昨年、無観客ながら3年ぶりに開催された沼尻直杯全国中学生選手権。今年は2019年以来の有観客で開催された。全国中学生連盟の松﨑忍会長にとっては、昨年10月に死去された沼尻久会長からバトンを受け継いだあとの初めての全国大会。大会史上最多となる710人が競った大会を終え、「多くの人の尽力で、大きなけが人が出ることもなく無事に終えることができました」と安堵の表情を浮かべた。
応援者を入れると入れないとでは、会場の雰囲気が「まったく違う」と言う。体育館全体の盛り上がりを、本部席に飾られた沼尻氏の遺影に届けることができて満足そう。
ただ、最終日の表彰式が終わったのが午後5時近く。遠距離で飛行機利用のチームの選手は最後まで残れないケースもあった。4面マットでの2日間の大会は限界に近いのだろうが、5面マットにすれば、審判や補助員の確保が必要となり、簡単にはいかない。参加選手数が大幅に増えない限りは現状通りとし、スピーディーな試合進行によって早めに終わる運営を目指すという。
運営の大きな力となったのは、地元の茨城県協会の役員。前会長時代からのノウハウを駆使して大会を支えた。「これからも茨城県協会の力を全国に示したい」と話し、来年の第50回大会とその後の大会を盛り上げていく気持ちを表した。
大会のさらなる発展のほか、中学選手(U15世代)のグレコローマン導入も松﨑会長に与えられた課題。昨年夏、日本協会でU15選手へのグレコローマン普及事業がスタートし、2025年の海外派遣を目指した活動が始まっている。この大会前にも、専門コーチによる指導者へのグレコローマン講習会を行ったそうで、「(U15アジア選手権で)実施されている以上、日本も参加したい」との希望を話し、連盟としても真正面から取り組む方針。
73歳の新会長は、健康維持のために続けている野外での運動で日焼けした顔で、沼尻会長の遺産を受け継ぎつつ、新たな分野への挑戦を視野に入れて燃えている。