昨年の全日本選手権では、2選手(成國太志=MTX GOLDKIDS、向田旭登=専大)がエントリーしたが、ともに負傷で棄権した両スタイル出場。今大会で二宮健斗(日本文理大)がグレコローマン55kg級とフリースタイル57kg級に、山田脩(日体大)がグレコローマン77kg級とフリースタイル79kg級に出場。この大会初の両スタイル出場を達成した。
二宮はグレコローマンで銅メダル、山田はフリースタイルで銀メダルをそれぞれ獲得。出るだけではなく結果も出した。今後は両スタイルでの「メダル獲得」、さらには「優勝」が、“二刀流”選手の目標となろうが、全日本学生選手権のように大会の前半と後半で実施スタイルが分かれているわけではないので、かなりきつい壁となりそうだ。
今大会では、二宮の試合日程ははっきりと分かれていた。大会初日の15日にグレコローマン55kg級に出場。3試合をこなして銅メダルを獲得。翌16日はフリースタイル57kg級に出て初戦で敗れ、試合終了だった。
山田は大会第2日の16日にグレコローマン77kg級に出場し、初戦で敗れたものの、組み合わせの関係で翌17日に行われる3位決定戦に回ることになった。17日はフリースタイル79kg級に出場し、2試合を勝ち抜いて決勝進出が決定。ここでグレコローマン79kg級の3位決定戦に出場。そのあと、1時間もしないうちにフリースタイル79kg級の決勝のマットに向かった。
決勝の相手の山倉孝介(早大)は、準決勝を勝ってから決勝までの間に十分な時間があった。自ら選んだ道なので言い訳にはできないが、かなりのハンディを持っての決勝のマット。テークダウンを奪われて、あっという間にアンクルホールドを受けてしまった。スタミナは問題なかったというが、スタイルの切り替えが「今ひとつできなかった」と振り返った。短時間での両スタイル出場は、周囲の想像以上に難しいのかもしれない。
山田は「エントリーしてからも、体力や集中力のことなど、いろいろ考えました」と、両スタイル出場に多少のためらいがあったことを打ち明けた。力を入れているのはグレコローマン。しかし、千葉・日体大柏高という高校レスリング界の雄の出身選手としてフリースタイルでも力を試したい気持ちもあり、両スタイル出場に踏み切った。
昨年の全日本選手権で2選手が両スタイルにエントリーしたことを知ったとき、自分も両方で資格を持っていただけに、「出ればよかった」という気持ちになったそうだ。その思いの実現でもあったようだ。
フリースタイルの決勝は、グレコローマンの試合の直後で、「やや腰高になったのでは?」との問いには、「フリー専門の選手よりは、いつも高いかもしれませんね」と言いつつ、それが敗因ではなく、山倉の強さを指摘した。2人は高校の同期生。山倉が主将で、自分が副将。山倉の強さは十分に知っている。言い訳めいたことは口にせず、チャンピオンの強さを称えた。
このあと、8月の全日本学生選手権は両スタイルに出場予定で、予選を勝ち抜いたU23世界選手権はグレコローマンで挑戦。12月の全日本選手権は「日程に問題がなく、資格があれば」と、両スタイルへの挑戦を続ける予定だ。
以前ほどではないが、グレコローマンは出場選手数が少ないことも多く、普及とアピールが必要な状況。「出場資格を持った選手が数多く出場することで、レベルが上がっていくと思います」と話し、グレコローマンの振興ためにも頑張りたいようだ。
2人の踏ん張りで、今後も両スタイル出場の選手が出現してくる可能性が出てきたが、試合が重なったり、試合が続いたりした場合は、どうなるのか? 世界レスリング連盟(UWW)のルールでは、試合間隔は最低20分とる必要があるとの規程があるが、両スタイルが混在して、その両方に出場する場合は想定されていない。
日本協会の沖山功審判委員長は「これまでなかったケースなので…」と、現段階では明確な回答はできないと言う。「個人の意見」と前置きしたうえで、「(両スタイルに出るという)選手の気持ちを最優先に考えるべきだと思います。進行担当ほかと相談して、対応することになるでしょう」と話した。