いない。

2024年佐賀国スポのあとも、スポーツ振興は続く!

 佐賀県は、2024年に「国民体育大会」から名称を変える「国民スポーツ大会」(国スポ)を控える。地元の国スポを目指し、県をあげてスポーツ振興に力を入れている最中だが、同県の目指すところは地元の国スポではない。小柴監督は、2018年にスタートしたSSP(佐賀スポーツピラミッド)構想のもと、全国トップ選手、さらには世界に挑むアスリートを育成し、スポーツ文化の拡大を目指す確固たる方針があると説明する(関連記事)。

 「2028年ロサンゼルス・オリンピックには、男女各10人以上の代表を輩出することが目標。その選手が佐賀で指導に回り、さらに選手を育てる、という好循環を目指しています」とのことで、佐賀国スポが終わっても、スポーツへの熱情は途絶えることなく続くことを強調する。

 同県では、Jリーグのサガン鳥栖やバレーボールの久光スプリングスのほか、ハンドボールやバスケットボールのプロチームが活動し、県民のスポーツ熱を高めている。高校日本一に輝いたレスリングも、県の期待を一身に受ける存在だ。昨年11月には、さらなる競技力向上のため鳥栖工高にレスリングセンターが完成。オープニング・セレモニーでは山口祥義・県知事が訪れて選手を激励。県からの並々ならぬ情熱が伝わってきた(関連記事)。

▲佐賀県がスポーツ振興のために建設したレスリングセンター=小柴健二監督提供

 レスリングセンターは、マットが3面弱入る広さで、12台のエアコン付き。トレーニングルームやサウナ、酸素カプセルも設置されている。総工費は4億5200万円。トレーニングルームはともかく、サウナや酸素カプセルがあってコンディショニングに活用できる高校は、全国で例がないのではないか。

最高の施設でレスリング王国を目指す

 ただ、このセンターは高校の施設ではなく、県の施設。キッズから社会人のクラブもここで練習し、小柴監督が代表を務める鳥栖クラブの本拠地でもある。同クラブからは、これまでに尾西大河(現早大)小野正之助(現山梨学院大)甫木元起(前述)、小柴監督の長次男の亮太(現佐賀県中部農林事務所)・伊織(現日体大)、長女で昨年11月の全国中学選抜選手権を制した小柴ゆりといった強豪が生まれている。

 加えて、鳥栖工高では、これまでは複雑な申請や承認をふまなければならなかった県外選手の受け入れ手続きが簡素化され、県外選手のスカウトがしやすくなるという。県の強力支援で、さらに確固たる一貫強化体制が確立したと言えよう。

▲レスリングセンターのトレーニングルームと、リラックス・疲労回復に役立つ酸素カプセル=小柴健二監督提供

 同監督は、高校へ入ってからレスリングを始めたい選手であっても受け入れ、育てて戦力にする気持ちも持っている。同校卒業で男子グレコローマン87kg級全日本王者の角雅人(現自衛隊)は、高校入学後にレスリングを始めた選手。キッズ出身以外にも逸材はいると見ている。

 「今の2年生は、3人が高校入学後にレスリングを始めた選手です。一人はJOCジュニアオリンピックカップにも出ます」と話し、門戸は広げ、じっくり育てることで強化と競技人口の増大にも貢献する腹積もりだ。

 全国一のトレーニング施設のもと、鳥栖工が覇権奪還を目指す。







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