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2023.01.21

【特集】比較的スムーズだった階級ダウン、青山学院大の“もう一人の強豪”がパリを目指す!…男子グレコローマン77kg級・藤井達哉(後藤回漕店)

 

 女子で東京オリンピックの金メダリストや現役の世界チャンピオンが優勝できず、勝負の世界の厳しさが展開された2022年全日本選手権。男子グレコローマン77kg級でも、東京オリンピックのメダリストが表彰台を外れる“アップセット”があった。

 日本グレコローマン史上最重量級のオリンピック・メダリスト、屋比久翔平(ALSOK)を表彰台から“外した”のは、青山学院大時代の2017~19年に全日本学生選手権(インカレ)で3連覇を達成している藤井達哉(後藤回漕店)。昨年の世界選手権で同大学から初の世界王者となった成國大志(MTX GOLDKIDS)と同期で、慣れ親しんだ82kg級から階級を下げ、パリ・オリンピックの代表争いに名乗りを挙げた。

▲青山学院大で基盤を作り、現在は日体大で練習する藤井達哉(後藤回漕店)

 屋比久との3位決定戦は、3-3のスコアながらビッグポイントの差で振り切った試合。先にパッシブを取られて1点を失ったが、ローリングをこらえ、屋比久のバランスの崩れに乗じて2点を獲得。第2ピリオドは屋比久にパッシブを与えて3-1へ。

 ラスト1分を切ってからの屋比久の前に出るプレッシャーに、2度にわたって場外へ出てしまって2点を失ったが、場外逃避とは判断されず、3-3でホイッスル。小さくガッツポーズして喜びを表した。

 「試合内容は、いいものではなかったんですけどね」。現在の練習場所は日体大なので、屋比久とはふだんの練習でもよく闘う。「ボコボコにされている」とのこと。屋比久はひざの状態が万全ではないことも伝えられており、藤井もこの勝利で追い越したとは思っていない。試合が終わってすぐに脳裏をよぎったのが、「浮かれずに、次に向かって頑張りたい」という思いだった。

▲屋比久のローリング失敗に乗じて2点を取った藤井。このリードを守り切った=ネット中継より

 それでも、オリンピックの銅メダリストにテクニカルポイントを許さなかったことは、自信にしていいこと。「地元(滋賀県)の新聞は騒いでくれた?」との問いに、「まったく(ないです)」と笑うが、「会社の人が、すごく喜んでくれましたので、よかったです」と言う。レスリング活動が十分にできるだけの多大な支援を受けているだけに、結果で返したい思いは強い。

82kg級時代にも、常に階級ダウンを意識して節制

 インカレ3連覇を達成したのは80・82kg級で、卒業後も82kg級で全日本の大会に出ていた。昨年10月の栃木国体は87kg級に出場した。国体に82kg級という階級がない理由にもよるが、大学時代の新人選手権では98kg級での優勝経験もあり、オリンピックへ向けては階級を上げるものと思われていた。

 パリへ向けて選んだ階級が77kg級。80kgを切る階級での試合は、中学時代の2012年までさかのぼる。まず、減量が大変だったのではないか? 藤井は「もともと下の階級(77kg級)で勝負しようと思っていました」と、階級ダウンは予定通りと打ち明ける。82kg級で闘っていたものの、階級ダウンを考えて常に体重に気を遣っていたので、「落とすことはできると思っていました」と言う。

▲豪快なリフト技にも挑み、実力アップをはかる

 落とすことがゴールではない。体力も落ちて動けないようでは意味がないが、ふだんの倍くらいの期間を使って徐々に落としていき、「意外にすんなり落ちてくれ、体力が落ちることもなかったです」と言う。ただ、準決勝で日下尚(日体大)に敗れたのは、判断ミスもあったが、「減量したことで、自分の思った力が出ず、思い通りのレスリングができなかった」と言うから、階級ダウンがすべて順調にいったわけではない。

 問題はもうひとつあった。最近はコロナ対策で各階級とも1日試合だったが、今大会はオリンピックを想定して2日間試合で実施されたこと。メダルを取るためには2日連続で計量にパスしなければならない。これは「ちょっときつかったですね」と振り返る。しかし、その状態で屋比久を破ったのだから、悪いコンディションではなかったのだろう。

 ともに、経験しなければ体では分からないこと。優勝はできなかったが、今回の経験が今年6月の明治杯全日本選抜選手権で役立つことは間違いない。

屋比久翔平以外にも強豪揃いの階級、気が引き締まる

 2020年3月に青山学院大を卒業してから、日体大(横浜市青葉区)の近くに住まいを構え、朝と夕方の双方の練習に参加させてもらっている。同大学の長谷川恒平監督(2012年ロンドン・オリンピック代表など)も青山学院大で基礎をつくり、卒業後は日体大の練習に参加して世界に通じる実力をつけた。藤井もその道を歩んでいる。

▲77kg級の表彰式。左から日下尚、櫻庭功大、藤井達哉、前田明都

 「実力がついているのが分かります。方向は間違っていないと思います」と話し、今後もこれまでと同じ練習を続ける腹積もり。「たまたま屋比久選手に勝てただけ」であり、屋比久のほかにも、櫻庭功大(優勝=自衛隊)、日下尚(2位=日体大)、前田明都(もう一人の3位=レスターホールディングス)といて、頂点がはっきり見える状況ではないのも、気が引き締まる要因だ。

 成國の世界一奪取は、「刺激になりますが、それがプレッシャーや焦りになったりすることもない」と言う。インカレ3連覇の前には、全国少年少女選手権4連覇や世界カデット選手権5位、世界大学選手権2位などの実績がある隠れた強豪。今年は、“青山学院大のもう一人の強豪”が一気に花開くか。

 

 

 

 







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