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2023.03.31

【2023年風間杯全国高校選抜大会・特集】いろんな考えを出してもらって、競技人口の増加を目指したい…高体連レスリング専門部・千葉裕司部長

 

 2023年風間杯全国高校選抜大会(新潟市)が、制限つきながら4年ぶりに有観客で行われ、応援のある光景が戻って来た。一方で、少子化などに起因する部員不足は解消されておらず、レスリング部の部員数は減少の一途をたどっている。全国高体連レスリング専門部の千葉裕司部長に、競技人口の減少に対する対応を聞いた。(3月28日、新潟東総合スポーツセンター)


有観客大会となり、熱い闘いが戻ってほしい

――4年ぶりの有観客の大会となりました。館内の様子など、どうお感じになりましたかでしょうか。

千葉 初日は、思ったより数が少ない、とは感じました。最近はネット中継で試合を見ることが多く、それに慣れたこともあるかもしれません。2日目は個人戦が始まったこともあり、観覧席の一般観客のスペースがかなり埋まっていましたね。有観客になったことが広まれば、少しずつ増えていくとは思います。

――会場まで行って応援しようと思うのは、熱い闘いが展開されればこそだと思います。現状は、団体戦で7選手そろわないチームが多い。高体連登録の競技人口は、この5年間で541人も減っています。競技人口の減少も痛手ではないでしょうか。

千葉 その影響はあると思います。数は力につながります。すべての競技での選手数の減少は、全国高体連の課題となっています。競技人口の減少とともに、指導者の減少からくるクラブの減少も大きい。長期的な課題となりますが、大学のレスリング界には、指導者となるべき人材を多く世に送り出してほしいと思います。ただ、教員の希望者が少ないのが現状です。

▲高校レスリング界を支える千葉裕司・全国高体連レスリング専門部部長=撮影・矢吹建夫

――中学では、学校ではなくクラブ単位への移行が議論されています。

千葉 高校も、いずれはそうなっていくのではないかな、と思っています。学校の部活動だけではなく、地域クラブで活動する選手を受け入れるとかに規制緩和していかないと、競技人口を増やすことは厳しいかと思います。いろんな考えを出してもらって、競技人口の増加につなげたいと思っています。ただ、高体連の組織を動かしていくのは教員でなければなりません。教員の指導者が必要です。

――インターハイなどが、学校単位ではなくクラブ単位で出場、ということも、いずれありうるのでしょうか。

千葉 インターハイのスタートから「学校対抗戦」ということでやってきましたので、クラブ単位での参加、というのは、今はまだ現実的ではないですね。ただ、自分の高校のレスリング場を使って他校の選手も受け入れ、一種のクラブチームとして活動する、でもいいのではないかと思っています。

主な競技の最近5年間の高体連登録者数の推移
競  技 2017年 2022年 減少数 減少率
男子 女子 合計 男子 女子 合計
加盟全体数 801,283 445,513 1,245,796 704,556 401,716 1,106,272 139,524 11%
レスリング 2,252 292 2,544 1,724 279 2,003 541 21%
柔 道 15,861 4,070 19,931 11,247 3,426 14,673 5,258 26%
ボクシング 2,222 2,222 1,953 1,953 269 12%
空 手 5,442 3,779 9,221 4,515 3,367 7,882 1,339 16%
相 撲 945 945 803 803 142 15%
陸 上 68,681 39,605 108,286 59,792 33,475 93,267 15,019 14%
水 泳 23,319 13,119 36,438 17,667 10,759 28,426 8,012 22%
サッカー 165,977 10,951 176,928 147,086 10,507 157,593 19,335 11%
バスケットボール 94,433 58,778 153,211 83,625 52,883 136,508 16,703 11%

伝統ある現行の学校対抗戦は存続させたい

――他校のレスリング部に通って強くなった選手もいます(男子グレコローマン67kg級全日本王者の曽我部京太郎など)。

千葉 そうした形が増えていってほしいと思います。

――それであっても、団体戦は学校単位、という伝統は守りたい、と。

千葉 ずっとそれでやってきていますからね。女子やグレコローマンを入れて得点方式にする、という考えもありますが、やはり今の団体戦方式は非常に盛り上がります。なくしたくはない、というのが私の正直な気持ちです。この形を残して、選手が増えてくれ、盛り上がる道を模索していきたい。私の任期中ということではなく、今後の課題と言えるでしょう。

――全国高校選抜大会は、新1年生はいないので一番部員数の少ない時期。学校対抗戦でも「不戦勝」の階級が多い。51、55kg級がともに不戦勝で実際の試合が行われず、それでチームスコア1-1や、最後の2試合が不戦勝などのケースもある。この大会を得点制による団体戦とし、インターハイを現在の対抗戦による団体戦を残す、というのはいかがでしょうか。

千葉 高校生の出場する大会で団体戦が行われているのは、この2大会しかありません。全国高校生グレコローマン選手権や国体、JOC杯ではやっていません。チームが一丸となれる団体戦の醍醐味を、できるところまで続けたい、という気持ちです。7人制を5人制にするのも一案で、考えてはいます。しかし、(インターハイに出場できる選手数などを)削減したら、元には戻らないと思います。5人制にし、その分、女子の出場枠を増やすという方法もありますが、女子の競技人口もそこまでは伸びていない。現行のスタイルと選手数を維持していきたいと思っています。減らすことはいつでもできますが、いったん減ってしまったら、増やすことはできないでしょう。

▲不戦勝が目につく学校対抗戦。熱い闘いが7試合行われてこそ、応援も熱が入る(チーム名は加工しています)

高校入学後にレスリングを始める選手も歓迎

――競技人口の減少に対し、高校の監督の危機感はいかがでしょうか。

千葉 高体連がしっかりしていて、統計も発表しています。高校の監督は、競技人口の減少を現実問題として意識しています。

――キッズ・レスリングが盛んになった一方、高校に入学してからレスリングを始めても、とても追いつかず、そうした選手を集めづらくなった、という一面はあるのでしょうか。

千葉 その一面はありますが、勝つことがすべてではありません。私の学校のクラブにも、高校入学後にレスリングを始めた選手がいて、キッズ時代からの強豪選手には、とてもかないません。勝つに越したことはありませんし、勝つことにこだわらなければなりませんが、その選手なりの目標を設定し、成長を目指せれば、それでいいと思っています。

――初段以前の選手の大会を作るとか、レベル別の大会はいかがでしょうか。

千葉 競技人口がこれだけですから、いろんな大会を作るのは難しいでしょう。

――競技人口の減少を防ぐため、アメリカのように夏と冬で別なスポーツをやるWスポーツ制度の導入という声もあります。米国の高校生は、冬にレスリング、夏にアメリカンフットボールなどをやり、その選手も競技人口とカウントされています。多くの競技を経験させることでスポーツ離れを防ぎ、競技人口の減少を防ぐ効果があるのではないでしょうか。

千葉 レスリングだけでは、成り立たない考えですね。多くの競技で一斉にやる必要があるでしょう。ただ、日本はアメリカと違い、他のスポーツと並立することをよく思わない雰囲気があるので、難しいのではないでしょうか。いろんな声を集め、競技人口の減少に歯止めをかけたいと思います。

▲4年ぶりに一般観客で埋まった会場(写真で見える観客席2面が一般観客席)







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