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2023.01.26

【特集】片脚を失ったプロレスラー・谷津嘉章さん(日大レスリング部OB)が“障がい者レスリング”を披露、「レスリングで生きる希望を持たせたい」と呼び掛ける

▲身体の障がいがあっても、レスリングはできること実践した谷津嘉章さん

 

 1976年モントリオール・オリンピック代表で、プロレスのリングでも活躍した谷津嘉章さん(栃木・足利工大附高~日大卒)が、障がい者のためのレスリング確立に一歩を踏み出した。糖尿病のため右脚のひざから下を失った谷津さんは、1月22日、千葉・佐倉市民体育館で行われた2023年全日本マスターズ選手権の開始式後、義足を外してのエキシビションマッチを実施。“障がい者レスリング”を披露し、普及を訴えた。

 谷津さんは2019年6月、糖尿病の悪化のため右脚のひざから下を切断。義足での生活を余儀なくされた(関連記事)。しかし、東京オリンピックの聖火ランナーを務めたり、プロレスの試合に出場したりと、障がいと闘いながら人生を前向きに生きている。

 「障がいがあってもレスリングはできる。レスリングが生きる希望になる」。全国に600万人とも言われている障がい者の何人かであっても、レスリングによって生きる希望を持ってほしいと立ち上がった。

▲エキシビションマッチの前に、障がい者レスリングのスタートを訴える谷津さん

 エキシビションマッチの前にマイクを持った谷津さんは「私はご覧の通り、3年前に右脚を失くしました。絶望のどん底に落とされましたが、東京オリンピックによって生きる希望を持ち、義足でプロレスをやるまでになりました」と現在に至るまでの経緯を説明。その気持ちが再びレスリングをやりたい気持ちになったことを強調し、生きる希望を持ったと言う。

パラリンピック採用の一歩を踏み出した

 パラリンピックにレスリングがないことを不思議に思い、「それなら、自分が啓発して競技に入れようじゃないかと思いました。脚がなくてもレスリングはできることを、これからお見せします」と訴えて、マットへ向かった。

 対戦相手は、高校時代の同期生でライバルでもあったプロレスラーの島田宏さん(群馬・関東学園高卒)。プロレスと違って義足はなし。失った方の脚のひざをついた状態からスタート。がぶられても、しっかりこらえてポイントを許さず、相手のバランスの崩れに乗じてポイントを奪い、4-0で勝利。マスターズ選手権の参加者から大きな拍手を受けた。

 谷津さんは「やっとスタートラインに立った。ようやく原点に戻って、アピールできた」と、まずは披露できて、一つの形を世に出せたことに満足そう。「まだ先は長い」としながら、パラリンピック採用の一歩を踏み出したと実感した様子。

 世の中には障害を持つ子供もいるが、「60歳をすぎた自分と違って、子供は体幹は強いし、伸びしろもある。レスリングに取り組ませることで、自信と希望を持たせることができるはず」と言う。(倒れたり、投げられたりしたら負けの)柔道や相撲と違い、レスリングはグラウンドがあるので、倒されても試合が続く。障がい者の格闘技としては最適という考えもあるようだ。

▲タックルで果敢に攻める谷津さん

2011年には片脚のない選手が全米大学王者に輝いた

 障がい者同士のレスリングだけを求めているわけではない。それでは人数が限られているので、なかなか普及は進まない。健常者が障がい者を相手にレスリングをする環境も必要と主張する。

 米国では、2011年の全米学生選手権に片脚のないアンソニー・ロブレス選手(アリゾナ州立大)が出場して優勝。全米に感動を与えた出来事があった(関連記事)。「日本には、健常者と障がい者が一緒に練習したり、試合をするという発想はないと思う。その発想を変えることが必要。各クラブに、障がい者を積極的に入れてもらうよう呼び掛けるとか、方法はいくらでもある」と言う。

▲健常者の闘いに出場し、全米大学王者に輝いたアンソニー・ロブレス(提供=John Sachs/Tech-Fall.com)

 中大・太田拓弥コーチがダウン症の人を対象としたレスリングの普及に情熱を燃やしているが(関連記事)、目指す方向は同じ。すでに発足した日本障がい者レスリング連盟に、知的障がい者の部門もつくり、より強固な組織にしていきたい気持ちもある。

 同連盟は設立したばかりで、NPO法人取得、日本協会の傘下連盟や東京都スポーツ協会などへの加盟はこれからの課題。障がい者でスポーツに取り組んでいる人に指導やルール作りの手助けを請い、クリニックを開催するなどして、徐々に組織を整えていく予定だ。

「障がい者だからといって遠慮することはない」

 「今の世の中、すべてがインクルーシブ(包み込む=障がいの有無や性別、人種などの違いを認め合い、すべての人がお互いの人権と尊厳を大事にして生きていくこと)。障がい者だからといって遠慮することはないし、遠慮することのない社会をつくっていきたい」と谷津さん。

▲エキシビションマッチのあと、佐倉市の西田三十五市長が激励。谷津さんの十八番の「おりゃ」ポーズをとる

 かつて、女子は存在しなかったレスリング界が、福田富昭・現日本協会名誉会長が提唱し、幾多の困難を乗り越えて日本スポーツ界を支える存在に成長したように、谷津さんはこれまで存在しなかった障がい者のレスリングを誕生させ、発展させることに情熱を燃やす。

 このあとも、日本協会や傘下連盟の協力を仰ぎながら、大会の合間に障がい者レスリングを披露し、認知度を上げて普及に努力する予定。「エキシビションではなく、本当の試合もやらせてほしいですね」と話し、障がい者レスリングの確立と発展に挑む。

《日本障がい者レスリング連盟ホームページ》=現在準備中で、近日中に公開予定







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