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2023.04.04

【2023年風間杯全国高校選抜大会・特集】人口3万人の町に花開いた一貫強化、赤木烈王が兵庫・猪名川から初の全国王者へ

 

 高校のレスリング部が母体となってキッズ教室を運営し、一貫強化で選手を育てている兵庫・猪名川から、初の全国王者が誕生した。2023年風間杯全国高校選抜大会の51kg級を制したのは、昨年のインターハイは1年生ながら3位に入賞した赤木烈王(れお)。昨年のU17アジア選手権(キルギス)では48kg級で銀メダルを獲得。すでに国際舞台で躍進している選手だ。

 「最高すぎて、言葉が出ないです」。全国大会の優勝は、2019年全国少年少女選抜選手権以来で、コロナによる大会出場の機会の減少があったものの、4年ぶり。47選手も参加したトーナメントでの優勝は格別の様子だ。

▲兵庫・猪名川から初の全国王者となった赤木烈王=撮影・矢吹建夫

 準決勝までは4試合連続のテクニカルフォール勝ち。決勝の相手は、関東予選の4試合を無失点のテクニカルフォールで勝ち抜いた貴船武人(東京・自由ヶ丘学園)。U17アジア選手権では1階級上のチームメートだ。

 近畿王者(赤木)と関東王者の対決は、第1ピリオド、赤木ががぶり返しを決めて2点を先制。中盤にテークダウンを奪い、エビ固めをがっちり決めたが、惜しくもフォールならず。第2ピリオドは返し技とアンクルホールドで6-4と追い上げられ、さらに場外に出てしまった。しかし、前半の得点がきいて6-5のスコアで勝利。薄氷を踏む思いながら、全国の頂点に昇り詰めた。

準決勝で強豪にリベンジし、気持ちが盛り上がった

 「自分の持っているものをすべて出すつもりで闘いました」とは、試合に臨む気持ち。全力を出し切ったことには違いないが、「あそこ(エビ固め)を逃がしてしまうのが、自分の弱いところなんです」と反省する点もあった。「練習で改善しないとなりません」と課題は残る優勝だが、勝った直後に声が弾むのは当然だろう。

▲うまくいけば第1ピリオドで勝てた決勝。ちょっぴり甘さが出てしまった=撮影・矢吹建夫

 準決勝は、同じ近畿の強豪選手、森下大輔(和歌山・和歌山北)が相手。グレコローマンのU17アジア選手権51kg級で銅メダルを取った選手で、全国王者(全国高校グレコローマン選手権、国体)にもなっている。2月の近畿予選の団体戦で負けていたそうで、ここも大きなヤマ場だった。

 ふたを開けてみれば、4点となるがぶり返しで先制し、投げ技(2点)とローリング2回転で1分45秒、10-0のテクニカルフォール勝ち。「うれしかったですね」と、このリベンジ達成によって最高の気持ちをつくり、決勝に臨めたのだろう。

1年をかけて徹底的に基礎体力をつけた

 猪名川高レスリング部は、猪名川町が2006年兵庫国体レスリング競技の開催地になったことを機に、2001年にキッズ教室とともにスタート。人口が約3万人の町での一貫強化に挑戦した。しかし、競技が中学で途切れる全国のレスリング界共通の壁の前に、高校の全国一を目指す選手が育つまでには至らなかった。

 2011年に、日体大~自衛隊でレスリングをやっていた池畑耕造氏(現在は一般自衛官)が代表となり、キッズの強化と、中学という“谷間”の解消に挑み、選手が中学へ進んでも指導を続けた。

 キッズは、2019年全国少年少女選手権で参加チームの中で最多の14個のメダルを獲得するまでに成長(関連記事関連記事)。全国中学生選手権では2021年男子52kg級で北村春斗、昨年68kg級には花盛奏太が優勝するまでにチーム力をつけた。女子では、芦屋学園中・高に送って世界へ飛び立つ選手を誕生させた。普及・広報と強化は車の両輪との理論に従い、SNSを使った情報発信にも積極的だ(クリック)。

▲中学時代から指導している猪名川クラブの池畑耕造代表(中央)と猪名川高の浅井功監督=撮影・矢吹建夫

 赤木は中学進学とともに、大阪から猪名川に通って実力をアップ。中学時代はコロナで2度の全国大会の機会を奪われるなど不運な一面があったが、昨年4月の高校入学とともに親元を離れて池畑代表の家に住み、上を目指してきた。

 試合でセコンドを務めた池畑代表は「気持ちはものすごく強い選手なのですが、体力が足りなかった。1年をかけて徹底的に基礎体力をつけた。その効果が出て、1回戦から決勝まで終始攻めるレスリングができるようになりました」と勝因を挙げる。

 現在でも通常体重は約53kg。もっと体重をつけても大丈夫な状況なので、さらに筋力アップさせてインターハイへ臨ませる腹積もり。パワーアップした状態で、どんな強さを発揮するか。

学校対抗戦でも全国一を目指す!

 昨年の世代別アジア選手権では、U20女子62kg級で猪名川クラブOGの池畑菜々(芦屋学園高3年=代表の長女)が優勝、U17で赤木が銀メダル、U15男子フリースタイル52kg級で北村(前述)が銅メダルと、一貫強化が力強く花開いている。赤木の全国制覇で、その勢いが加速しそう。

 赤木は、55kg級に出場した森日我(昨年6月の近畿高校選手権で1年生ながら優勝)とともに猪名川クラブから猪名川高校へ進んだ“一期生”。池畑代表は「(猪名川クラブ出身の)先輩がだれもいない中、不安が大きかったと思う」と、その大変さを察しつつ、「あとに続く選手もいます」と、今後に期待する。

▲昨年のU17アジア選手権で銀メダル獲得の赤木烈王(右から2人目)。今年はU17世界王者も目標のひとつ

 猪名川の浅井功監督は兵庫・神戸西高校の出身で、世界選手権出場も果たしている(奇しくも、今大会で同じように男子初の全国王者を誕生させた香川・高松北の竹下敬監督も神戸西高出身)。同校は須磨高校と統合されて須磨翔風高となり、現在は存在しない。浅井監督の思いは、猪名川に場所を移し、一貫強化の下で世界を目指す選手が生まれつつある。

 その浅井監督から「全国から狙われるんだぞ」と声をかけられた赤木は、追われる立場になったことに「緊張はしますが、負けたくない」ときっぱり。4月から強豪新人が入って部員が増えることもあり、「学校対抗戦(今大会は初戦敗退)でも勝てるように頑張りたい」と、新たな目標も掲げ、7月末のインターハイ(札幌)を見据えた。







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