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2023.02.08

【特集】間もなく創部40年を迎える国際武道大、オリンピック金メダリスト・小林孝至監督が目指すものは?(前編)

 

 太平洋に面し、南房総国定公園内のリゾート地として知られる千葉・勝浦市。猛暑日(最高気温35度以上)を記録したことが観測史上一度もなく、30度を超える日も少ない。冬は黒潮の影響で暖かい。この地に存在するのが国際武道大学。武道・体育・スポーツに関する教育・研究が中心で、野球部はプロ野球選手を13人輩出。今春には、昨夏甲子園出場の選手など56選手の入部が予定されている。

 1984年の開学と同時にスタートしたクラブにレスリング部がある。1989年に東日本学生リーグ戦の三部リーグで全勝優勝。OBの中には、自衛隊に進み、国体優勝や世界選手権出場を果たした木下英規(男子グレコローマン90kg級ほか)のような強豪もいる。

▲今は部員集めが課題だが、再浮上を目指す国際武道大。右端が小林孝至監督

 2008年に、1988年ソウル・オリンピック・フリースタイル48kg級優勝の小林孝至を監督に招いた。2015年のリーグ戦では二部リーグ優勝を果たすなどしたが(関連記事)、現在は部員不足の状態。3月に2人の4年生が卒業すると、男子2選手、女子1選手の3人の部員となる。新入生を勧誘し、部の存続を目指す状況で、学生界の王者を狙うのは厳しいのが現実だ。

「技術理論を知らなければ、いい選手は育てられない」

 こうした状況の中で小林監督が望むのは、草の根レベルであっても「レスリングを広げたい」という思いと、やるからには「正しいレスリング技術を身につけてほしい」ということ。卒業後、高校やキッズの指導者として教える環境につく選手もいるが、「きちんとした技術理論を知り、それに基づいた指導をしなければ、いい選手を育てられない」と言う。

 なぜ、その技がかかるのか、体重の移動はどうするべきか…。レスリングの技は、梃子(てこ)の原理によるものが多く、パワーは多少劣っていても、相手のバランスを崩して梃子の原理を応用すればかかる技が多い。

 「物をつくるときには、工具が必要だけど、工具の使い方を知らなければ意味がない。間違った使い方では、正しいものができません」

 技術のマスターには反復練習が不可欠。しかし、やみくもに反復すればいいものではなく、正しい技の仕掛けを反復しなければならない。「理論を知っていて、理論を教える指導者が増えてほしいと思います」

▲小林監督の練習参加のときは、徹底した技術指導

 もちろん、学生選手に求める当面の目標は、目の前の大会。昨年は部員不足で、東日本学生リーグ戦の出場を断念しかけたが、連盟の新制度導入のおかげで、部員不足のチームが連合して「学連選抜チーム」として参加することができ、東北学院との連合チームで出場した。大会前の接点はなく、大会の初日に会場で選手同士が初めて会う状況。それでもチームとして4勝1敗の成績を残し、二部リーグで2位の成績。選手のモチベーションの向上に役立った。

 この3月に卒業する4年生に「社会人になっても、もう少しレスリングをやりたい」と言う選手も出てきて、少ない部員ながらも、選手のやる気に手ごたえを感じているところだ。

今年は連合チームで合同合宿をこなしてリーグ戦に臨む!

 5月のリーグ戦は、今年も自分たちだけではチームを組めないので、同様の状況のチームを探し、連合チームで臨みたい気持ちを持っている。昨年12月の全日本選手権の女子62kg級には、全日本学生選手権で3位に入賞した山田亜優香(1年=東京・安部学院高卒)が出場した明るい材料もある。同大学からの全日本選手権出場は、2011年・女子59kg級に赤坂美里(青森・八戸クラブ~青森・八戸工高卒)が出場した以来の快挙。小林監督は「次は男子で出場できる選手が出てほしい」と希望する。

▲昨年5月のリーグ戦は、東北学院との即席連合チームにもかかわらず二部リーグ2位へ

  来年度、チームを率いる落合洸太主将(2年=茨城・鹿島学園高卒)は、昨年のリーグ戦で4勝1敗をマークして連合チームの2位躍進に貢献した選手。高校時代の恩師である高野謙二監督から「レスリングを伸び伸びとやるのも悪くないぞ」とのアドバイスを受け、少人数のチームを承知で進んだ。実際に「伸び伸びできる環境です」と言う。

 ただ、練習を盛り上げるには「人数が必要ですね」と言う。「練習は、かけ声を出すことで盛り上がると思いますが、それがないので盛り上がり切らない面はあります」と言う。初心者でもいいので新入生を入れ、活気ある練習をやりたいところだ。「けがをしないことを」と細心の注意を払い、まずリーグ戦での好成績を目指す。

▲来年度、チームを牽引する落合洸太主将

 全日本選手権出場を果たした山田(前述)は、高校は女子校だったので、男子学生と練習する今の環境は初めてのこと。「最初はちょっと抵抗ありましたけど、先輩方が優しくていい方ばかりなので、慣れました」と言う。小林監督からの指導によって、「広い視野でレスリングを見ることができるようになった」そうで、技の奥深さを感じている様子だ。

 環境が環境だけに、全日本選手権級の大きな大会での優勝は視野にないようだが、「4年間、しっかりやり切りたいと思っています」と話し、紅一点での活動に力を注ぐ。

《続く》







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